ビジネスわかったランド (経営・社長)
健康Q&A
ツボ療法は本当に効く?
慢性病などには効果大
東洋医学では昔から、ツボ療法の効果を独自の考え方で説明しています。たとえば、中国の2000年前の書物『素門』には「気血が滞ることによって百病が生じる」と記されています。この気血というのは内臓などを支配している一種のエネルギーで、この流れが乱れることによってさまざまな病気が起こる、と考えたわけです。
ツボは気血の流れる通路の上にあります。この通路を経絡といい、ツボは正しくは経血と呼ばれています。内臓に異常があると、その内臓に関連のある経絡に反応が現われ、さらにエネルギーの滞った経絡上に現われる。そこで、経血(ツボ)に刺激を与えてエネルギーの流れをよくする。そうして、病気を治そうというのがツボ療法の目的とされてきました。
とはいえ、いくらこうした説明を受けても、現代の私たちには納得することは難しいでしょう。むしろ非科学的な感じがして、ツボの効果すら疑わしく思われるのではないでしょうか。やはり、ツボ療法の効果はまやかしなのでしょうか……。
ツボ療法は自律神経を調整する
もちろん、そんなことはありません。ツボ療法は病気に高い効果があることがハッキリと認められるようになってきていますし、最近ではその効果のメカニズムも科学的に解明されるようになってきました。
結論を先にいうと、ツボ療法がよく効くのは、ツボを刺激することによって自律神経の働きが調整されるから、といっていいでしょう。古代中国人は体の中を流れるエネルギーの乱れによって病気が生じると考えましたが、このエネルギーの乱れは、自律神経のバランスが乱れた状態といいかえることができるのです。
自律神経とは、私たちの意思とは無関係に消化、血液循環、呼吸、排泄など、全身の働きを自動的に調節している神経です。この神経には交感神経と副交感神経とがあり、この2つが拮抗しながら、互いに逆の働きをすることにより、全身の機能のバランスが取られています。
具体的にいうと、交感神経が緊張すれば心臓の働きが活発になって脈拍数が増え、血管が収縮して血圧が上がります。逆に交感神経が抑えられて、副交感神経の緊張が高まれば、心臓の働きは鈍って脈拍数が減り、血管が拡張して血圧が下がります。私たちがご飯を食べると、自然に唾液が出たり、胃液の分泌が活発になって胃の消化活動が盛んになるのも、これらの神経が状況に応じて各臓器の働きを調節しているからなのです。
ところが、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうとどうなるのか。それらの神経の支配を受けている心臓や血管、胃、腸、そのほかの臓器がバラバラに働くようになり、体には不都合な事態が続出してきます。自律神経はいわば体の機能の自動制御装置ですから、これが乱れてしまうと、それこそ“百病”が生じるようにさまざまな不快症状が現われてくることになるのです。
自律神経が失調してしまうと、具体的にはどんな症状が出てくるのでしょうか。体の部位別に見てみましょう。
・全身の症状―倦怠感、疲労感、熱感、肥満、やせ、冷え症など
・精神の症状―不安、緊張、イライラ、意欲喪失、不眠、記憶力の低下など
・筋肉や神経の症状―頭痛、頭重、肩こり、腰痛、手足のしびれなど
・循環器の症状―動悸、息切れ、不整脈、手足の冷え、高血圧、むくみなど
・呼吸器の症状―喘息、しゃっくり、セキなど
・胃腸の症状―食欲不振、腹痛、下痢、便秘など
・泌尿、生殖器の症状―頻尿、夜尿、インポテンツ、生理不順、更年期障害など
・目、耳、口、鼻の症状―めまい、耳鳴り、神経性鼻炎、唾液の分泌異常など
症状はいちいち挙げていったら、きりがないほどたくさんあります。最近話題になっている心身症という病気も、自律神経失調症と大きな関係がある病気です。実は、現代病の大半はストレスが大きな原因で、こうした自律神経の失調となんらかのつながりをもっているものばかりなのです。
現代医学が不得手な分野が得意
先ほど申し上げたように、ツボは自律神経と密接な関係をもっています。ある内臓に異常があると、その内臓の血管を支配している交感神経が緊張し、異常は神経的につながりのある皮膚表面に圧痛(押したときに感じる痛み)などの反応となって現われる。これを内臓皮膚反射といいます。現代医学的に解釈するなら、内臓皮膚反射の現われたところがツボになります。
ツボがよく効くのも、まさにこの点にあります。つまり、ツボが刺激されると、逆に交感神経の緊張が抑えられて、自律神経のバランスが回復し、異常のある内臓の働きが調整されるようになるのです。
ただし、その目的が自律神経の調整にあるわけですから、ツボがどんな病気にも効くということにはなりません。まず第一にガンのような悪性の腫瘍や、赤痢、コレラといった細菌性の伝染病には効果を期待することはできない。脳の血管障害から起こる症状を軽くすることはできますが、障害そのものを治すことはできません。
それでも、先に挙げた症状にツボ療法はよく効きます。また、慢性病の治りを早めたり、その症状を改善するのにも大いに役立ちます。しかも、これらの症状や病気はいずれも現代医学が不得手とするものばかりです。
病名はつけられなくても、食欲がない、頭が重い、なんとなく体がだるいといった不定愁訴に悩んでいる人がたくさんいます。そうしたいわば“半病人”ともいうべき人たちにツボ療法はよく効く。体の調子が悪くて病院へいっても、これといった原因が見つからず、十分な治療が受けられないようなときには、ツボ療法を試してみる価値はあるでしよう。
著者
谷津 三雄(日本大学名誉教授)
