ビジネスわかったランド (経営・社長)
健康Q&A
男性でも骨粗鬆症になる?
60歳を超えると要注意
最近、新聞や雑誌で「骨粗鬆症」という、難しい漢字の病気を目にする機会が増えました。初めてこの言葉と接した方は、どのような病気なのかサッパリわからないかもしれません。
骨粗鬆症は簡単にいうと骨がもろくなる病気です。「鬆」という字は、大根など植物や鋳物に細かな孔(あな)が開く状態を指します。つまり、骨粗鬆症とは骨からカルシウムが抜けて粗くなり、まるで「す」が入ったような状態になることなのです。
この病気は100年以上も前から知られていて、当時は「骨多孔症」などどといわれました。もっとも、昔は骨にたくさん孔が開いても、大して重要な病気とは思われていませんでした。
それが最近問題になってきたのは、1つには非常に大勢の人たちが骨に孔が開くまで長寿を保てるようになり、かつ孔が開いたあとも暮らし続けなければならない高齢社会に入ってきたことが挙げられます。以前は老人になって骨に孔が開いても、医学的にも社会的にもそれほど問題にはならなかったのです。
現在65歳以上のお年寄りは総人口の16%、約2000万人に達しています。このうち骨粗鬆症にかかっていると推定されているのは約600万人。骨粗鬆症は骨折を招きやすく、それが原因で寝たきりになるというケースも出てきます。もはや社会的な問題でもあるのです。
男性は女性よりも15年遅れているだけ
いまいったように、骨粗鬆症になると驚くほど骨がもろくなり、ちょっとした動作で骨折してしまいます。
健康な人であれば、しゃがんでものを持ち上げたり、道路や居間で転んだくらいでは決して骨折はしません。しかし、骨粗鬆症になると布団を持っただけで、また急に振り向いただけで背中や腰を骨折します。あるいは居間や玄関で尻餅をついたくらいでも骨折してしまいます。
ご質問のように、骨粗鬆症は女性の病気のように思われています。事実、圧倒的に多いのは女性です。しかし、油断をしてはいけません。男性がかからないというわけでは決してない。男性は女性に比べて骨粗鬆症になるのが遅いだけなのです。
これまでの調査によると、女性では50歳くらいから骨粗鬆症になる人が増え始め、65歳になると2人に1人がかかるようになります。対して男性は60歳ごろから増え始め、2人に1人がかかるようになるのは80歳。男性は女性よりも15年遅いとみればいいでしょう。
しかも、男性は女性ほど長生きをしませんから、その意味でも骨粗鬆症の患者さんは少なくなります。が、充実した老後のためには男性といえども骨粗鬆症の予防は大切。それに、生活習慣を少し変えるだけで、骨は強く丈夫になるものなのです。
まず試していただきたいのは適度な運動です。北欧の研究では、何も運動をしていない人より運動をしている人の骨のほうがより強いことがわかっています。一方、スポーツの種類だと水泳より陸上競技のほうが骨は強くなるし、重量挙げの選手はさらに骨が強いことも明らかになっています。骨にかかる負担が大きいスポーツほど、骨を丈夫にするのです。
もっとも、「運動、運動」と構える必要はありません。普段の生活でこまめに動く工夫をするだけでも骨は強くなります。
一番手ごろなのは、よく歩くことです。1日合計8000~1万歩を目安に歩くようにしましょう。エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を上る、会社の昼休みに散歩をする、1つ手前の駅で降りて家まで歩く。こうしたことをするだけでも骨は丈夫になります。
日光を浴びることも大切。皮下脂肪には、コレステロールの仲間である7―ジヒドロコレステロールが含まれていますが、これが紫外線によりビタミンDになります。ビタミンDには骨の中の細胞の働きを活発にするとともに、腸管内のカルシウムを体内に取り込むのを盛んにします。
日光浴といっても、無理に肌を焼く必要はありません。夏ならば木陰に30分間、冬ならば1時間ほど散歩をして顔や手に太陽を浴びれば十分です。もちろん、意識をしなくても普通に戸外に出る生活をしていれば、1日に必要なビタミンDが体内でつくられます。
予防に最適なのは牛乳を飲む習慣
さらに、骨を強くするには積極的にカルシウムを摂取していくことが大切です。
中高年であれば、とくにこの点が重要。実は、加齢によってカルシウムの吸収率はどんどん下がっていくのです。体内でカルシウムを取り込むのは十二指腸や小腸などの腸管ですが、カルシウムの吸収率は乳幼児では65~75%、成人では30~40%、お年寄りでは20%台と子供のころの3分の1以下にまで落ち込むと推定されます。
ただし、カルシウムが豊富に含まれる食品を食べればカルシウムを多く摂取できるのかというと、それほど単純ではない。たとえば、次の3つの食品をみてください。数値はカルシウムの吸収率を示しています。
・牛乳 50%
・イワシの丸干し 30%
・ホウレンソウ 17%
効率よくカルシウムを摂取しようと思うなら、吸収率のよい食品を選ぶことが大切です。とくに牛乳は骨を強くするには欠かせない食品です。
成人病や肥満が心配で、脂肪やエネルギーのとりすぎが気になるという人は、普通の牛乳ではなく、脱脂粉乳を飲むようにすればいいでしょう。脱脂粉乳だと飲むだけでなく、料理に使うこともできます。
牛乳をそのまま飲むと下痢をするという人もいますが、これは腸内で牛乳の成分である乳糖を分解するラクターゼという酵素が少ないからと考えられています。そんな人でも牛乳を温めて飲んだり、少量から飲んで少しずつ増やしていくと、いずれは平気になることもあります。
中高年は骨を守るために、ぜひとも牛乳を飲む習慣をつけたいものです。
著者
林 泰史(東京都多摩老人医療センター院長)
