ビジネスわかったランド (経営・社長)

プライベートの問題

預かった取引先の子息が、理由を言わず辞めたいと言ってきた
 関係をさらに深めるチャンスととらえ、先方社長と一緒になって考えることが必要である。

当社は修行が要求される飲食業界という事情もあり、「息子を預かって欲しい」という依頼があれば、ほとんど受け入れてきた。
延べ100人以上を受け入れただろうか。そうした後継者が、跡を継いでから挨拶に来てくれることも多い。

<< 何を与えることができるか >>

預かった子息に対しては、当社が本人に何を与えられるのかということを、まず見極めるようにしている。
技術的な面を学びたいのか、経営感覚を養いたいのか、また一般企業に勤める、つまり人の下で働くという経験が欲しいのか、まずそうした区分をするわけだ。
カリキュラムという点では区別する部分もあるが、仕事をこなすうえでは差別、つまり特別待遇はいっさいしない。どんな仕事でも一般社員と同じレベルを要求している。
ただ、本人が違和感を感じたりすることもあるだろうから、言動に目が行き届くようにお目付役のような人間をつけて、ミスマッチになっているようであれば配置転換をしたりということも行なっている。
いずれにしても、使われる人間の身になって考えることが経営者にとって大切なことだと思い、一般従業員と同様に通常の業務をきちんとこなしていくことをまず重視している。それにプラスして、経営感覚が身につくように導いていくのがベストだと思う。

<< 信頼関係があれば懸念は無用 >>

さて、質問のケースだが、まず先方へは包み隠さず話すことだ。息子を預けるということは、それだけの信頼関係がすでにあるはずである。
ただ、私の体験から言うと、本人にヒアリングしても、おそらく彼は自分に非があると言うだろう。
だから辞めたいという本当の理由をつかむことは、なかなか難しい。
一般従業員は辞めるときに会社の欠点をあげつらったりするが、経営者の子息は双方に迷惑がかかることを自覚しているので、滅多にそんなことは言わないものである。
その子息が勉強熱心で意欲もある人物であるなら、仕事そのものの方向性で悩んでいるということが考えられる。
さらに、実は跡を継ぎたくない、ほかにやりたいことがある、といったことも考えられる。
そうした点も含めて、本人の将来も考慮して話をもっていけば、貴社と先方との関係が深まりこそすれ、悪化することはないと思う。

<< 関係を深める機会ととらえよう >>

クレームはビジネスチャンス、とはよく言われる言葉だが、取引先との関係を深めるいい機会だと思えばいい。
先方にとっても、子息の資質や適性を見直すいい機会になるかもしれない。辞めたいその理由にしても、先方の社長と一緒になってヒアリングしてみるのもいいと思う。
むしろ、相談者が先方の社長と一緒になって彼の将来を考えるくらいに懐に飛び込んだほうが、いい結果を得られるはずである。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。