ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

大恩ある人から保証人を頼まれた。受けるべきか、断わるべきか
 保証人だけは絶対なるべきではない。素直に断わり、別の解決策を検討する。

私も何度か保証人を頼まれたことがあるが、基本的にそうした申し出は受けない。お金についても、まず貸すことはない。
お金のことで知人を頼るのだから、その時点でその人はかなり追い込まれている。身内ならいざ知らず、友だちに手をつけるようでは終わりだ。借金のせいで早晩、その友だちをなくしてしまうだろう。
まさに、金の切れ目が縁の切れ目。保証人の場合はもっと深刻だ。何しろ借りた人が返済できなければ、代わりに借金をかぶるということなのだ。いきなり結論めいてしまうが、その方の申し出は断るべきである。
もちろん、大恩ある人あるだけに断わりづらいことだろうし、恩返しをしたい気持ちもよくわかる。だが、その方の会社と取引があるならいざしらず、まったくプライベートの付き合いならば、なおのこと保証人は断るべきだ。企業経営というものは、いいときがあればわるいときもある。商売上の絡みでお世話になったり、手助けをしたりというのは日常茶飯事で、ビジネス上の信用も大事だろう。でもそれもビジネス上のつながりがあるからのことで、まったくかかわりがない会社間では難しい。
連帯保証をしたことで失敗し、財産を失った人はたくさんいる。自分の失敗なら無一文になっても納得できるが、恩人とはいえ、他人の失敗で財産を失うことほどバカなことはない。悔やんでも悔やみきれない。
私は長年会社を経営してきたが、社外はもちろんのこと、社内でもナンバー2以下に保証をさせたことはない。もしものときも、泥をかぶるのは自分だけ。中小企業の社長は、それくらいの気概がなければ商売をする資格はないと思う。
身内の話になるが、私の祖父は、父の会社が倒産間近でも金を貸さなかった。たいした額ではなかったはずだが、肉親の間柄でもお金を貸さなかったのだ。ほどなく会社は倒産。そのときは私も、冷たい爺さんだと恨めしく思ったものだが、貸したところで焼け石に水。かえって深みにはまって、挙げ句に路頭に迷っていたかもしれない。いま振り返ると、つくづく祖父は正しい判断をしたと思う。

<< 援助は個人資産の範囲内で >>

どうしてもその方を手助けしたいなら、ご相談者の個人資産で代位弁済できる範囲内の額で手助けする程度に留めておくべきだろう。万一、保証した金額が回ってきても、絶対に自分の会社がおかしくならない範囲に留めるのだ。
社長の軽率な行為によって会社が倒産することもある。恩義を感じても、それは社長個人への恩であり会社への恩でないこともある。それに、恩のある人だからこそ、あえて断るという考え方もある。恩返しはお金だけでなくほかのことでもできるはず。安易に金銭で恩返しということは考えるべきではない。
とはいえ、恩人からの依頼だけに、断わり方は難しいだろう。たとえば「自分にはそこまでの保証をする力はありません。力になれるのは、1000万円ではなく100万円までです」と、素直に言うしかない。
本当に恩義を感じているのなら、その金額をあげたつもりで、お金を貸してあげればよい。冷たいと思われるかもしれないが、下手な同情がかえってその人を不幸にすることもある。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。