ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

海外留学中の息子に現地駐在員として給与を支払いたい
 適正報酬を証明できる文書を残すことが大切です。

所得税法では、納税義務者が居住者か非居住者かによってその課税対象は異なる。
居住者とは、日本国内に住所を有している個人、あるいは日本国内に1年以上の居所を有している個人のことで、それ以外の個人は非居住者となる。
居住者の場合、課税対象となるのは全世界で稼いだ所得となる。また、非居住者は日本で稼いだ所得(国内源泉所得)のみを課税対象としている。
同様に、法人税法でも納税義務者が内国法人か外国法人かによって課税対象は異なる。
日本国内に本店または主たる事務所を有する法人のことを内国法人といい、この場合、全世界で稼いだ所得が課税対象となる。一方、内国法人以外は外国法人とされ課税対象は国内源泉所得のみとなる。
以上の規定を踏まえて、このケースについて考えていこう。

<< 日本での課税はない >>

そもそも駐在員事務所とは、本格的な海外進出を前にして情報収集をしたり、単なる商品買い付けを目的とするものだ。積極的な事業活動を行なう場合は、現地法人や支店を開設することになる。つまり駐在員事務所には所得が発生しないため、一般的には海外で課税されることはないといえる。
さて、息子に支払う給与だが、情報収集などのための駐在員事務所の維持費用ということになろう。家賃はもちろんのこと、電話代や人件費も会社の費用とすることができ、日本の法人税法に従って処理されることになる。ここで問題となるのは、息子が日本の所得税法上の課税対象となるかどうかだ。すでに1年以上留学しているのであれば、非居住者に該当する。
これを前提にすれば、息子に支払われる給与は、海外において海外市場の情報収集などを行なったことに対する報酬であるため、国内源泉所得とはいえない。非居住者は国内源泉所得のみについて課税されるので、日本で課税されることはない。
ただし、その報酬に対して源泉徴収されることになるが、息子の居住地国との租税条約により、源泉税の徴収を免除されることもある。

<< 毎月、レポートを提出させる >>

しかし、日本で課税されることがないといっても、いろいろと注意が必要だ。
というのは、ここで情報収集活動への対価として支払う報酬は、本来、親子間の仕送りであるものを会社費用とするための仮装ではないかと疑われることがあるからだ。
将来の後継者を育てる意味からも、海外市場を調査させたいというのであれば、きちんとしたレポートを提出させる必要がある。最低でも月に1回のレポート提出を義務づけるべきだろう。さらに、送られてくるレポートは、本社の役員会などで十分に検討し、息子に今後の指示を与えるようにするのである。
それくらい念を入れても、親族への給与支払いは税務署から厳しい目で見られがちだ。これに加え、息子に給与を支払うことを社内的に納得させるためにも、実質的に仕事をさせることは必要だと思われる。このため、レポートなど労働の実績と、それに対する適正な報酬額であることを書類などで保存しておくことを忘れてはならない。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。