ビジネスわかったランド (経営・社長)
簡単健康法
深呼吸健康法
深呼吸健康法
1日3度の深呼吸で血圧がみるみる下がっていく
以前、自治医科大学循環器科の北村諭教授から、こんなことを言われた。
「高血圧や動脈硬化でお悩みの人は多いが、実に簡単な方法で血圧を下げたり、動脈硬化を抑制したり、全身の細胞を活性化することができるんですよ。さらにストレスから開放され、さまざまな成人病を防ぐのにも役立つ。おまけに老化も防ぐことができる。いったい、その健康法とは何だと思いますか」
まさか大学の教授から健康法の話をされるとは思ってもみなかったので戸惑ってしまった。返す言葉が見当たらない私を見て、北村教授はニヤリと笑って言った。
「深呼吸ですよ。これを行なうだけで人は健康になれます」
さらに、こう続けた。
「普段、呼吸は無意識のうちに行なわれているので、その重要性に気がつくことはほとんどありません。しかし、ぜひとも1日数分でもかまわないから、無意識にではなく、意識的に深い呼吸をする習慣を身につけてください。毎日続けていると、その効果にきっと驚かれるでしょう」
深呼吸が良性物質をつくる
北村教授によると、実際、次のような例があったという。
46歳の男性Sさんは、会社の健康診断で血圧が高くなっていると言われた。最大血圧が150ミリ、最小血圧が90ミリ。Sさんは、高血圧になると生涯、降圧剤を飲まなければならないと聞いていたので、憂鬱になってしまった。そんな折り、たまたま知り合いから北村教授が勧めている深呼吸の話を聞いた。深呼吸なら、やろうと思えばどこでもできるし、お金もまったくかからない。試しにやってみる価値ありと考えた。
Sさんがやったのは朝、昼、晩の3回、1回につき5分ほどの深呼吸である。効果はてきめんに現われた。1週間後には血圧が10ミリ下がって、最大血圧も最小血圧も正常値に一気に近づいたという。以後、熱心に続けたところ、血圧は安定し、薬を飲む必要は一切なくなってしまった。
それにしても、なぜ深呼吸が血圧を下げたり、動脈硬化を防ぐのに役立つのだろうか。北村教授の話をまとめると。
肺の中には、肺胞という小さな袋状の部分がある。吸い込まれた空気はこの肺胞の中で、酸素を血液中に送り込み、体内から運ばれてきた炭酸ガスを受け取って体外へ排出する働きをする。このとき、肺胞の壁でプロスタグランジン12という生理活性物質がつくられるのだが、この物質が、数々の素晴らしい働きをするのである。
具体的には、
・血管を拡張する
・コレステロールや中性脂肪などの脂質が動脈壁にしみ込むのを防ぐ
・血栓ができるのを防ぐ
といったもので、このうち最初の効果がSさんには現われたわけだ。2番めは動脈硬化の、3番めは心筋梗塞と脳梗塞の予防につながる。女性が男性に比べて長生きをするのも、女性ホルモンにプロスタグランジン12の生成を促進する働きがあることと関係している、といわれるくらいで、このプロスタグランジン12の生成を深呼吸が促すのである。
実は、約3億個あるといわれている肺胞のうち、普通の呼吸ではその8~9割しか使われていない。残りの1~2割はつぶれたままの状態になっているわけだが、深呼吸をするとそれらが開くのだ。さらに多くのプロスタグランジン12がつくられるようになるのである。
ただ、深呼吸にも腹式と胸式の2種類があって、効果をより高めたいのなら、それらを交互に行なうのがいいと北村教授は語る。Sさんが試したのも、この方法である。
「胸一杯に空気を吸ったり、吐いたりする深呼吸を胸式深呼吸といいます。一方、おなかを膨らませたり、へこませたりして行なうのが腹式深呼吸です。私たちが普段、呼吸をしているときは、無意識のうちに両方使った呼吸をしている。これを意識的に大きく、ゆっくり行なうだけでいいのです。胸式深呼吸のときには肺の上部にある肺胞が開き、腹式深呼吸のときには肺の下部にある肺胞が開く。交互に行なうことで、肺全体でプロスタグランジン12が効率よくつくられるようになるのです」
深呼吸にはほかにも効果があって、その代表がストレスの解消だ。精神的なストレスがかかると、心拍数を増やし血管を収縮させるカテコールアミンという生理活性物質が分泌されるが、プロスタグランジン12はその生成も抑えてくれる。深呼吸することで、心身ともに安定するのである。
