ビジネスわかったランド (経営・社長)
簡単健康法
セックス健康法
セックス健康法
性欲の減退は、人間らしさを司る前頭葉に弊害をもたらす
北鎌倉の駅を降りて南への坂を登っていき、いい加減疲れたところで細い小道に曲がって、なおも歩くと、丘の上にひっそりと建つ家があった。
玄関のブザーを鳴らし、戸をガラリと開ける。男がニッと笑って立っている。正直言って、初対面ならその人が日本の大脳生理学の権威とは誰も思わないに違いない。70歳とはいえ、若いころはプロレスラーをしていたと言っても納得させられるほどのたくましい体つきである。
正体を明かす。その人は、京都大学名誉教授の大島清先生である。大島邸に編集者や記者が集まり、たびたび酒を飲む。その日、私も招かれたのである。大島先生は以前、名古屋に居を構えておられたのだが、北鎌倉に終の棲家を見つけたという噂だった。
利き脳に直結した睾丸を刺激すると…
先生が北鎌倉のこの家に強く惹かれた理由は、すぐわかった。ワイワイと男たちが飲んでいる部屋に通されると、大きな窓から一面に見えるのは空と丘だけ。しかも、眼下に広がるのは絨毯のように敷きつめられた森の緑である。こんなに見事な自然が、まだ東京からそれほど遠くないところに残されていたのだ。
遅れて酒宴に参加したが、いつしか私も酔っぱらいの仲間となっていた。話も下ネタヘと移っていく。
「この前、よく見てみると左の睾丸のほうが右の睾丸よりダラッと垂れ下がっているのに気づきました。左のほうが何となく弱々しいのです。これって変ですよね」
R記者がこう言うと、「使い方が偏っているから、左の睾丸が衰えてしまったのではないか」と、G書房のE編集長。
「体位がいけないのかな。君はどんな体位を好むの?」と、J出版のU。
「気のせいじゃないのか。ちゃんと物差しで測ってみたの」と、私。
すると、R君はやや不安げに「そこまで言われるとハッキリわかりませんが、鏡で見比べるとそんな気がしたもので……」と言った。
最後に大島先生が口を開いた。
「R君の言うのが正しいよ。実はたいていの男は左の睾丸のほうが右より垂れ下がっているんだ。日本人では左の睾丸が下がっている人の割合は75%、アメリカ人では65%というデータがある」
それにしても、そんなデータがあるとは驚きだ。実は、先生は「性学」の大家でもあるのだ。先生によると、この比率は右利きの人の比率とほぼ同じだという。
大脳は1つではなく、左右の半球に分かれている。そして、右の大脳半球(右脳)は左半身、左の大脳半球(左脳)は右半身を支配している。つまり、右利きの人は左脳が“利き脳”になっているのだ。
そのため、たいていの人は性に関する信号の多くが右のほうの睾丸を吊り上げている陰嚢内の筋肉(挙睾筋)に集中していて、これを収縮させている。そのために、右の睾丸が左より上がっているのである。決して左の睾丸が右の睾丸よりカがないわけではない。
「そこでだ、利き脳に直結している右側の睾丸をやさしく女性にマッサージしてもらうか、自分で刺激すると精力が高まるというわけなんだ」
つまり、右(左利きの人は左)の睾丸を刺激すると、大脳が刺激されやすく、しかも刺激を与えられた脳からは脳下垂体ホルモンがたくさん分泌されて、精巣の男性ホルモンの分泌も精子の製造も、より活発になる、と大島先生は言う。
「ただし、睾丸は敏感な部分なので、強く刺激してはいけない。手のひらで赤ちゃんの頭をなでさするように、やさしくゆっくりとマッサージすることが大切だ。セックスの際、温かい息を女性に吹きかけてもらい、温度に差をつけるのも性感を高めるテクニックになるね」
大島先生の博学には、一同驚愕である。一流の大脳生理学者ともなると、性の奥義にも精通しているのだ。
以上は、酔っぱらいの戯れ言では決してない。性欲は、人間が毎日を健康に、しかも充実して生きていくための原動力となるからだ。
性欲の衰えは由々しき問題
