ビジネスわかったランド (経営・社長)
医食同源
モツ料理とカキは精カ剤ナンバーワン
モツ料理とカキは精カ剤ナンバーワン
「ホルモン料理」という言葉に懐かしさを覚える読者はたくさんいるに違いない。いまでいうモツ(内臓)料理のことである。1950年代、場末の横丁に行けば、何ともいえない食欲をそそる匂いが立ち込めていた。それをたどると、たいてい「ホルモン焼き」と書かれた看板に行き着いたものだった。
ホルモンはギリシア語で「刺激する」を意味し、医学的には人間の体のさまざまな機能を調節する生理活性物質の1つである。これが「人間の精力を高める」「スタミナをつける」という意味に解釈されて、大正の中ごろから昭和にかけて体を元気にする内臓料理とされた。
原因不明の頭痛や疲労にモツ料理が効く
もっとも、内臓料理の歴史はもっと古い。本格的に肉食が始まった明治初期にはすでに食べられていた、といわれている。
当時の『最暗黒の東京』(松原岩五郎著)という本には、江戸から東京に変わったとき、兵営などの残菜を業者が引き取り、それを安価で売っていたことが記されている。その残菜のなかに内臓も含まれていて、それを焼いたり、煮込んだものが貧しい人たちの間で盛んに食べられた。おそらくこれがホルモン料理の始まりであろう。
ホルモン料理が体を元気にする料理とされるようになったのは、実際に内臓を食べると体の疲れが取れたからだ。それもそのはずで、牛や豚の内臓には体を元気にする成分が豊富に含まれている。
とくに重要なのが、ユビデカレノン。これは体内で酵素の働きを助ける補酵素で、酵素が体の中で物質を分解したり、合成するときに(これらを代謝という)、その働きを円滑にするために必要な物質だ。ビタミンも同様の働きをしているので、ユビデカレノンはビタミンのようなものといえるだろう。
ユビデカレノンが足りなくなると、エネルギー不足が起こりやすくなり、体が疲れてくる。これが足りない場合とそうでない場合とでは、細胞のエネルギーをつくる能力が20倍以上も違う、ともいわれている。だから、何となく体が元気でないときにユビデカレノンを補給すると、途端に元気になるのだ。
しかも、ユビデカレノンは心臓、肝臓、腎臓などにとくに多く合まれている。これらの臓器は体内でもとりわけ多くのエネルギーを消費するからだ。モツを食べると元気になる理由がおわかりいただけよう。
疲労や頭痛、食欲不振、動悸、不眠などで医師の診察を受けたけれど、どこにも異常が見つからない。そんな人はユビデカレノンが不足していることが考えられる。まずは、ユビデカレノン(=内臓料理)を積極的に補給してみることだろう。
カキには身体に必要な亜鉛が大量に含まれる
一方、古くから精力剤とされてきた食品にカキがあるが、これも本当に効くのだろうか。
中国ではカキ殻のことを「牡蛎(ぼれい)」という。牡蛎はれっきとした生薬で、精神不安や不眠、イライラに効くとされる。牡蛎を使った柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)はノイローゼやうつ病にも用いられる有名な漢方の処方だ。
カキ殻の主成分はカルシウム。カルシウムには神経の興奮を抑える鎮静効果がある。その意味では、精神的ストレスによるインポテンツにも効果があるかもしれない。精力剤という面はたしかにある。ただ、いま精力剤として脚光を浴びているのは、いうまでもなくカキの身のほうだ。カキの身に豊富に含まれる亜鉛が、人間の体に不可欠な生体微量金属であることがわかってきたのである。
たとえば、日本人の精液中の精子数が減少しているという話をよく聞くようになった。精液1cc当たりの精子数は、かつては軽く「億」は超えていたが、現代ではその半分どころか2500万しかない若者も珍しくない。原因としてさまざまなものが挙げられているが、その有力候補の1つとして注目されているのが亜鉛の欠乏である。亜鉛が欠乏すると、精巣(睾丸)が萎縮し、精子ができなくなることがわかっているのだ。
精液中に亜鉛が高濃度に含まれているのも、男性の生殖機能と密接に結びついたミネラルであるからだろう。男性にとってカキが古くから精力剤とされてきたのも、これで察しがつく。
また、最近「何を食べても砂をかんでいるようで味がしない」と訴える人が多くなってきた。味覚障害と呼ばれるもので、これを起こす原因のなかでも突出して多いのが亜鉛の欠乏なのである。それだけではない。亜鉛欠乏はガンになりやすい体をつくったり、糖尿病を促進させたりする。動脈硬化も進める。実際、動脈硬化の患者には血液中の亜鉛の量が少なく、亜鉛を与えたところ、動脈硬化が改善したという報告もある。
さらに、現在、糖尿病網膜症と並んで、50歳以降の人の主な失明の原因となっている加齢性黄斑変性症という病気も、亜鉛との関係が取り沙汰されている。加齢性黄斑変性症は、網膜の中央部(黄斑という)が冒され、視野の中心が見えにくくなってしまう病気で、1980年代以降、猛烈な勢いで増えている。原因はよくわかっていない。ただ、亜鉛欠乏が注目され始めた。実際、網膜には亜鉛が多く含まれていて、動物実験などでは亜鉛が欠乏すると、網膜の変性が真っ先に起こってくる。人間の場合でも、亜鉛の投与により、加齢性黄斑変性症がよくなる例が報告されている。亜鉛は目まで元気にするのだ。
カキには100グラム中79ミリグラムもの亜鉛が含まれている。煎茶にも134ミリグラムと大量に含まれているが、お茶として飲むと6.4ミリグラムに減少する。亜鉛を摂取するには、やはりカキが一番だ。
著者
堀田 宗路(医療ジャーナリスト)
