ビジネスわかったランド (経営・社長)
健康Q&A
老眼は防止できる?
調節訓練により可能
老眼は老化現象だからしかたがない。老眼に気付いたら、無理をしないで早く老眼鏡をかけたほうがいい。ほとんどの方はそう考えています。私たち眼科医の教科書にも、そう書いてあります。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
たとえば、体の老化を考えてみましょう。足腰が衰えてきたからといって、車ばかりに乗り、歩く時間を減らしたら、ますます足腰が衰えてしまいます。老眼鏡をかけるというのも実はこれと同じで、初期の老眼も老眼鏡で楽をすることで、その進行を早めてしまう恐れがある、と私は考えます。
老眼になったから老眼鏡をかけなくてはいけない、ということではないのです。
初期の老眼では老眼鏡をかけない!
目のピント合わせは、レンズに相当する水晶体と毛様体(毛様筋)とによって行なわれています。見ようとする物の距離に応じて、毛様筋が適度に緊張し、それに連動して水晶体が厚みを変えることによってピントを合わせているのです。
老眼とは、水晶体が厚くならないために、そうしたピント合わせができない状態をいいます。その原因として、次の3つが考えられてきました。
(1)毛様筋の筋力低下
(2)水晶体の弾力低下
(3)(1)と(2)の両方
しかし、最近は主に(2)が原因ではないか、とされています。
子供のころにはやわらかだった水晶体も、老眼が完成する50歳過ぎには変形できないくらい硬くなってしまいます。この事実が「老眼は老化現象なので、治療も予防もできない」という医学的常識につながっていくわけです。
もっとも、現実には水晶体は誰でも一様に硬くなっていくわけではありません。同じ65歳の人でも「枝豆」ほどの硬さになってしまう人から、「硬めのゼリー」ぐらいの人までさまざま。それは白内障(水晶体の濁り)の手術をする眼科医なら誰でも経験することです。
この差がどこから生まれてくるのかは、まだわかっていません。そこで、もう少し老眼について考えてみましょう。
35歳の水晶体は新聞を読むときに十分に厚くなり、余力を残しているので、何の問題もありません。ところが、45歳になると同じ距離の新聞にピントを合わせることはできますが、水晶体に余力がなくなるため、疲れを感じたり、少し離したほうが楽になってきます。これが初期の老眼です。
さらに48歳になると、いくら頑張っても35歳で読んでいた距離では新聞は読めません。読むためにはかなり離さなくてはならない。そのため、不足分の凸レンズを老眼鏡で補う必要が生じるわけですが、まだこの段階では中くらいの老眼です。
そして、いよいよ50歳を超えると老眼は「完成」します。完成した老眼の水晶体は遠くを見ても近くを見ても形が変わりません。ここまで進んでしまえば水晶体が硬すぎて、眼鏡に頼るしかありません。さらに厚い凸レンズが必要になります(もちろん、これらは平均であって、個人によって差はある)。
この経過のなかで、私が問題にしたいのは45歳の老眼(初期の老眼)です。頑張ればピントを合わせることができるが、余力がないために疲れたり、離して読んでしまう状態。この段階で、多くの人は眼鏡をつくってしまうのですが、私はここで「待った」をかけたいのです。
というのは、最初にお話ししたように足腰の衰えた人が、車に乗るようになると、ますます足腰が衰えてしまうのと同様、初期の老眼も老眼鏡で楽をしたら、老化が加速されて短期間のうちに50歳の目になってしまう可能性があるからです。
では、どうしたらいいのか。目も足腰と同じように鍛えればいいのです。そうすれば、きっと老化は抑えられるはずです。
簡単な訓練で老眼は改善される
先に老眼の原因を3つあげましたが、私は(3)の立場をとっています。老眼は毛様筋の筋力の低下と水晶体の弾力の低下によって進行すると考えています。だとしたら、それらの動きをよくしてあげれば、老眼にもいい影響を及ぼすはずです。
そこで、考えついたのが次のような運動(調節訓練)です。
(1)目の前15センチの位置に人さし指かボールペンなどを立て、その先端を見る。よく見えなくてもかまいません。
(2)(1)の状態で、さらにできるだけ遠くのもの(5メートル以上。遠ければ遠いほどよい)を見る。このとき、目の間とペン先と遠くの目標とが一直線上に並ぶようにする。
(3)(1)を1秒、(2)を1秒を1往復として20往復(約40秒間)行なう。
(4)このトレーニングを1日4回以上行なう。
(5)近視、乱視、遠視で眼鏡やコンタクトレンズを使用している人は使用したままで、この目の調節訓練を行なう。
私はこの目の運動をした26人と、何もしないで定期的に検査をした25人の老眼の進み具合を比べてみたことがあります(いずれのグルーブも年齢は40代)。すると、目の調節訓練をした人たちは2か月後には26人中16人の老眼が改善し、10人が不変で、悪化は1人もいませんでした。これに対して、何もしなかった人たちは改善がゼロで、不変が23人、悪化が2人という結果でした。
こんな簡単な運動で、実は私もびっくりするくらいの効果が客観的に認められたのです。
なかには、老眼がいくら進んでもかまわない、という人もいるでしょう。しかし、白内障や緑内障という病気は、老眼が完成する50歳以後に高率に発症します。これらの病気と老眼はいろいろな点で密接な関係をもっているので、もし老眼を遅らせることができれば、白内障や緑内障になる危険性も低下する可能性があるのです。この意味からも、やはり老眼は予防すべきものと私は考えています。
著者
福与 貴秀(福与眼科医院院長)
老眼は老化現象だからしかたがない。老眼に気付いたら、無理をしないで早く老眼鏡をかけたほうがいい。ほとんどの方はそう考えています。私たち眼科医の教科書にも、そう書いてあります。
しかし、本当にそうなのでしょうか。
たとえば、体の老化を考えてみましょう。足腰が衰えてきたからといって、車ばかりに乗り、歩く時間を減らしたら、ますます足腰が衰えてしまいます。老眼鏡をかけるというのも実はこれと同じで、初期の老眼も老眼鏡で楽をすることで、その進行を早めてしまう恐れがある、と私は考えます。
老眼になったから老眼鏡をかけなくてはいけない、ということではないのです。
初期の老眼では老眼鏡をかけない!
