ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

あらたまった席でスピーチする。上手に話す方法は?
 しっかりとした準備が自信につながる。

人前で話すときは、誰でも緊張するものだ。大勢の人の前なら、なおさらのことだろう。
私自身も最初から話すことが得意だったわけでなく、むしろ口下手なほうだった。さすがに600回以上の講演をこなした現在では、人前で話すことが楽しいとさえ思えるようになったが、いまでも初めて会う人の前では緊張するものだ。
人によってその度合いに差はあるものの、人前であがることを恥じたり、“自分だけが話し下手”などとは決して考えないこと。まずは気持ちの切り替えから始めよう。

<< 「あがる原因」は三つある >>

心理学的にも解明されていることだが、「あがる原因」は大きく分けて三つある。
一つは「初めての経験ゆえの不安」。誰しも初めてのことには不安を覚えるものだ。そこに責任やプレッシャーがあれば、否が応でも緊張感は高まる。さらに過去の「失敗した経験」が頭をよぎり、準備不足による動揺が「無防備な状態」を作り出して緊張感を加速する。これがあがる原因だ。
よく、「職場や友人の前では平気だが、知らない人が多いと、うまく話せない」という人がいる。失敗した経験がある人ほどこの思い込みは強く、「もし失敗したら……」というマイナス思考で、自分の行動を狭めてしまっているわけだ。
本来、「あがること」と「緊張」は別もの。ほどよい緊張感は集中力を高めてくれるが、マイナス思考が強すぎると動揺し、あがってしまうのだ。最初から上手に話そうと気負わずに、肩の力を抜くことが大切。失敗しながらも、少しずつ成功体験を積み重ねることで自信がつき、自分らしいスピーチができるようになるはずだ。

<< どのような準備が必要か >>

繰り返しになるが、あがる原因の一つは「準備不足」にある。いくら話し方を訓練しても、話す内容を準備していなければ誰でもあがるものだ。反対に、自分の考えがしっかりまとまっていれば不安も少ない。準備したという自信がエネルギーに変わるからだ。
そこで、必ず前日までにスピーチ原稿を作成し、実際に声に出して練習しよう。誰に話すのか、何を伝えたいのか、どうやって話すのか。
これはプレゼンや社内会議などでも同じことだ。それでも不安があれば、ベテラン幹部に原稿をチェックしてもらったり、実際に聞いてもらってもいい。幹部の意見を聞くいい機会にもなるだろう。
社長である自分の思いや会社の方向性をふだんから明確にしておけば、特別な準備は必要ない。コンテンツさえあれば、あとは、どう伝えるかということにだけ集中できる。
当日は、あれこれ考えずにリラックス。これが一番大切だ。
そして、慌てず、ゆっくりと前に進み出たら、話し始めは元気よく挨拶から。大きな声を出せば、たちまち緊張感もほぐれるものだ。
たとえ、言いたいことの順番が変わってもかまわないと考えよう。ただし、くれぐれも、原稿の棒読みはしないこと。社長のスピーチでは、力強く語らなければ説得力が生まれないからである。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。