ビジネスわかったランド (経営・社長)
医食同源
人気薄のフルーツに思わぬ薬効が!
人気薄のフルーツに思わぬ薬効が!
昭和38年、翌年の東京オリンピックを控えて、日本経済が大きく飛躍しようとしていたころ、逆に新しい時代の流れに乗れず、没落していくものがあった。バナナである。
この年、バナナの輸入が自由化され、競り売りが行なわれるようになった。すると、価格が一気に下落。それ以前のバナナはほとんどが台湾産で数も少なかったのだが、フィリピン産や南米産が堰を切ったように日本に押し寄せたのだった。
以降、果物のなかでもとりわけ高級で、病気になったときくらいしか口にできなかったバナナは、誰でも食べられる大衆果に成り下がってしまった。
黒いバナナがガンを防ぐ
『ゲゲゲの鬼太郎』で有名な漫画家の水木しげるさんは、この年はまだ無名で、極貧の生活を送っていた。それも並大抵の貧乏ではなかったらしい。半生をつづった『ねぼけ人生』のなかで、当時の最高の喜びは一山100円の真っ黒になったバナナを八百屋で買うことだったと書いている。
水木さんは自由化で安くなったバナナすら買うことができなかったわけだが、黒くなったバナナが水木さんの健康を大いに増進させ、その後のエネルギッシュな創作活動に向かわせたのではないか、と私はみている。傷んだバナナが水木さんに幸運をもたらしたといっても言い過ぎではないだろう。
黒いバナナは嫌がられるが、これほどパワーをもち、健康を増進する食物は少ない。
バナナの皮にシミのような黒い斑点(シュガースポットという)が出てくると、実が熟して甘味も増したという証拠。実は、このとき白血球の働きを高める作用が強くなるのだ。
周知のように、白血球は免疫機構を担っている。白血球はさらにリンパ球、NK細胞、マクロファージなどに分類でき、それぞれ外から侵入してくるウイルスや細菌を退治してくれる。
驚かれるかもしれないが、私たちの体の中では、毎日のようにガン細胞が生まれている。なのに、すべての人がガンにならないのは、それが大きくなる前に白血球が退治してくれるからだ。白血球の働きさえ正常であれば、ガン細胞ができても少しも怖くはない。
また、ガンとともに私たちの長寿を阻んでいる動脈硬化も、白血球の1つであるマクロファージがしっかりしていれば、変成した脂質を処理し、防いでくれる。
要するに、白血球なくして動物は生きていけないわけだ。その証拠に、赤血球をもっていない動物(イカやタコを切っても赤い血は出ない)はこの世にたくさんいるが、白血球をもっていない動物は存在しない。
興味深いことに、シュガースポットの1つもない、きれいな黄色いバナナは白血球を活性化させる働きが弱い。それは、動物実験でも確かめられている。健康のためにバナナを食べるなら、黒くなったバナナのほうがいいことがおわかりいただけよう。しかも、そうしたバナナは値段も安いから一挙両得だ。
このほか、塩分の害を抑えるカリウムが大量に含まれているので、高血圧の予防にもなる。食物繊維も豊富で便秘の解消にもつながる。ただし、カロリーが高いので食べ過ぎだけは注意しよう。
秋の味覚・柿はビタミンCの宝庫
もう1つ、バナナとともにぜひ見直していただきたい果物が柿である。柿もバナナ同様にいま1つ人気に欠ける果物だが、こちらも健康にはきわめてよい。というのも、柿にはビタミンCがとりわけ豊富に含まれているからである。ビタミンCといえばレモンが有名だが、柿にはかなわないのだ(レモン100グラム中のビタミンCの含有量は32~56ミリグラム。対して柿の実には49~72ミリグラムも含まれている)。
ビタミンCの薬利作用は、それこそ挙げればきりがない。1970年にアメリカのライナス・ポーリング博士(ノーベル賞学者)が、「ビタミンCを大量摂取すると幅広い薬効を示す」と発表して以降、わかってきたことを紹介すると。
まずビタミンCは、プロスタグランジンという生理活性物質の生成と調節に関わっており、プロスタグランジンは多様な生理作用をもっていることから、免疫を高めたり、コレステロールを低下させると考えられている。さらに、血圧の抑制、喘息などのアレルギー病の防止、糖尿病やガンも防ぐとされる。
また、ビタミンCは体内でインターフェロンができるのを促進する。インターフェロンはガンやウイルスをやっつける特効薬として有名だ。カゼを引いたときにビタミンCが用いられるのもこのためである。もう1つ、ビタミンCは老化と万病の元である活性酸素を退治する物質(抗酸化剤)としての働きをもつことも大きいだろう。
こうしたことから、白内障、脳卒中、心筋梗塞、歯槽膿漏、糖尿病、痴呆、肺炎、胃・十二指腸潰瘍、貧血、肝臓病、骨粗鬆症、更年期障害などに効くと考えられている。要は、体が衰えたり、老化するのを防ぐ効果が強いというわけだ。
いまでは、1日にビタミンCを1000ミリグラム摂るのが1つの健康法になっていて、その信奉者は世界中にいるくらい。柿をいっぱい食べるということは、その健康法を実践しているのと同じなのである。
柿の実には、大量のビタミンCが含まれているといったが、実はもっとたくさん含んでいるのは葉のほうだ。柿の葉は600~800ミリグラムものビタミンCを含有している。最近は柿の葉茶も市販されているので、これを飲んでみるのもいいだろう。
著者
堀田 宗路(医療ジャーナリスト)