北村教授は言う。
「ストレスは、高血圧、動脈硬化、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞など、生活習慣病、現代病といわれる病気の大半に関与しています。深呼吸はストレスを追い払って、これらの病気の予防にも役立つのです」
中高年の男性ほど積極的に取り組むべし
では、具体的に深呼吸のやり方を説明しよう。まず、胸式深呼吸である。
・胸を張り、胸を広げるようにして、空気を吸い込む
・胸をせばめるようにして、肺の中の空気を吐き出す。このとき、肩は下げるようにする
・ラジオ体操の深呼吸のように、両腕を前から上げて息を吸い、続けて両脇に降ろして吐くという動作を交えて行なってもよい
続いて、腹式深呼吸。
・おなかを膨らませて空気を吸い込む
・おなかをへこませるようにして、空気を吐き出す
・このとき、胸式深呼吸のように腕を上げたり、降ろしたりしながら行なってもよい
どちらも、できるだけゆっくり行なうのがポイントだ。そして、この胸式深呼吸と腹式深呼吸を交互に、それぞれ5回、計10回行なう。もちろん、10回以上行なってもかまわないが、まとめてやろうというのではなく、朝起きたとき、夜寝るとき、さらに昼食後にも行なうのが効果的である。非常に簡単なので、1日3回はわけないであろう。
また、ストレス解消と述べたように、緊張をほぐすときにも有効である。大勢の人の前に立つとき深呼吸しろと言われるのも、実は理に適ったことなのである。実際、精神的な緊張が高まっているときに、これを行なうと気持ちが安らぐはずだ。
男性は中高年になると、プロスタグランジン12ができる能力が衰えてくる。だからこそ、中高年の男性ほど深呼吸を積極的に行なってもらいたいと北村教授は話している。
著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)
1日3度の深呼吸で血圧がみるみる下がっていく
以前、自治医科大学循環器科の北村諭教授から、こんなことを言われた。
「高血圧や動脈硬化でお悩みの人は多いが、実に簡単な方法で血圧を下げたり、動脈硬化を抑制したり、全身の細胞を活性化することができるんですよ。さらにストレスから開放され、さまざまな成人病を防ぐのにも役立つ。おまけに老化も防ぐことができる。いったい、その健康法とは何だと思いますか」
まさか大学の教授から健康法の話をされるとは思ってもみなかったので戸惑ってしまった。返す言葉が見当たらない私を見て、北村教授はニヤリと笑って言った。
「深呼吸ですよ。これを行なうだけで人は健康になれます」
さらに、こう続けた。
「普段、呼吸は無意識のうちに行なわれているので、その重要性に気がつくことはほとんどありません。しかし、ぜひとも1日数分でもかまわないから、無意識にではなく、意識的に深い呼吸をする習慣を身につけてください。毎日続けていると、その効果にきっと驚かれるでしょう」
深呼吸が良性物質をつくる
北村教授によると、実際、次のような例があったという。
46歳の男性Sさんは、会社の健康診断で血圧が高くなっていると言われた。最大血圧が150ミリ、最小血圧が90ミリ。Sさんは、高血圧になると生涯、降圧剤を飲まなければならないと聞いていたので、憂鬱になってしまった。そんな折り、たまたま知り合いから北村教授が勧めている深呼吸の話を聞いた。深呼吸なら、やろうと思えばどこでもできるし、お金もまったくかからない。試しにやってみる価値ありと考えた。
Sさんがやったのは朝、昼、晩の3回、1回につき5分ほどの深呼吸である。効果はてきめんに現われた。1週間後には血圧が10ミリ下がって、最大血圧も最小血圧も正常値に一気に近づいたという。以後、熱心に続けたところ、血圧は安定し、薬を飲む必要は一切なくなってしまった。
それにしても、なぜ深呼吸が血圧を下げたり、動脈硬化を防ぐのに役立つのだろうか。北村教授の話をまとめると。
