ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

亡父の連帯保証債務の履行を求められた
 無条件に応じる必要はない。保証態様を確認し、専門家に相談をするべきである。

法律上、「一般に保証債務には相続性がある」と解されている。つまり、「普通の保証債務」「連帯債務」「連帯保証」には相続性があり、相続人は被相続人のなした保証責務を相続することになる。
ただし例外として、連帯保証のうち、継続取引における将来の負担債務について「責任の限度額の定めのないもの」「期間の定めのないもの」は、保証責務の範囲が曖昧なため、相続性がないものと解されている。
金融機関が保証人に求める保証には、様々な態様のものがあるが、確実に相続性が認められるのは「個々の金銭消費貸借契約書への連帯保証」である。この場合「債務の付従性」を根拠に、相続人は残債務についてのみ保証責任を負えばよい。
逆に相続性が認められないのは、「銀行取引約定書面における連帯保証」である。また、「別紙保証書による連帯保証」の場合は「保証限度額」「保証期間の定め」の記載の有無で判断が変わってくる。
このように、保証契約の態様次第では相続性が否認される場合があることを踏まえたうえで、まずは亡父の保証契約の態様をきちんと確認しなくてはならない。
保証態様を確認した結果、金融機関の請求に法的根拠が認められる場合でも、相続人すべてが連帯保証人としての地位を引き継ぐのが原則であり、相続財産の額も均等でない以上、対応は簡単ではない。必ず弁護士などの専門家と相談して対処すべきである。

<< 債務を知らなかった場合は >>

相続発生時に相続人全員が亡父の連帯保証の事実を知らずに相続処理を完了し、あとから金融機関が債務履行を求めてきた場合は、たとえ被相続人による連帯保証の相続義務が存在したとしても、無条件に金融機関の要求に応じる必要はない。
相続人は、被相続人の資産債務の状況次第で「相続放棄」「限定相続」を選択することが認められており、その期限は相続人が相続発生の事実を知った時点から3か月以内である。
また、金融機関は貸出債権保全のため、担保・保証人について定期的にチェックしており、保証人の死亡に際しても、遅滞なく相続人に対処を求めるのが正規の事務処理手続きである。
本来ならば、亡父の連帯保証の事実を知ったうえで適切な相続方法を選択できたにもかかわらず、金融機関の対応の遅滞により、知らないまま相続処理が完了してしまったのだから、相続人は相続時の選択権を奪われたことになる。これは金融機関側の重大な過怠である。
しかし、金融機関によっては、自らの失態を承知していながら、関係者の法的無知に乗じて強引な糊塗策を講じようとすることがあるので、注意が必要である。
たとえば、相続義務などの法的責任を言い立てて保証書などの書面に署名捺印を要求してくることがあっても、安易に署名捺印してはいけない。このような場合は、いったん書類を預かり、きちんと内容を吟味検討するなどの自衛策を講じなくてはならない。
いずれにせよ、法的責任の有無とは別に、金融機関の失態により相続人が多大な迷惑を被ることは事実なので、交渉の余地は十分ある。専門家に諮って対応にあたるべきであろう。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。