ビジネスわかったランド (経営・社長)
プライベートの問題
跡継ぎにと考えていた一人息子が役者になりたいと言い出した
必ず一度は訪れる挫折のときを待ち、よき理解者として心からの応援をするべきである。
実は私は以前、10年ほど役者の仕事をしていた経験がある。演劇の舞台というのは麻薬みたいなところがあるものだ。
だから、ご子息の立場で言わせていただくと、跡を継いでもらいたいという、父親の気持ちはわかっている。
でも、わかってはいるものの、演劇をやりたい気持ちは抑えられないのだ。子供というのは新しいおもちゃを与えると、飽きるまで遊ぶものだが、それと同じで、演劇というのは肉体を使って遊べる究極の“おもちゃ”なのだ。
いまご子息は、会社を継ぐことなどまったく考えていないだろう。「プロになって芝居で飯が食えるようになろう」――そのことしか考えていないはずだ。そのご子息を無理に呼び戻そうとしても、絶対にうまくいかない。
私の友人たちにも、有名私大に入った秀才で芝居にのめり込んでいった人間がたくさんいる。そこで親が辞めろと言っても、素直に聞くものではない。もし、帰ってこいと言おうものなら、ご子息は必ず反発するだろう。
ご相談者が元気なうちは、ご子息に役者をやらせてみたほうがいい。そこで必ず大きな壁にぶちあたるので、そのときに話し合いをするという気持ちでいたほうがいいだろう。
役者の卵と言われる人のうち、99.9%はアルバイトがメインの生活だ。役者業だけで運よくのし上がっていけるのは、1000人いて1人いるかいないかだろう。若いうちはまだ夢があるからいいが、歳を重ねてくるにつれてきつくなっていく。それがいつまで続くかだ。
<< 温かく見守る >>
とはいえ、ご子息との接し方に悩まれることもあるだろう。
重要なのは、ご子息がやっている芝居を否定する言動は慎むべきだということ。むしろ積極的に応援してあげたほうがよい。応援といっても過分な仕送りをしてあげるということではない。むしろ、演劇に関して金銭面の援助は絶対にしてはいけない。ご子息が欲しいのは精神的な援助である。
「今度舞台があったら呼んでくれよ。楽しみにしているからな」
ふだんからそんな言葉を掛けてあげるべきだ。そうすれば、ご子息も「親父も少しは理解してくれているのかな」と思ってくれ、父親から気持ちが離れることはないだろう。最低限の生活を維持するだけのお金は親として仕送りしてあげてもいいが、芝居に関するお金はあげないほうがいいと思う。
役者というのは、プロダクションに入り、仕事をもらい、現場に行き、監督の指示で仕事をする“使われる”立場の存在だ。経営者は逆に使う立場。現場の指示のほかにも、人とお金を集めてきたりと、ちょうど監督とプロデューサーを足したような仕事だ。
私自身、一役者として多くの現場で監督、プロデューサーと一緒に仕事をさせてもらって、学んだことがたくさんあった。ご子息もきっといろいろと吸収して帰ってきてくれるはずだ。
とにかく、ご子息にはとことんまでやらせてみて、精神的な応援をしっかりとしてあげることだ。役者の道には壁はいっぱいあるから、必ず何度も挫折する。ご子息と将来について話し合いをする機会は、何度も訪れるだろう。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
実は私は以前、10年ほど役者の仕事をしていた経験がある。演劇の舞台というのは麻薬みたいなところがあるものだ。
だから、ご子息の立場で言わせていただくと、跡を継いでもらいたいという、父親の気持ちはわかっている。
でも、わかってはいるものの、演劇をやりたい気持ちは抑えられないのだ。子供というのは新しいおもちゃを与えると、飽きるまで遊ぶものだが、それと同じで、演劇というのは肉体を使って遊べる究極の“おもちゃ”なのだ。
いまご子息は、会社を継ぐことなどまったく考えていないだろう。「プロになって芝居で飯が食えるようになろう」――そのことしか考えていないはずだ。そのご子息を無理に呼び戻そうとしても、絶対にうまくいかない。
私の友人たちにも、有名私大に入った秀才で芝居にのめり込んでいった人間がたくさんいる。そこで親が辞めろと言っても、素直に聞くものではない。もし、帰ってこいと言おうものなら、ご子息は必ず反発するだろう。
ご相談者が元気なうちは、ご子息に役者をやらせてみたほうがいい。そこで必ず大きな壁にぶちあたるので、そのときに話し合いをするという気持ちでいたほうがいいだろう。
役者の卵と言われる人のうち、99.9%はアルバイトがメインの生活だ。役者業だけで運よくのし上がっていけるのは、1000人いて1人いるかいないかだろう。若いうちはまだ夢があるからいいが、歳を重ねてくるにつれてきつくなっていく。それがいつまで続くかだ。
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とはいえ、ご子息との接し方に悩まれることもあるだろう。
重要なのは、ご子息がやっている芝居を否定する言動は慎むべきだということ。むしろ積極的に応援してあげたほうがよい。応援といっても過分な仕送りをしてあげるということではない。むしろ、演劇に関して金銭面の援助は絶対にしてはいけない。ご子息が欲しいのは精神的な援助である。
「今度舞台があったら呼んでくれよ。楽しみにしているからな」
ふだんからそんな言葉を掛けてあげるべきだ。そうすれば、ご子息も「親父も少しは理解してくれているのかな」と思ってくれ、父親から気持ちが離れることはないだろう。最低限の生活を維持するだけのお金は親として仕送りしてあげてもいいが、芝居に関するお金はあげないほうがいいと思う。
役者というのは、プロダクションに入り、仕事をもらい、現場に行き、監督の指示で仕事をする“使われる”立場の存在だ。経営者は逆に使う立場。現場の指示のほかにも、人とお金を集めてきたりと、ちょうど監督とプロデューサーを足したような仕事だ。
私自身、一役者として多くの現場で監督、プロデューサーと一緒に仕事をさせてもらって、学んだことがたくさんあった。ご子息もきっといろいろと吸収して帰ってきてくれるはずだ。
とにかく、ご子息にはとことんまでやらせてみて、精神的な応援をしっかりとしてあげることだ。役者の道には壁はいっぱいあるから、必ず何度も挫折する。ご子息と将来について話し合いをする機会は、何度も訪れるだろう。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
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