ビジネスわかったランド (経営・社長)
医食同源
生活習慣病の予防にはコンブを食べるのが一番
生活習慣病の予防にはコンブを食べるのが一番
戦国武将たちは海藻の備蓄に励んだ。たとえば、加藤清正は熊本城を築いたとき、城壁に外から見えないようコンブやアラメ(荒布)を工夫して塗り込んだという。松永弾正久秀は城内に干飯、イモの茎、干菜、干魚などといっしょに、コンブ、ワカメ、ヒジキなどを3年分も蓄えていたと伝えられている。
江戸時代には、コンブなどの海藻は飢饉の際の保存食品として活躍した。江戸時代に全国規模で起こった飢饉は30数回。小地域で起こったものを加えると、100回以上になるという。これに備えるために、各藩ではコンブ、ワカメ、ヒジキなど海藻を救荒備蓄に用いるよう、藩士や領民に勧めていた。
コンブが蓄えられたのは、備蓄に便利だっただけではない。縁起のいい食品ともされていた。鎌倉時代の武士は出陣のとき、熨斗鮑(打鮑ともいう)、搗栗、コンブの順に酒の肴にした。つまり、「打って」「勝って」「喜ぶ」。とりわけめでたいのがコンブだ。1697年に発刊されたわが国の薬物書『本朝食鑑』にも「昆布はもてなし、祝いの贈り物とし、冠婚寿生の賀を祝う」とある。
またコンブは薬としても用いられてきた。中国の薬物書の古典『本草綱目』では、コンブは12種類の水腫(むくみ)に効くと記されている。コンブにはヨードが含まれているが、これが不足すると顔がむくんだり、甲状腺が腫れたりする。たしかに水腫に効くのである。
次々明らかになったコンブの効用
しかし、コンブの本当のありがたさがわかってきたのは、つい最近のことだ。調べれば調べるほど、コンブには私たちの健康を守る成分が充満していることがわかってきた。
最近のコンブについての研究成果を報告してみよう。
まず、コンブに血圧降下作用を示す新成分ラミニンが存在することがわかってきた。ラミニンはコンブの学名ラミナリアにちなんで名づけられたもので、アミノ酸(タンパク質の構成成分)の一種。ラミニンの血圧降下作用は一時的なもので長続きはしないが、非常に体に有効であることは確かだ。
そのほか、コンブには高血圧に有効な成分であるカリウムが含まれている。カリウムには、血圧を上昇させるナトリウムの排泄を促す働きがある。また、アルギン酸という水溶性の食物繊維が多量に含まれていて、これには高血圧を招く肥満を防ぐ作用が認められている。
乾燥させたコンブを水で戻すとヌルヌルしてくるが、このヌルヌルのもとになっているのがアルギン酸やフコイダンといった成分である。これらには、さらにコレステロールの吸収を抑えて、動脈硬化を防ぐ働きがある。アルギン酸には、ガンを予防する作用もあるとされる。
血栓ができるのを防ぐEPAやフコステロールも豊富に含まれていて、こちらのほうは脳梗塞や心筋梗塞の予防につながる。もちろん、コンブの食物繊維は便秘、痔、大腸ガンの予防にも有効だ。
タウリンという成分が多量に含まれていることにも注目したい。タウリンはアミノ酸の一種で、その成分に硫黄を含んでいることから含硫アミノ酸と呼ばれる。これには最近、多彩な作用があることがわかり、にわかに人気者となってきた。
タウリンは目の網膜や水晶体などに多く含まれていて、視力の保持に重要な働きをしている。神経の働きを調節する作用もあり、てんかんの薬としても用いられている。鬱病とタウリン量の変化には深い関係があるといわれ、神経中のタウリンの量が変化すると、体温が下がったり、食欲がなくなることもわかってきた。
心臓の働きにもタウリンが関係しているらしい。不整脈の患者にタウリンを投与すると、効果のあることが明らかにされている。同様に狭心症の患者にタウリンを与えたところ、発作の回数が減ったという報告もある。心筋梗塞の患者がタウリンを飲むことで、経過がよくなったという研究もある。