昭和38年、翌年の東京オリンピックを控えて、日本経済が大きく飛躍しようとしていたころ、逆に新しい時代の流れに乗れず、没落していくものがあった。バナナである。
この年、バナナの輸入が自由化され、競り売りが行なわれるようになった。すると、価格が一気に下落。それ以前のバナナはほとんどが台湾産で数も少なかったのだが、フィリピン産や南米産が堰を切ったように日本に押し寄せたのだった。
以降、果物のなかでもとりわけ高級で、病気になったときくらいしか口にできなかったバナナは、誰でも食べられる大衆果に成り下がってしまった。
黒いバナナがガンを防ぐ
『ゲゲゲの鬼太郎』で有名な漫画家の水木しげるさんは、この年はまだ無名で、極貧の生活を送っていた。それも並大抵の貧乏ではなかったらしい。半生をつづった『ねぼけ人生』のなかで、当時の最高の喜びは一山100円の真っ黒になったバナナを八百屋で買うことだったと書いている。
水木さんは自由化で安くなったバナナすら買うことができなかったわけだが、黒くなったバナナが水木さんの健康を大いに増進させ、その後のエネルギッシュな創作活動に向かわせたのではないか、と私はみている。傷んだバナナが水木さんに幸運をもたらしたといっても言い過ぎではないだろう。
黒いバナナは嫌がられるが、これほどパワーをもち、健康を増進する食物は少ない。
バナナの皮にシミのような黒い斑点(シュガースポットという)が出てくると、実が熟して甘味も増したという証拠。実は、このとき白血球の働きを高める作用が強くなるのだ。
周知のように、白血球は免疫機構を担っている。白血球はさらにリンパ球、NK細胞、マクロファージなどに分類でき、それぞれ外から侵入してくるウイルスや細菌を退治してくれる。
驚かれるかもしれないが、私たちの体の中では、毎日のようにガン細胞が生まれている。なのに、すべての人がガンにならないのは、それが大きくなる前に白血球が退治してくれるからだ。白血球の働きさえ正常であれば、ガン細胞ができても少しも怖くはない。
また、ガンとともに私たちの長寿を阻んでいる動脈硬化も、白血球の1つであるマクロファージがしっかりしていれば、変成した脂質を処理し、防いでくれる。
要するに、白血球なくして動物は生きていけないわけだ。その証拠に、赤血球をもっていない動物(イカやタコを切っても赤い血は出ない)はこの世にたくさんいるが、白血球をもっていない動物は存在しない。
興味深いことに、シュガースポットの1つもない、きれいな黄色いバナナは白血球を活性化させる働きが弱い。それは、動物実験でも確かめられている。健康のためにバナナを食べるなら、黒くなったバナナのほうがいいことがおわかりいただけよう。しかも、そうしたバナナは値段も安いから一挙両得だ。
このほか、塩分の害を抑えるカリウムが大量に含まれているので、高血圧の予防にもなる。食物繊維も豊富で便秘の解消にもつながる。ただし、カロリーが高いので食べ過ぎだけは注意しよう。
秋の味覚・柿はビタミンCの宝庫
もう1つ、バナナとともにぜひ見直していただきたい果物が柿である。柿もバナナ同様にいま1つ人気に欠ける果物だが、こちらも健康にはきわめてよい。というのも、柿にはビタミンCがとりわけ豊富に含まれているからである。ビタミンCといえばレモンが有名だが、柿にはかなわないのだ(レモン100グラム中のビタミンCの含有量は32~56ミリグラム。対して柿の実には49~72ミリグラムも含まれている)。
ビタミンCの薬利作用は、それこそ挙げればきりがない。1970年にアメリカのライナス・ポーリング博士(ノーベル賞学者)が、「ビタミンCを大量摂取すると幅広い薬効を示す」と発表して以降、わかってきたことを紹介すると。
まずビタミンCは、プロスタグランジンという生理活性物質の生成と調節に関わっており、プロスタグランジンは多様な生理作用をもっていることから、免疫を高めたり、コレステロールを低下させると考えられている。さらに、血圧の抑制、喘息などのアレルギー病の防止、糖尿病やガンも防ぐとされる。
また、ビタミンCは体内でインターフェロンができるのを促進する。インターフェロンはガンやウイルスをやっつける特効薬として有名だ。カゼを引いたときにビタミンCが用いられるのもこのためである。もう1つ、ビタミンCは老化と万病の元である活性酸素を退治する物質(抗酸化剤)としての働きをもつことも大きいだろう。
こうしたことから、白内障、脳卒中、心筋梗塞、歯槽膿漏、糖尿病、痴呆、肺炎、胃・十二指腸潰瘍、貧血、肝臓病、骨粗鬆症、更年期障害などに効くと考えられている。要は、体が衰えたり、老化するのを防ぐ効果が強いというわけだ。
いまでは、1日にビタミンCを1000ミリグラム摂るのが1つの健康法になっていて、その信奉者は世界中にいるくらい。柿をいっぱい食べるということは、その健康法を実践しているのと同じなのである。
柿の実には、大量のビタミンCが含まれているといったが、実はもっとたくさん含んでいるのは葉のほうだ。柿の葉は600~800ミリグラムものビタミンCを含有している。最近は柿の葉茶も市販されているので、これを飲んでみるのもいいだろう。
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堀田 宗路(医療ジャーナリスト)
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