大脳生理学の見地では、人間の性欲は大脳新皮質の前頭葉(脳の前側の部分)の活動としてとらえられている。前頭葉は意思、思考、計画、感動、判断、創造といったまさに人間らしい生き方、行動の決定を司る部位である。
したがって、性欲が減退すると、判断力の低下、無計画な行動、意志の弱さ、無感動、無気力、それに独創性の低下など、さまざまな弊害が必ず現われてくるという。
また、前頭葉の働きが低下するとストレスを受けやすくなり、心筋梗塞、糖尿病、高血圧、動脈硬化といった成人病も進みやすくなる。性欲が衰えると、いいことは1つもないのだ。
英雄色を好む、というのは本当だ。政治家にボケがいない道理と同じである。ある高名な政治家は、生前、女性との性交の回数を表に記していた。死後、机の引き出しからその表が発見されたとき調べてみると、現役のときには無数にあった印が、引退と同時にガタ減りしていたという。
中高年になったからといって、性欲を恥じることはない。人間の性欲は生きている限り、なくなることはない。「生は性なり」と大島先生は言う。性欲が強いというと、ギラギラと脂ぎったイメージでとらえる人がいるかもしれないが、要は男性としての能力が優れていると考えたほうがよいのだ。
ところが、中高年になると、精力の衰えを感じる人が少なくない。人によっては、30代で性欲の減退を訴える男性もいるようだ。これは由々しきことである。
性欲は、食欲とともに人間の本能に根ざした本質的な欲求であり、それが衰えているということは、何か問題が隠されている場合がある。成人病であったり、あるいは極端に体力が低下している可能性も高い。精力の減退を強く感じている人は、一度、病院で体のチェックをしてもらうといいだろう。
性の奥深さを痛感しつつ、その日、大島邸での酒宴は、ますます盛り上がっていった。
著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)
性欲の減退は、人間らしさを司る前頭葉に弊害をもたらす
北鎌倉の駅を降りて南への坂を登っていき、いい加減疲れたところで細い小道に曲がって、なおも歩くと、丘の上にひっそりと建つ家があった。
玄関のブザーを鳴らし、戸をガラリと開ける。男がニッと笑って立っている。正直言って、初対面ならその人が日本の大脳生理学の権威とは誰も思わないに違いない。70歳とはいえ、若いころはプロレスラーをしていたと言っても納得させられるほどのたくましい体つきである。
正体を明かす。その人は、京都大学名誉教授の大島清先生である。大島邸に編集者や記者が集まり、たびたび酒を飲む。その日、私も招かれたのである。大島先生は以前、名古屋に居を構えておられたのだが、北鎌倉に終の棲家を見つけたという噂だった。
利き脳に直結した睾丸を刺激すると…
先生が北鎌倉のこの家に強く惹かれた理由は、すぐわかった。ワイワイと男たちが飲んでいる部屋に通されると、大きな窓から一面に見えるのは空と丘だけ。しかも、眼下に広がるのは絨毯のように敷きつめられた森の緑である。こんなに見事な自然が、まだ東京からそれほど遠くないところに残されていたのだ。
遅れて酒宴に参加したが、いつしか私も酔っぱらいの仲間となっていた。話も下ネタヘと移っていく。
「この前、よく見てみると左の睾丸のほうが右の睾丸よりダラッと垂れ下がっているのに気づきました。左のほうが何となく弱々しいのです。これって変ですよね」
R記者がこう言うと、「使い方が偏っているから、左の睾丸が衰えてしまったのではないか」と、G書房のE編集長。
「体位がいけないのかな。君はどんな体位を好むの?」と、J出版のU。
「気のせいじゃないのか。ちゃんと物差しで測ってみたの」と、私。
すると、R君はやや不安げに「そこまで言われるとハッキリわかりませんが、鏡で見比べるとそんな気がしたもので……」と言った。
最後に大島先生が口を開いた。
