ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

息子への代替わりを機に地元政治家との縁を切りたい
 「負の遺産」を引き継がぬよう、割り切って申し出るべきである。

この場合、大義名分も根回しも不要である。誠意をもって、「支援者から名前を抜いてもらう」よう、政治家本人、ないしは秘書に話をすることだ。
そのとき「経営にかかわるすべてから身を退き、後継者である息子に任せたのを機に」という理由で押し通す。決して他の政治家に鞍替えしたのではないことをしっかり説明しておくことである。
また、「これまでの支援は、あくまで個人的なものであって、後継者である息子には何の関係もない」と釘を差しておく。
相手の政治家には、「社長個人を超えて、企業から支援を受けてきた」という誤解ともいえる意識があるかもしれない。その誤解を払拭しておかないと、後で息子にしつこく支援の要請がくる恐れがある。「私は私、息子は息子」という姿勢を明確にしておくことである。

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ところで、あなたがその政治家を支援してきたのはどんな理由からか。本当に尊敬できる人物だからか、何かのメリットがあると思ったからか。本当に尊敬できる人物であるなら、縁を切りたいとは思わないだろうから、後者なのだろう。
いまでも、税務調査で手心が加えられたり、各種の助成金が受けやすくなることを期待して政治家と付き合う経営者は少なくない。
実際にそうなのかは別にして、宮崎県や和歌山県の例を見ればわかるように、いまや知事でもあっさりと逮捕される時代である。政治家の力はかつてに比べ、弱くなっていると考えてよいだろう。
選挙に肩入れしすぎたあげく選挙違反で逮捕される経営者も跡を絶たない。支援した政治家が選挙で敗れた結果、対立候補から何らかのアクションが起こされる可能性もある。政治家との付き合いは、リスクも考えておかなければならない。
二代目経営者にも「親父は親父、俺は違うやり方をする」という考え方をする人は多いだろう。
しかし、中小企業にとって政治家との付き合いは、このように「負の遺産」を残す恐れがある。少なくとも後継者にそれを引き継がないようにしなければならない。
政治家との縁は、なかなか断ち切れないと思われがちだが、大切なことはちょっとした勇気である。「おかしな噂を立てられないか」「取引先に圧力をかけられないか」などと、無用な考えをめぐらせず、割り切って伝えることである。
そして縁を切ると決めたら、きっぱりと実行することだ。地縁・血縁によるしがらみもあるだろうが、ずるずると事務所に顔を出したりしていると、就職の世話など仕事がらみの頼まれごともされることになる。断わるのも角が立つし、後継者に取り次いだのでは、彼にとって実に迷惑な話である。徐々に離れていこうなどと中途半端な考え方はしないことである。
また、これを機に、政治家を支援することについて後継者である息子とともに考えてみるとよいだろう。
政治家との付き合いについては、著名な経営者からも否定的な意見が出されている。それらも参考にして、けじめある対応を、後継者に伝えていただきたいと思う。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。