最近、新聞や雑誌で「骨粗鬆症」という、難しい漢字の病気を目にする機会が増えました。初めてこの言葉と接した方は、どのような病気なのかサッパリわからないかもしれません。
骨粗鬆症は簡単にいうと骨がもろくなる病気です。「鬆」という字は、大根など植物や鋳物に細かな孔(あな)が開く状態を指します。つまり、骨粗鬆症とは骨からカルシウムが抜けて粗くなり、まるで「す」が入ったような状態になることなのです。
この病気は100年以上も前から知られていて、当時は「骨多孔症」などどといわれました。もっとも、昔は骨にたくさん孔が開いても、大して重要な病気とは思われていませんでした。
それが最近問題になってきたのは、1つには非常に大勢の人たちが骨に孔が開くまで長寿を保てるようになり、かつ孔が開いたあとも暮らし続けなければならない高齢社会に入ってきたことが挙げられます。以前は老人になって骨に孔が開いても、医学的にも社会的にもそれほど問題にはならなかったのです。
現在65歳以上のお年寄りは総人口の16%、約2000万人に達しています。このうち骨粗鬆症にかかっていると推定されているのは約600万人。骨粗鬆症は骨折を招きやすく、それが原因で寝たきりになるというケースも出てきます。もはや社会的な問題でもあるのです。
男性は女性よりも15年遅れているだけ
いまいったように、骨粗鬆症になると驚くほど骨がもろくなり、ちょっとした動作で骨折してしまいます。
健康な人であれば、しゃがんでものを持ち上げたり、道路や居間で転んだくらいでは決して骨折はしません。しかし、骨粗鬆症になると布団を持っただけで、また急に振り向いただけで背中や腰を骨折します。あるいは居間や玄関で尻餅をついたくらいでも骨折してしまいます。
ご質問のように、骨粗鬆症は女性の病気のように思われています。事実、圧倒的に多いのは女性です。しかし、油断をしてはいけません。男性がかからないというわけでは決してない。男性は女性に比べて骨粗鬆症になるのが遅いだけなのです。
これまでの調査によると、女性では50歳くらいから骨粗鬆症になる人が増え始め、65歳になると2人に1人がかかるようになります。対して男性は60歳ごろから増え始め、2人に1人がかかるようになるのは80歳。男性は女性よりも15年遅いとみればいいでしょう。
しかも、男性は女性ほど長生きをしませんから、その意味でも骨粗鬆症の患者さんは少なくなります。が、充実した老後のためには男性といえども骨粗鬆症の予防は大切。それに、生活習慣を少し変えるだけで、骨は強く丈夫になるものなのです。
まず試していただきたいのは適度な運動です。北欧の研究では、何も運動をしていない人より運動をしている人の骨のほうがより強いことがわかっています。一方、スポーツの種類だと水泳より陸上競技のほうが骨は強くなるし、重量挙げの選手はさらに骨が強いことも明らかになっています。骨にかかる負担が大きいスポーツほど、骨を丈夫にするのです。
もっとも、「運動、運動」と構える必要はありません。普段の生活でこまめに動く工夫をするだけでも骨は強くなります。
一番手ごろなのは、よく歩くことです。1日合計8000~1万歩を目安に歩くようにしましょう。エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を上る、会社の昼休みに散歩をする、1つ手前の駅で降りて家まで歩く。こうしたことをするだけでも骨は丈夫になります。
日光を浴びることも大切。皮下脂肪には、コレステロールの仲間である7―ジヒドロコレステロールが含まれていますが、これが紫外線によりビタミンDになります。ビタミンDには骨の中の細胞の働きを活発にするとともに、腸管内のカルシウムを体内に取り込むのを盛んにします。
日光浴といっても、無理に肌を焼く必要はありません。夏ならば木陰に30分間、冬ならば1時間ほど散歩をして顔や手に太陽を浴びれば十分です。もちろん、意識をしなくても普通に戸外に出る生活をしていれば、1日に必要なビタミンDが体内でつくられます。
予防に最適なのは牛乳を飲む習慣
さらに、骨を強くするには積極的にカルシウムを摂取していくことが大切です。
中高年であれば、とくにこの点が重要。実は、加齢によってカルシウムの吸収率はどんどん下がっていくのです。体内でカルシウムを取り込むのは十二指腸や小腸などの腸管ですが、カルシウムの吸収率は乳幼児では65~75%、成人では30~40%、お年寄りでは20%台と子供のころの3分の1以下にまで落ち込むと推定されます。
ただし、カルシウムが豊富に含まれる食品を食べればカルシウムを多く摂取できるのかというと、それほど単純ではない。たとえば、次の3つの食品をみてください。数値はカルシウムの吸収率を示しています。
・牛乳 50%
・イワシの丸干し 30%
・ホウレンソウ 17%
効率よくカルシウムを摂取しようと思うなら、吸収率のよい食品を選ぶことが大切です。とくに牛乳は骨を強くするには欠かせない食品です。
成人病や肥満が心配で、脂肪やエネルギーのとりすぎが気になるという人は、普通の牛乳ではなく、脱脂粉乳を飲むようにすればいいでしょう。脱脂粉乳だと飲むだけでなく、料理に使うこともできます。
牛乳をそのまま飲むと下痢をするという人もいますが、これは腸内で牛乳の成分である乳糖を分解するラクターゼという酵素が少ないからと考えられています。そんな人でも牛乳を温めて飲んだり、少量から飲んで少しずつ増やしていくと、いずれは平気になることもあります。
中高年は骨を守るために、ぜひとも牛乳を飲む習慣をつけたいものです。
著者
林 泰史(東京都多摩老人医療センター院長)
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