「R君の言うのが正しいよ。実はたいていの男は左の睾丸のほうが右より垂れ下がっているんだ。日本人では左の睾丸が下がっている人の割合は75%、アメリカ人では65%というデータがある」
それにしても、そんなデータがあるとは驚きだ。実は、先生は「性学」の大家でもあるのだ。先生によると、この比率は右利きの人の比率とほぼ同じだという。
大脳は1つではなく、左右の半球に分かれている。そして、右の大脳半球(右脳)は左半身、左の大脳半球(左脳)は右半身を支配している。つまり、右利きの人は左脳が“利き脳”になっているのだ。
そのため、たいていの人は性に関する信号の多くが右のほうの睾丸を吊り上げている陰嚢内の筋肉(挙睾筋)に集中していて、これを収縮させている。そのために、右の睾丸が左より上がっているのである。決して左の睾丸が右の睾丸よりカがないわけではない。
「そこでだ、利き脳に直結している右側の睾丸をやさしく女性にマッサージしてもらうか、自分で刺激すると精力が高まるというわけなんだ」
つまり、右(左利きの人は左)の睾丸を刺激すると、大脳が刺激されやすく、しかも刺激を与えられた脳からは脳下垂体ホルモンがたくさん分泌されて、精巣の男性ホルモンの分泌も精子の製造も、より活発になる、と大島先生は言う。
「ただし、睾丸は敏感な部分なので、強く刺激してはいけない。手のひらで赤ちゃんの頭をなでさするように、やさしくゆっくりとマッサージすることが大切だ。セックスの際、温かい息を女性に吹きかけてもらい、温度に差をつけるのも性感を高めるテクニックになるね」
大島先生の博学には、一同驚愕である。一流の大脳生理学者ともなると、性の奥義にも精通しているのだ。
以上は、酔っぱらいの戯れ言では決してない。性欲は、人間が毎日を健康に、しかも充実して生きていくための原動力となるからだ。
性欲の衰えは由々しき問題
大脳生理学の見地では、人間の性欲は大脳新皮質の前頭葉(脳の前側の部分)の活動としてとらえられている。前頭葉は意思、思考、計画、感動、判断、創造といったまさに人間らしい生き方、行動の決定を司る部位である。
したがって、性欲が減退すると、判断力の低下、無計画な行動、意志の弱さ、無感動、無気力、それに独創性の低下など、さまざまな弊害が必ず現われてくるという。
また、前頭葉の働きが低下するとストレスを受けやすくなり、心筋梗塞、糖尿病、高血圧、動脈硬化といった成人病も進みやすくなる。性欲が衰えると、いいことは1つもないのだ。
英雄色を好む、というのは本当だ。政治家にボケがいない道理と同じである。ある高名な政治家は、生前、女性との性交の回数を表に記していた。死後、机の引き出しからその表が発見されたとき調べてみると、現役のときには無数にあった印が、引退と同時にガタ減りしていたという。
中高年になったからといって、性欲を恥じることはない。人間の性欲は生きている限り、なくなることはない。「生は性なり」と大島先生は言う。性欲が強いというと、ギラギラと脂ぎったイメージでとらえる人がいるかもしれないが、要は男性としての能力が優れていると考えたほうがよいのだ。
ところが、中高年になると、精力の衰えを感じる人が少なくない。人によっては、30代で性欲の減退を訴える男性もいるようだ。これは由々しきことである。
性欲は、食欲とともに人間の本能に根ざした本質的な欲求であり、それが衰えているということは、何か問題が隠されている場合がある。成人病であったり、あるいは極端に体力が低下している可能性も高い。精力の減退を強く感じている人は、一度、病院で体のチェックをしてもらうといいだろう。
性の奥深さを痛感しつつ、その日、大島邸での酒宴は、ますます盛り上がっていった。
著者
宮田 充(医療ジャーナリスト)
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