東洋医学では昔から、ツボ療法の効果を独自の考え方で説明しています。たとえば、中国の2000年前の書物『素門』には「気血が滞ることによって百病が生じる」と記されています。この気血というのは内臓などを支配している一種のエネルギーで、この流れが乱れることによってさまざまな病気が起こる、と考えたわけです。
ツボは気血の流れる通路の上にあります。この通路を経絡といい、ツボは正しくは経血と呼ばれています。内臓に異常があると、その内臓に関連のある経絡に反応が現われ、さらにエネルギーの滞った経絡上に現われる。そこで、経血(ツボ)に刺激を与えてエネルギーの流れをよくする。そうして、病気を治そうというのがツボ療法の目的とされてきました。
とはいえ、いくらこうした説明を受けても、現代の私たちには納得することは難しいでしょう。むしろ非科学的な感じがして、ツボの効果すら疑わしく思われるのではないでしょうか。やはり、ツボ療法の効果はまやかしなのでしょうか……。
ツボ療法は自律神経を調整する
もちろん、そんなことはありません。ツボ療法は病気に高い効果があることがハッキリと認められるようになってきていますし、最近ではその効果のメカニズムも科学的に解明されるようになってきました。
結論を先にいうと、ツボ療法がよく効くのは、ツボを刺激することによって自律神経の働きが調整されるから、といっていいでしょう。古代中国人は体の中を流れるエネルギーの乱れによって病気が生じると考えましたが、このエネルギーの乱れは、自律神経のバランスが乱れた状態といいかえることができるのです。
自律神経とは、私たちの意思とは無関係に消化、血液循環、呼吸、排泄など、全身の働きを自動的に調節している神経です。この神経には交感神経と副交感神経とがあり、この2つが拮抗しながら、互いに逆の働きをすることにより、全身の機能のバランスが取られています。
具体的にいうと、交感神経が緊張すれば心臓の働きが活発になって脈拍数が増え、血管が収縮して血圧が上がります。逆に交感神経が抑えられて、副交感神経の緊張が高まれば、心臓の働きは鈍って脈拍数が減り、血管が拡張して血圧が下がります。私たちがご飯を食べると、自然に唾液が出たり、胃液の分泌が活発になって胃の消化活動が盛んになるのも、これらの神経が状況に応じて各臓器の働きを調節しているからなのです。
ところが、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうとどうなるのか。それらの神経の支配を受けている心臓や血管、胃、腸、そのほかの臓器がバラバラに働くようになり、体には不都合な事態が続出してきます。自律神経はいわば体の機能の自動制御装置ですから、これが乱れてしまうと、それこそ“百病”が生じるようにさまざまな不快症状が現われてくることになるのです。
自律神経が失調してしまうと、具体的にはどんな症状が出てくるのでしょうか。体の部位別に見てみましょう。
・全身の症状―倦怠感、疲労感、熱感、肥満、やせ、冷え症など
・精神の症状―不安、緊張、イライラ、意欲喪失、不眠、記憶力の低下など
・筋肉や神経の症状―頭痛、頭重、肩こり、腰痛、手足のしびれなど
・循環器の症状―動悸、息切れ、不整脈、手足の冷え、高血圧、むくみなど
・呼吸器の症状―喘息、しゃっくり、セキなど
・胃腸の症状―食欲不振、腹痛、下痢、便秘など
・泌尿、生殖器の症状―頻尿、夜尿、インポテンツ、生理不順、更年期障害など
・目、耳、口、鼻の症状―めまい、耳鳴り、神経性鼻炎、唾液の分泌異常など
症状はいちいち挙げていったら、きりがないほどたくさんあります。最近話題になっている心身症という病気も、自律神経失調症と大きな関係がある病気です。実は、現代病の大半はストレスが大きな原因で、こうした自律神経の失調となんらかのつながりをもっているものばかりなのです。
現代医学が不得手な分野が得意
先ほど申し上げたように、ツボは自律神経と密接な関係をもっています。ある内臓に異常があると、その内臓の血管を支配している交感神経が緊張し、異常は神経的につながりのある皮膚表面に圧痛(押したときに感じる痛み)などの反応となって現われる。これを内臓皮膚反射といいます。現代医学的に解釈するなら、内臓皮膚反射の現われたところがツボになります。
ツボがよく効くのも、まさにこの点にあります。つまり、ツボが刺激されると、逆に交感神経の緊張が抑えられて、自律神経のバランスが回復し、異常のある内臓の働きが調整されるようになるのです。
ただし、その目的が自律神経の調整にあるわけですから、ツボがどんな病気にも効くということにはなりません。まず第一にガンのような悪性の腫瘍や、赤痢、コレラといった細菌性の伝染病には効果を期待することはできない。脳の血管障害から起こる症状を軽くすることはできますが、障害そのものを治すことはできません。
それでも、先に挙げた症状にツボ療法はよく効きます。また、慢性病の治りを早めたり、その症状を改善するのにも大いに役立ちます。しかも、これらの症状や病気はいずれも現代医学が不得手とするものばかりです。
病名はつけられなくても、食欲がない、頭が重い、なんとなく体がだるいといった不定愁訴に悩んでいる人がたくさんいます。そうしたいわば“半病人”ともいうべき人たちにツボ療法はよく効く。体の調子が悪くて病院へいっても、これといった原因が見つからず、十分な治療が受けられないようなときには、ツボ療法を試してみる価値はあるでしよう。
著者
谷津 三雄(日本大学名誉教授)
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