京都大学の家森幸男教授は、ネズミを使った実験で、タウリンを加えたエサを与えたネズミの血圧が下がったり、血液中のコレステロールが減ることを突き止めた。その他、タウリンにはアルギン酸と同じく血栓ができるのを防ぐ効果もある。
コンブ水は手軽な健康食品
もっとも、これだけ多くの効果が報告されると、「本当か?」と思われることだろう。実は、これらコンブの効用は実験だけでなく、長年の経験によっても確かめられている。
長寿者の多い地域で、コンブがよく食べられているのは昔から有名だ。その代表が沖縄県。長寿の里・沖縄は、日本一のコンブ消費量を誇っているのであるが、面白いことに、コンブは沖縄ではあまり採れない。琉球王朝の時代から、北海道と交易をし仕入れてきたのだ。沖縄の人たちは体験的にコンブが長寿食で、おめでたい食品であることを知っていたので、わざわざ遠くから取り寄せていたのであろう。
コンブは安価だし、日本人には馴染みがあり、食べやすい食品である。料理に使ってどんどん食べるようにしたい。とくによく煮て食べると、先の栄養分を利用しやすくなる。
手軽にコンブの威力を利用したいという方には「コンブ水」をお勧めしたい。これは次のようにつくる。コンブを一辺が4~5センチくらいの正方形に切り、コップ1杯の水に漬ける。
一晩経てばでき上がり。これにはコンブから溶け出したさまざまな有効成分があふれている。
この水を朝食のとき、毎日飲むと、効果が実感できるだろう。
もしかすると、ぬめりが気になって敬遠する人がいるかもしれない。しかし、何度か飲んでいるうちに慣れるはずだ。
コンブは保存が利くだけでなく、小さく切れば持ち運びにも便利である。小さく切ったものを携帯すれば、旅先でもコンブ水はつくれる。ブームというほどでもないが、高血圧、糖尿病、動脈硬化塞といった成人病(生活習慣病)の予防にコンブ水の人気は高いのだ。
著者
堀田 宗路(医事ジャーナリスト)
戦国武将たちは海藻の備蓄に励んだ。たとえば、加藤清正は熊本城を築いたとき、城壁に外から見えないようコンブやアラメ(荒布)を工夫して塗り込んだという。松永弾正久秀は城内に干飯、イモの茎、干菜、干魚などといっしょに、コンブ、ワカメ、ヒジキなどを3年分も蓄えていたと伝えられている。
江戸時代には、コンブなどの海藻は飢饉の際の保存食品として活躍した。江戸時代に全国規模で起こった飢饉は30数回。小地域で起こったものを加えると、100回以上になるという。これに備えるために、各藩ではコンブ、ワカメ、ヒジキなど海藻を救荒備蓄に用いるよう、藩士や領民に勧めていた。
コンブが蓄えられたのは、備蓄に便利だっただけではない。縁起のいい食品ともされていた。鎌倉時代の武士は出陣のとき、熨斗鮑(打鮑ともいう)、搗栗、コンブの順に酒の肴にした。つまり、「打って」「勝って」「喜ぶ」。とりわけめでたいのがコンブだ。1697年に発刊されたわが国の薬物書『本朝食鑑』にも「昆布はもてなし、祝いの贈り物とし、冠婚寿生の賀を祝う」とある。
またコンブは薬としても用いられてきた。中国の薬物書の古典『本草綱目』では、コンブは12種類の水腫(むくみ)に効くと記されている。コンブにはヨードが含まれているが、これが不足すると顔がむくんだり、甲状腺が腫れたりする。たしかに水腫に効くのである。
次々明らかになったコンブの効用
しかし、コンブの本当のありがたさがわかってきたのは、つい最近のことだ。調べれば調べるほど、コンブには私たちの健康を守る成分が充満していることがわかってきた。
最近のコンブについての研究成果を報告してみよう。
まず、コンブに血圧降下作用を示す新成分ラミニンが存在することがわかってきた。ラミニンはコンブの学名ラミナリアにちなんで名づけられたもので、アミノ酸(タンパク質の構成成分)の一種。ラミニンの血圧降下作用は一時的なもので長続きはしないが、非常に体に有効であることは確かだ。
