ビジネスわかったランド (経営・社長)

健康Q&A

秋に頭痛に悩まされる
診断が難しい群発頭痛
症状から推察すると、群発頭痛と断定されます。これはいわゆる慢性頭痛の一種です。まずは、“群発”という意味について説明しましょう。
火山活動などを報じるニュースで、「群発地震」という言葉を聞かれたことがあると思いますが、だらだらといつも続いているのではなく、1回地震があるとしばらくおさまって、また地震が起こり、そしてまたおさまる。これを繰り返す地震のことを言います。
群発頭痛も群発地震のように、出たり消えたりを繰り返す頭痛の疾患名です。

男性に多い珍しい頭痛疾患
1回当たりの頭痛は短くて30分、長くて3~4時間ほど。平均的には1~2時間続きます。それが過ぎてしまうと、何事もなかったように消えてしまう。発作は1日に1回出るのが普通で、時に1日に2回、まれにそれ以上出るという人がいます。しかも、こうした発作が1週間から3か月、平均的には1か月も続くのです。
そして、約半数の患者さんに頭痛の現われる時間帯や季節の規則性が認められる。夜出る季節には夜ばかり、昼出るときには昼ばかりといった具合で、患者さんのなかには、時計のように正確な時間に頭痛が現われる人もいるくらいです。
もう1つ特徴的なのが、圧倒的に男性に多いということです。一般的に、頭痛は女性のほうが多いのですが、群発頭痛に関しては逆。男女比は4対1くらいになります。なぜ男性に多いのかは、まだわかっていません。
さらに、偏頭痛は頭の右側に出たり、左側に出たりというように変化することがあるのに対して、群発頭痛は出る側がいつも決まっています。右側に出る人は右側だけ、左側に出る人は左側だけで、まれに出現時期によって左右が入れ替わったり、両側が痛くなる人がいます。
痛みは強烈です。頭痛のなかで最も激しいといわれているくらいで、群発頭痛が起きている間は痛い側から涙が出たり、鼻汁が出たりする。痛い側の目が充血したり、顔に汗をかいたりすることもあります。痛みに耐え切れず、こぶしで床などを叩いて、骨折するような例さえあるくらいです。
これくらい恐ろしい病気であるにもかかわらず、実は群発頭痛の正確な原因はまだつかみ切れていません。ただし、痛みについては、頭痛発作中に側頭動脈(こめかみ付近の動脈)が拡張していることが証明されていて、血管拡張から起きる痛みであることがわかっています。したがって、簡単な応急処置としては、こめかみにある側頭動脈を強く押すのが有効です。
痛みが出ている側のこめかみを指で強めに押し続けていると血管が収縮して、いくらか痛みがやわらぎます。あるいは、氷をビニール袋に詰めて、それで押してもいいでしょう。側頭動脈を冷やすことも血管収縮をもたらすのです。
酸素吸入はさらに効果的です。いまは救急用の小型の酸素ボンベが市販されているので、比較的購入は容易なはずです。ここで留意すべきは、10分以上吸入しないと効果がないこと。小型の酸素ボンベは1本5分しかもちませんから、最低3本は用意しておいてください。

診断・治療は頭痛専門医に
効果的な薬についてもご紹介しておきましょう。
過半数の患者さんに有効なのは、酒石酸エルゴタミンという薬剤です。群発頭痛では頭痛の出る時間がだいたい決まっているので、頭痛の出そうな1時間前に飲むようにします。
一部のカルシウム拮抗剤、抗てんかん剤などを用いることもありますが、こちらのほうは効果がまちまちです。躁うつ病の治療薬であるリチウム製剤も比較的よく効きますが、代わりに頭痛の期間が長くなる傾向があるので注意が必要です。いま効果の高い薬として期待されているのは強い血管収縮作用のあるトリプタン系薬剤で、これは近い将来発売予定です。
市販の鎮痛薬も痛みを軽減するには若干の効果があります。その場合、服用タイプの鎮痛剤ではなく、坐薬タイプの鎮痛剤を用いることです。服用タイプでは効果が現われるのに時間がかかるので、頭痛が出てきたときには、吸収が早い坐薬タイプが適しているのです。
この頭痛はストレスがかかったからといって出やすくなるわけでもなく、また怒ったりアルコールをたくさん飲んだからといって誘発されるわけでもありません(ただし、頭痛期間中、発作が止まっているときにアルコールを摂取すると、必ずといっていいほど発作を誘発します)。普段の生活でとくに気をつけることは何もないのです。
その分だけ、やっかいな病気といえるのかもしれませんが、いずれにしても大切なことは、頭痛が起きているときに経験したことをよく覚えておくことです。つまり、何月ぐらいに出やすいか、どの薬のどんな飲みかたが比較的よかったかなどをしっかりと整理しておく。次回の頭痛も同様に起きてくることがほぼ決まっているので、首尾よく対処ができるはずです。
実は、残念なことに多くの医師は、群発頭痛に対してあまり知識がないのです。このような頭痛の患者さんを診察すると、激しい頭痛に驚いてCT検査や脳波検査、さらには髄液検査までしたがるのですが、それらの検査では何の異常もとらえられない、というのが実情なのです。原因がわからないことから、ノイローゼや心身症のような精神科的な病名がつけられてしまうこともあるくらいです。
こうした群発頭痛の治療を受けるには、頭痛を専門とする神経内科か脳外科を訪ねてみることです。いまでは慢性頭痛の研究が進み、先述したようにいい治療薬も開発されつつある。慢性頭痛に悩んでいる人は積極的に相談してください。

著者
寺本 純(寺本神経内科クリニック院長)