「ホルモン料理」という言葉に懐かしさを覚える読者はたくさんいるに違いない。いまでいうモツ(内臓)料理のことである。1950年代、場末の横丁に行けば、何ともいえない食欲をそそる匂いが立ち込めていた。それをたどると、たいてい「ホルモン焼き」と書かれた看板に行き着いたものだった。
ホルモンはギリシア語で「刺激する」を意味し、医学的には人間の体のさまざまな機能を調節する生理活性物質の1つである。これが「人間の精力を高める」「スタミナをつける」という意味に解釈されて、大正の中ごろから昭和にかけて体を元気にする内臓料理とされた。
原因不明の頭痛や疲労にモツ料理が効く
もっとも、内臓料理の歴史はもっと古い。本格的に肉食が始まった明治初期にはすでに食べられていた、といわれている。
当時の『最暗黒の東京』(松原岩五郎著)という本には、江戸から東京に変わったとき、兵営などの残菜を業者が引き取り、それを安価で売っていたことが記されている。その残菜のなかに内臓も含まれていて、それを焼いたり、煮込んだものが貧しい人たちの間で盛んに食べられた。おそらくこれがホルモン料理の始まりであろう。
ホルモン料理が体を元気にする料理とされるようになったのは、実際に内臓を食べると体の疲れが取れたからだ。それもそのはずで、牛や豚の内臓には体を元気にする成分が豊富に含まれている。
とくに重要なのが、ユビデカレノン。これは体内で酵素の働きを助ける補酵素で、酵素が体の中で物質を分解したり、合成するときに(これらを代謝という)、その働きを円滑にするために必要な物質だ。ビタミンも同様の働きをしているので、ユビデカレノンはビタミンのようなものといえるだろう。
ユビデカレノンが足りなくなると、エネルギー不足が起こりやすくなり、体が疲れてくる。これが足りない場合とそうでない場合とでは、細胞のエネルギーをつくる能力が20倍以上も違う、ともいわれている。だから、何となく体が元気でないときにユビデカレノンを補給すると、途端に元気になるのだ。
しかも、ユビデカレノンは心臓、肝臓、腎臓などにとくに多く合まれている。これらの臓器は体内でもとりわけ多くのエネルギーを消費するからだ。モツを食べると元気になる理由がおわかりいただけよう。
疲労や頭痛、食欲不振、動悸、不眠などで医師の診察を受けたけれど、どこにも異常が見つからない。そんな人はユビデカレノンが不足していることが考えられる。まずは、ユビデカレノン(=内臓料理)を積極的に補給してみることだろう。
カキには身体に必要な亜鉛が大量に含まれる
一方、古くから精力剤とされてきた食品にカキがあるが、これも本当に効くのだろうか。
中国ではカキ殻のことを「牡蛎(ぼれい)」という。牡蛎はれっきとした生薬で、精神不安や不眠、イライラに効くとされる。牡蛎を使った柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)はノイローゼやうつ病にも用いられる有名な漢方の処方だ。
カキ殻の主成分はカルシウム。カルシウムには神経の興奮を抑える鎮静効果がある。その意味では、精神的ストレスによるインポテンツにも効果があるかもしれない。精力剤という面はたしかにある。ただ、いま精力剤として脚光を浴びているのは、いうまでもなくカキの身のほうだ。カキの身に豊富に含まれる亜鉛が、人間の体に不可欠な生体微量金属であることがわかってきたのである。
たとえば、日本人の精液中の精子数が減少しているという話をよく聞くようになった。精液1cc当たりの精子数は、かつては軽く「億」は超えていたが、現代ではその半分どころか2500万しかない若者も珍しくない。原因としてさまざまなものが挙げられているが、その有力候補の1つとして注目されているのが亜鉛の欠乏である。亜鉛が欠乏すると、精巣(睾丸)が萎縮し、精子ができなくなることがわかっているのだ。
精液中に亜鉛が高濃度に含まれているのも、男性の生殖機能と密接に結びついたミネラルであるからだろう。男性にとってカキが古くから精力剤とされてきたのも、これで察しがつく。
また、最近「何を食べても砂をかんでいるようで味がしない」と訴える人が多くなってきた。味覚障害と呼ばれるもので、これを起こす原因のなかでも突出して多いのが亜鉛の欠乏なのである。それだけではない。亜鉛欠乏はガンになりやすい体をつくったり、糖尿病を促進させたりする。動脈硬化も進める。実際、動脈硬化の患者には血液中の亜鉛の量が少なく、亜鉛を与えたところ、動脈硬化が改善したという報告もある。
さらに、現在、糖尿病網膜症と並んで、50歳以降の人の主な失明の原因となっている加齢性黄斑変性症という病気も、亜鉛との関係が取り沙汰されている。加齢性黄斑変性症は、網膜の中央部(黄斑という)が冒され、視野の中心が見えにくくなってしまう病気で、1980年代以降、猛烈な勢いで増えている。原因はよくわかっていない。ただ、亜鉛欠乏が注目され始めた。実際、網膜には亜鉛が多く含まれていて、動物実験などでは亜鉛が欠乏すると、網膜の変性が真っ先に起こってくる。人間の場合でも、亜鉛の投与により、加齢性黄斑変性症がよくなる例が報告されている。亜鉛は目まで元気にするのだ。
カキには100グラム中79ミリグラムもの亜鉛が含まれている。煎茶にも134ミリグラムと大量に含まれているが、お茶として飲むと6.4ミリグラムに減少する。亜鉛を摂取するには、やはりカキが一番だ。
著者
堀田 宗路(医療ジャーナリスト)
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