そのほか、コンブには高血圧に有効な成分であるカリウムが含まれている。カリウムには、血圧を上昇させるナトリウムの排泄を促す働きがある。また、アルギン酸という水溶性の食物繊維が多量に含まれていて、これには高血圧を招く肥満を防ぐ作用が認められている。
乾燥させたコンブを水で戻すとヌルヌルしてくるが、このヌルヌルのもとになっているのがアルギン酸やフコイダンといった成分である。これらには、さらにコレステロールの吸収を抑えて、動脈硬化を防ぐ働きがある。アルギン酸には、ガンを予防する作用もあるとされる。
血栓ができるのを防ぐEPAやフコステロールも豊富に含まれていて、こちらのほうは脳梗塞や心筋梗塞の予防につながる。もちろん、コンブの食物繊維は便秘、痔、大腸ガンの予防にも有効だ。
タウリンという成分が多量に含まれていることにも注目したい。タウリンはアミノ酸の一種で、その成分に硫黄を含んでいることから含硫アミノ酸と呼ばれる。これには最近、多彩な作用があることがわかり、にわかに人気者となってきた。
タウリンは目の網膜や水晶体などに多く含まれていて、視力の保持に重要な働きをしている。神経の働きを調節する作用もあり、てんかんの薬としても用いられている。鬱病とタウリン量の変化には深い関係があるといわれ、神経中のタウリンの量が変化すると、体温が下がったり、食欲がなくなることもわかってきた。
心臓の働きにもタウリンが関係しているらしい。不整脈の患者にタウリンを投与すると、効果のあることが明らかにされている。同様に狭心症の患者にタウリンを与えたところ、発作の回数が減ったという報告もある。心筋梗塞の患者がタウリンを飲むことで、経過がよくなったという研究もある。
京都大学の家森幸男教授は、ネズミを使った実験で、タウリンを加えたエサを与えたネズミの血圧が下がったり、血液中のコレステロールが減ることを突き止めた。その他、タウリンにはアルギン酸と同じく血栓ができるのを防ぐ効果もある。
コンブ水は手軽な健康食品
もっとも、これだけ多くの効果が報告されると、「本当か?」と思われることだろう。実は、これらコンブの効用は実験だけでなく、長年の経験によっても確かめられている。
長寿者の多い地域で、コンブがよく食べられているのは昔から有名だ。その代表が沖縄県。長寿の里・沖縄は、日本一のコンブ消費量を誇っているのであるが、面白いことに、コンブは沖縄ではあまり採れない。琉球王朝の時代から、北海道と交易をし仕入れてきたのだ。沖縄の人たちは体験的にコンブが長寿食で、おめでたい食品であることを知っていたので、わざわざ遠くから取り寄せていたのであろう。
コンブは安価だし、日本人には馴染みがあり、食べやすい食品である。料理に使ってどんどん食べるようにしたい。とくによく煮て食べると、先の栄養分を利用しやすくなる。
手軽にコンブの威力を利用したいという方には「コンブ水」をお勧めしたい。これは次のようにつくる。コンブを一辺が4~5センチくらいの正方形に切り、コップ1杯の水に漬ける。
一晩経てばでき上がり。これにはコンブから溶け出したさまざまな有効成分があふれている。
この水を朝食のとき、毎日飲むと、効果が実感できるだろう。
もしかすると、ぬめりが気になって敬遠する人がいるかもしれない。しかし、何度か飲んでいるうちに慣れるはずだ。
コンブは保存が利くだけでなく、小さく切れば持ち運びにも便利である。小さく切ったものを携帯すれば、旅先でもコンブ水はつくれる。ブームというほどでもないが、高血圧、糖尿病、動脈硬化塞といった成人病(生活習慣病)の予防にコンブ水の人気は高いのだ。
著者
堀田 宗路(医事ジャーナリスト)
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