ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

後継を予定している息子が、社内外に評判のいい嫁と離婚したいと言い出した
 夫婦の問題は夫婦に任せるべきである。信用の失墜は心配の必要はない。

原因が何であれ、息子さんは離婚の決意をすでに固められたのだろう。離婚は結婚以上にエネルギーがいるといわれる。息子さんにしても、考えに考えたうえで出した結論だろうし、やすやすと意思を変えるとは思えない。
お嫁さんはできた方かもしれない。ただ、息子さんとは合わなかった。これは当人たちの問題で、親が間に入ってどうにかなるものではない。諦めるしかないと思う。

<< 離婚のマイナスは軽微 >>

問題は、息子さんの信用ということだろう。ただ、時代の流れなのか、最近はどこどこの誰々社長が離婚した、という話がよく耳に入ってくるようになった。噂だけではなく、久しぶりにお会いした方に、「実は、離婚しまして」と言われて、返す言葉に困った経験もある。
とはいえ、離婚したからといって、その人の信用をどうこう思ったことはない。私だけではなく、多くの人が同じだろうと思う。「離婚=社会人失格」という古いタイプの人がいたとしてもごく少数。社内の信用を落とすということもない。
たしかに、離婚はプラスかマイナスかと問われれば、マイナスとしか答えようがない。しかし、経営者失格と見られるほどのマイナスでは決してない。銀行にしたって、いまや離婚云々で融資姿勢を変えるようなことはないし、仮にマイナスと評価されても、その後の経営で容易に挽回できる。
逆にいえば、大事なのは離婚後の振る舞いであって、離婚による心労が経営に影響するほうが困る。その点は、父親が会社に残っているので、うまくサポートしてあげればいいと思う。

<< 女、博打が原因ならば… >>

ただ、ここまでは息子さんに非がないという前提で話をしてきた。なかには離婚の原因として女性問題が裏にあったり、ギャンブルとか借金が絡んでいるというケースがある。この場合は、少し事情が変わるので補足しておいたほうがいいかもしれない。
もし、女や博打が原因だったら、どうなるか。正直、信用に傷がつくことは避けられない。これらは、社長の資質にかかわる重要な問題だからである。
しかし、かといって離婚をやめさせればすむ問題でもない。親が介入しても、話をこじれさせるだけだろうし、結局のところは離婚を見守るしかない。ただし、離婚後の親の役割は重要である。お嫁さんに対する手当てや業績向上による信用の回復には、通常以上に力を入れさせないといけない。同時に、二度とこのような不始末を起こさないよう、息子さんを叱責しておく必要がある。いずれにしろ、悪い噂は隠そうと思っても隠し通せるものではない。息子さんはもちろん、親御さんもそうとうな覚悟が必要となろう。
そういうことでないのであれば、離婚後、気持ちの整理がついたころ、再婚の話を勧めてあげてもいいだろう。離婚に対する抵抗は減ったとはいえ、家庭をもっていない経営者が低く評価されるという面は依然として残っている。それに、社長は精神的にも肉体的にも激務である。鋭気を養うためにも家庭の温もりというのは必要ではないだろうか。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。