ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

父の再婚話が進んでいる。将来の相続が心配だ
 後継者の財産が厚くなるよう、遺言状を書いてもらうようにする。

このような場合、たしかに財産をめぐってのトラブルが起こりかねないといえるだろう。相手の女性次第ではあるが“争族”になる可能性は十分ある。経営者の家庭であれば、なおさら適切な手を打っておくことが必要だ。

<< 生命保険を活用する >>

何よりも留意すべきことは、事業用資産を分割してはいけないという点だ。
実の兄弟姉妹間の遺産分割でも同様のことがいえるが、土地・建物、自社株などの資産が細かく分けられてしまうことは避けなければならない。
これはいうまでもなく、事業経営の根幹にかかわってくる問題であり、できるだけ後継者が集中して相続するのが鉄則である。
通常のケースであれば、相続税を考慮し、いったん配偶者である母親が株式などを引き取ることも考えられる(配偶者の税額軽減の特例)。しかし、このケースでは、義母となった人が、実母のように100%息子を守ってくれるとは限らない。このため、この際は相続税の多寡を考えず、禍根の芽を摘んでおくためにもできるだけ後継者が相続するようにしなければならない。
その代わりに、義母にあたる人には生命保険(被保険者は父親、受取人は義母)を活用することで、父親が亡くなった後の生活に困らない現金を確保しておくのだ。
もし、父親と義母の間に子供が生まれた場合には、その子が受取人となる保険を積み増せばいいだろう。

<< 養子縁組を忘れないこと >>

ところで、これらの準備を誰が行なうべきかといえば、当然、被相続人である父親が行なうべきで、そのためには遺言状を作成してもらう必要がある。
いくら息子がよかれと思っても、肝心の父親がそれを認めなければ、法律上は義母に財産の二分の一を相続する権利が生まれてしまう。
遺言状はできるだけ早く作成してもらうべきだが、多くの人は「自分の家族は“争族”になるようなことはない」と思っているものだ。
このため、息子から「書いてくれ」とは言いにくいものだが、そのような場合は税理士や弁護士に相談することをお勧めする。彼らから父親に、トラブルになる可能性、それを回避するために遺言状を作成しておく必要があることなどを諄々と説いてもらうのである。
父親も現役の経営者であるわけだから、冷静に考えれば、後継者に事業用資産を集中させる重要性や、経済的バックボーンをもたせる意味合いは十二分に理解できるはずだ。
さて、財産の相続に関して忘れてはいけないことが一つある。それは、きちんと養子縁組を行なっておかないと、義母が亡くなったときに相続の権利を得ることができないということだ。養子縁組をしていないと、父親との間に子供ができればその子に、できなければ彼女の兄弟姉妹などの親族に財産は相続されてしまう。
遺言状を作成してもらえず、養子縁組もしていないと、事業の存亡にもかかわってくる可能性があるので、十分な注意が必要だ。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。