ビジネスわかったランド (経営・社長)

健康Q&A

進行した動脈硬化が不安
抗血栓食が効果あり
全身にはくまなく血管が張りめぐらされています。そうした血管の中を流れる血液が全身の各組織に酸素と栄養を運ぶことで、私たちの生命活動は維持されているのです。
そのため、なんらかの原因で血管が詰まり、血液の流れがストップするようなことがあったら一大事です。血流が遮断されると、酸素が欠乏し、組織は壊死を起こします。こうした血管の詰まりによって引き起こされる病気を「血栓症」といい、心筋梗塞や脳梗塞といった病気がその代表選手です。
ご承知のように、心筋梗塞や脳梗塞は死に至る恐ろしい病気です。幸いに命はとりとめても重い障害が残る可能性はきわめて高く、組織の長とすれば避けねばならない病気でしょう。
わが国では、30年ほど前から血栓症が急増してきました。ちょうど日本人の食事が欧米化し始めたころのことで、ステーキやハンハーグに代表される肉食料理中心の欧米型の食事が広く普及したために、日本人の血管や血液も大きな影響を受けるようになってきたわけです。

血小板の凝集抑制に対応のポイントが
まず血管についていえば、動脈硬化の進行が深刻になりました。高脂肪の食事ばかりをしていると、血管壁に血液中のコレステロールなどが沈着して、血管の内部を狭くしたり、血管そのものを硬くします。その結果、動脈硬化の進行は早まります。
もう1つ、高脂肪の食事は血液中を流れる血小板(血液を固まらせる働きをする成分)の凝集を促して、血栓(血の塊)をつくりやすくします。欧米型の高脂肪食は血管と血液の両方から、血栓症を起こしやすくするのです。
いずれにしろ、食生活に気をつけるのが予防の一番の方法といえるでしょう。血栓症を防ぐには、とにかく脂肪やコレステロールの摂取量を制限して動脈硬化の進行を抑えることが重要とされています。
とはいえ、実際には厳しい食事制限を続けるのは容易ではありません。しかも実行できたとしても、その効果が現われるのは5年から10年も先のこと。動脈硬化が進行し、いつ血管が詰まってもおかしくないような人には、ほとんど意味がありません。
では、どうやって血栓症を防いだらよいのでしょうか。
実は私たちの研究で、動脈硬化が進んでいても、血小板が固まらずに血液がサラサラと流れていれば、血栓症が予防できることがわかってきました。つまり、血栓症を予防するうえで一番大切なのは、動脈硬化を防ぐことより、むしろ血小板の凝集を抑えることなのです。
さらに、私たちはより現実的な血栓症予防法として、「抗血栓食」を考案しました。この抗血栓食は、血液をサラサラにする効果のある食品を選んで、適切に組み合わせることにより、血小板の凝集を抑えるというものです。いままでの食事療法のような厳しい制限は一切ありません。肉などは普通に食べてもよいのです。
この方法は簡単にできて、即効性があるのも大きな特徴です。ただし、血栓症を避けるのに有効な食品を積極的にとってもらう必要があります。
具体的に抗血栓食とはどのようなものか説明しましょう。
まず抗血栓食の主役は魚です。なかでもイワシやサバ、マグロなどの背の青い魚にはEPA(エイコサぺンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)という脂肪酸(脂肪の主成分)が豊富に含まれていて、これらが血小板の凝集を強力に抑えてくれます。
私たちの研究スタッフ4人が自ら実験台となって、魚を食べてその効果を調べてみました。毎食300グラム以上食べ続け、2日目に血液を採取して、血小板の凝集の程度を調べたところ、4人全員とも見事に血小板の凝集が抑えられていました。このように魚を食べると、ごく短期間に血液の性質が大きく変わるのです。

青魚それに野菜を食せば防げる
もっとも日常の食生活で、私たちの行なった実験のように1度に大量の魚を食べる必要はありません。新鮮な背の青い魚を毎日1尾、あるいは1切れ食べる程度でも十分です。
しかし、なかには魚は苦手、とくに青魚は……という方がいるかもしれません。そういう人も安心してください。魚以外にも血栓症を防ぐのに役立つ食品が身近にあります。
たとえば、ほうれん草、グリンピース、ニンニク、春菊、パセリ、トマト、ニラ、長ネギ、インゲンマメなどの野菜です。それらは強力で、さらにカブ、イチゴ、シソ、アサツキ、ワケギ、アスパラガス、大根、セロリ、ニンジン、ピーマン、タマネギ、サヤエンドウ、ブロッコリー、モヤシなどが続きます。
野菜の血小板の凝集を防ぐ効果は、複数の有効成分の働きによって生み出されていると考えられます。そのうち、現在わかっている有効成分はピラジンと硫化アリルなどです。ピラジンと硫化アリルはどちらも匂いの元となる香りの成分で、血小板の凝集を防ぐ効果の高い野菜には、たいてい含まれています。
ピラジンや硫化アリルは香りの成分ですから、匂いの強さが効果の高い野菜を選ぶ際のポイントになります。トマトやピーマンは青臭さがより強いもの、タマネギやニンニクは刻んだときの刺激臭がより強いもの、同じ食品でも臭いの強いものほど効果が優れています。
私たちの提案する抗血栓食には、難しいことは何もありません。調理の方法は普段どおりで結構です。要するに、魚、野菜といった、私たち日本人がよく口にする和食の定番なのです。日常的に血栓をつくりにくくする作用の強い魚や野菜を食べていると、欧米化した食事で動脈硬化がかなり進んでいる人でも、2週間程度で血栓のできにくい体ができるでしょう。
ぜひ、実践してください。

著者
山口 了三(山口医院院長)