肺の中には、肺胞という小さな袋状の部分がある。吸い込まれた空気はこの肺胞の中で、酸素を血液中に送り込み、体内から運ばれてきた炭酸ガスを受け取って体外へ排出する働きをする。このとき、肺胞の壁でプロスタグランジン12という生理活性物質がつくられるのだが、この物質が、数々の素晴らしい働きをするのである。
具体的には、
・血管を拡張する
・コレステロールや中性脂肪などの脂質が動脈壁にしみ込むのを防ぐ
・血栓ができるのを防ぐ
といったもので、このうち最初の効果がSさんには現われたわけだ。2番めは動脈硬化の、3番めは心筋梗塞と脳梗塞の予防につながる。女性が男性に比べて長生きをするのも、女性ホルモンにプロスタグランジン12の生成を促進する働きがあることと関係している、といわれるくらいで、このプロスタグランジン12の生成を深呼吸が促すのである。
実は、約3億個あるといわれている肺胞のうち、普通の呼吸ではその8~9割しか使われていない。残りの1~2割はつぶれたままの状態になっているわけだが、深呼吸をするとそれらが開くのだ。さらに多くのプロスタグランジン12がつくられるようになるのである。
ただ、深呼吸にも腹式と胸式の2種類があって、効果をより高めたいのなら、それらを交互に行なうのがいいと北村教授は語る。Sさんが試したのも、この方法である。
「胸一杯に空気を吸ったり、吐いたりする深呼吸を胸式深呼吸といいます。一方、おなかを膨らませたり、へこませたりして行なうのが腹式深呼吸です。私たちが普段、呼吸をしているときは、無意識のうちに両方使った呼吸をしている。これを意識的に大きく、ゆっくり行なうだけでいいのです。胸式深呼吸のときには肺の上部にある肺胞が開き、腹式深呼吸のときには肺の下部にある肺胞が開く。交互に行なうことで、肺全体でプロスタグランジン12が効率よくつくられるようになるのです」
深呼吸にはほかにも効果があって、その代表がストレスの解消だ。精神的なストレスがかかると、心拍数を増やし血管を収縮させるカテコールアミンという生理活性物質が分泌されるが、プロスタグランジン12はその生成も抑えてくれる。深呼吸することで、心身ともに安定するのである。
北村教授は言う。
「ストレスは、高血圧、動脈硬化、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞など、生活習慣病、現代病といわれる病気の大半に関与しています。深呼吸はストレスを追い払って、これらの病気の予防にも役立つのです」
中高年の男性ほど積極的に取り組むべし
では、具体的に深呼吸のやり方を説明しよう。まず、胸式深呼吸である。
・胸を張り、胸を広げるようにして、空気を吸い込む
・胸をせばめるようにして、肺の中の空気を吐き出す。このとき、肩は下げるようにする
・ラジオ体操の深呼吸のように、両腕を前から上げて息を吸い、続けて両脇に降ろして吐くという動作を交えて行なってもよい
続いて、腹式深呼吸。
・おなかを膨らませて空気を吸い込む
・おなかをへこませるようにして、空気を吐き出す
・このとき、胸式深呼吸のように腕を上げたり、降ろしたりしながら行なってもよい
どちらも、できるだけゆっくり行なうのがポイントだ。そして、この胸式深呼吸と腹式深呼吸を交互に、それぞれ5回、計10回行なう。もちろん、10回以上行なってもかまわないが、まとめてやろうというのではなく、朝起きたとき、夜寝るとき、さらに昼食後にも行なうのが効果的である。非常に簡単なので、1日3回はわけないであろう。
また、ストレス解消と述べたように、緊張をほぐすときにも有効である。大勢の人の前に立つとき深呼吸しろと言われるのも、実は理に適ったことなのである。実際、精神的な緊張が高まっているときに、これを行なうと気持ちが安らぐはずだ。
男性は中高年になると、プロスタグランジン12ができる能力が衰えてくる。だからこそ、中高年の男性ほど深呼吸を積極的に行なってもらいたいと北村教授は話している。
著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)
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