目のピント合わせは、レンズに相当する水晶体と毛様体(毛様筋)とによって行なわれています。見ようとする物の距離に応じて、毛様筋が適度に緊張し、それに連動して水晶体が厚みを変えることによってピントを合わせているのです。
老眼とは、水晶体が厚くならないために、そうしたピント合わせができない状態をいいます。その原因として、次の3つが考えられてきました。
(1)毛様筋の筋力低下
(2)水晶体の弾力低下
(3)(1)と(2)の両方
しかし、最近は主に(2)が原因ではないか、とされています。
子供のころにはやわらかだった水晶体も、老眼が完成する50歳過ぎには変形できないくらい硬くなってしまいます。この事実が「老眼は老化現象なので、治療も予防もできない」という医学的常識につながっていくわけです。
もっとも、現実には水晶体は誰でも一様に硬くなっていくわけではありません。同じ65歳の人でも「枝豆」ほどの硬さになってしまう人から、「硬めのゼリー」ぐらいの人までさまざま。それは白内障(水晶体の濁り)の手術をする眼科医なら誰でも経験することです。
この差がどこから生まれてくるのかは、まだわかっていません。そこで、もう少し老眼について考えてみましょう。
35歳の水晶体は新聞を読むときに十分に厚くなり、余力を残しているので、何の問題もありません。ところが、45歳になると同じ距離の新聞にピントを合わせることはできますが、水晶体に余力がなくなるため、疲れを感じたり、少し離したほうが楽になってきます。これが初期の老眼です。
さらに48歳になると、いくら頑張っても35歳で読んでいた距離では新聞は読めません。読むためにはかなり離さなくてはならない。そのため、不足分の凸レンズを老眼鏡で補う必要が生じるわけですが、まだこの段階では中くらいの老眼です。
そして、いよいよ50歳を超えると老眼は「完成」します。完成した老眼の水晶体は遠くを見ても近くを見ても形が変わりません。ここまで進んでしまえば水晶体が硬すぎて、眼鏡に頼るしかありません。さらに厚い凸レンズが必要になります(もちろん、これらは平均であって、個人によって差はある)。
この経過のなかで、私が問題にしたいのは45歳の老眼(初期の老眼)です。頑張ればピントを合わせることができるが、余力がないために疲れたり、離して読んでしまう状態。この段階で、多くの人は眼鏡をつくってしまうのですが、私はここで「待った」をかけたいのです。
というのは、最初にお話ししたように足腰の衰えた人が、車に乗るようになると、ますます足腰が衰えてしまうのと同様、初期の老眼も老眼鏡で楽をしたら、老化が加速されて短期間のうちに50歳の目になってしまう可能性があるからです。
では、どうしたらいいのか。目も足腰と同じように鍛えればいいのです。そうすれば、きっと老化は抑えられるはずです。
簡単な訓練で老眼は改善される
先に老眼の原因を3つあげましたが、私は(3)の立場をとっています。老眼は毛様筋の筋力の低下と水晶体の弾力の低下によって進行すると考えています。だとしたら、それらの動きをよくしてあげれば、老眼にもいい影響を及ぼすはずです。
そこで、考えついたのが次のような運動(調節訓練)です。
(1)目の前15センチの位置に人さし指かボールペンなどを立て、その先端を見る。よく見えなくてもかまいません。
(2)(1)の状態で、さらにできるだけ遠くのもの(5メートル以上。遠ければ遠いほどよい)を見る。このとき、目の間とペン先と遠くの目標とが一直線上に並ぶようにする。
(3)(1)を1秒、(2)を1秒を1往復として20往復(約40秒間)行なう。
(4)このトレーニングを1日4回以上行なう。
(5)近視、乱視、遠視で眼鏡やコンタクトレンズを使用している人は使用したままで、この目の調節訓練を行なう。
私はこの目の運動をした26人と、何もしないで定期的に検査をした25人の老眼の進み具合を比べてみたことがあります(いずれのグルーブも年齢は40代)。すると、目の調節訓練をした人たちは2か月後には26人中16人の老眼が改善し、10人が不変で、悪化は1人もいませんでした。これに対して、何もしなかった人たちは改善がゼロで、不変が23人、悪化が2人という結果でした。
こんな簡単な運動で、実は私もびっくりするくらいの効果が客観的に認められたのです。
なかには、老眼がいくら進んでもかまわない、という人もいるでしょう。しかし、白内障や緑内障という病気は、老眼が完成する50歳以後に高率に発症します。これらの病気と老眼はいろいろな点で密接な関係をもっているので、もし老眼を遅らせることができれば、白内障や緑内障になる危険性も低下する可能性があるのです。この意味からも、やはり老眼は予防すべきものと私は考えています。
著者
福与 貴秀(福与眼科医院院長)
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