ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

経営破綻し再建を目指す得意先とはどう付き合うべきか?
 会社のつぶれ方、経営者の人間性を見て判断する。

経営破綻はしたけれども、経営陣はそのままで、営業を続けながら再建しようという得意先から取引継続要請を受けた。取引上とあわせて、個人的な付き合い方をどうするか……。
先方の経営者と個人的に親しかった場合、人情として「できるだけの支援はしたい」という気持ちになるところである。ただし、そんなことをしていて相手が最悪の事態になった場合、自分の会社まで傾き、社員を路頭に迷わせることにもなりかねない。経営トップとしては、あえて関係を断ち切るという決断が必要な場合もある。その辺の悩みもあっての相談だろう。
問題は、破綻した会社の社長が「人間的にどうなのか?」というところに尽きる。

<< チャンスを提供する >>

いろいろ不運が重なって会社は立ちゆかなくなったけれども、応援してあげれば再起して真面目に誠実に頑張る人だ。あの社長は“すってんてん”になったところから這い上がってくる力がある。そんなふうに信じているのなら、応援してあげたらいいと私は思う。
ただ、会社経営と個人の気持ちは別の次元で考えなければいけない。支援をするのなら個人のポケットマネーでするべきであろうし、金銭的な支援自体、考えものだ。むしろ、再起のチャンスを提供するという考え方のほうがふさわしかろう。
取引関係を続けるということになれば、まず会社の利益を考えなければいけないが、他にない優れた技術をもっているといった特長のある会社なら、可能性の芽が出ることを信じて、取引を続ければいい。
実際、会社をつぶしたが取引を続けてほしいという社長はけっこういる。そして、社長の人間性と、その会社がもっているノウハウや技術を見て周囲が応援するというケースも多々ある。
取引条件は当然、厳しくせざるを得ない。手形取引はやめてキャッシュ精算(現金取引)にするのが無難だと思う。

<< 人間性はつぶし方に現われる >>

経営者の能力以外に、会社はいろいろな原因でつぶれるし、幕の引き方も様々ある。経営者の人間性を知る意味でも、経営破綻のしかた、会社のつぶれ方も考慮に入れたい。
私がいた婦人服業界は、会社をつぶしてはまた始めるという例が多い。専門店チェーン経営者であった私のところに、つぶれたアパレルメーカーの従業員がやって来て、直接、社長を酷評していくこともあった。
あの社長は会社をつぶしておきながら個人の資産はたんまりもったままだ。社会保険料を天引きされていたのに社長がそれを納付せず運転資金に流用していたため、あらためて払う羽目になった。街でばったり出会った元社長を殴ってやった……。
そういう話を聞くと、「もう一回商売を始めましたのでよろしく」と挨拶に来られても、そのときは「また連絡しますよ」と答えて、結局は支援に応じることはあるまい。
会社の幕の引き方に問題があり、経営陣もそのまま再建を目指すというのなら、ドライなようだが、取引中止が妥当なところである。引き続き営業しているのだから、先方に出向いて社内の雰囲気、社員の顔・表情を見たうえで決めても遅くはない。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。