ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

先代から付き合いのある顧問税理士を替えたい
 余計な心配は無用だが、時期は選ぶことである。

資格商売の税理士の世界も、世代交代と無縁ではない。必ずしも年齢的な問題ではないにせよ、変化の著しい税法に対応できない税理士は、淘汰されてしかるべきだと思う。
時代についていけなくなっていると感じているのなら、勇気をもって替えることだ。経営者の代替わりに伴って顧問税理士が替わることは決して珍しいことではない。
顧問契約書を交わしている場合、解約に関しても「契約期間満了の○か月前までに解約の意思表示がなければ自動更新とする」といった取り決めをしているはずだ。その記述に則って契約を解除すればよい。
契約書がなくて企業側から契約解除を申し出た場合、いい顔をしない税理士もいるとは思うが、たとえ喧嘩別れのようになっても、トラブルに発展したりすることは、まずあり得ない。
顧問税理士に帳簿を握られているといった危惧があるのかもしれない。しかし、それは杞憂というべきだろう。
税理士がもっている資料は、すべてクライアントである企業からコピーを借りてまとめたものであり、決算業務などが終わって必要がなくなれば資料は返却して当然。万一、返却がスムースにいかなくても、原本は企業にあるはずだから余計な心配はいらない。
これまで税理士に帳簿を丸投げにして、実態をまったく把握していないというのなら、この機会に姿勢を改めることだ。

<< 替える際に留意すべきこと >>

基本的に、新旧の税理士の間で引き継ぎの必要はない。ただし、顧問税理士の交代は、売上の急増や激減などと同様、税務署に「注目すべき変化」としてとらえられ、税務調査の対象になりやすい。この点には注意されたほうがよいだろう。
税務署から見て最も単純な税理士交代のタイミングは、同族企業で親が亡くなり子供に代替わりしたという場合、あるいは税理士がのれん分けしてクライアントを引き継いだケースである。先代が健在であれば、一年ぐらい顧問税理士を新旧の連署にするのが無難かもしれない。
交代にともなって一番困るのは、税務調査が入ったときに決算書は古い税理士の署名で、顧問契約を新しい税理士とすでに交わしていたという場合だ。たとえば、3月決算企業で、決算を終えて4月に顧問税理士を交代すると、3月に旧税理士の署名で提出した決算書を、その後1年間、使用しなければならない。こういった場合に税務署は、署名をした旧顧問税理士に連絡をとろうとする。旧顧問税理士と喧嘩別れをしていたなら、丁寧な対応など望めない。
したがって、決算を終えてから顧問税理士を替えるのは、お勧めできない。多少日程がタイトになったとしても、交代期は決算前にするべき。現在の税理士に不満があるのなら、思い立ったが吉日、今期決算が終わってからなんて悠長なことはいわず、即刻替えるべきであろう。
たしかに、税理士が替わって最初の決算は時間や手間がかかり、顧問料も割増しになるかもしれないが、それだけの価値は十分ある。税理士にとって、決算書を作ることがクライアント企業を深く理解するチャンスになるので、新しい税理士は大いに張り切って決算に臨んでくれるはずだ。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。