ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

異業種交流会メンバーから技術提携を提案されたときはどうする?
 弁護士を加えて約定書を作成。技術流出を恐れず取り組む

私も異業種交流会には複数、参加している。その経験から共同事業を始める際、最も懸念されるのは技術の流出だ。とくに、相手先企業より技術力に優っている場合は、うまく利用されて、結果的に技術だけ盗まれるのではないかと疑うのは当然のことである。
事実、私もそうした話を耳にしたことがあり、そのような疑念をもつことは決して杞憂ではない。見知った方からの頼みということで安易にことを運んでは、後悔することになる恐れもある。
したがって、最初にそういう場合も想定した機密保持に関する約定書を交わす必要がある。その際、第三者を加えることで、よりガードは固くなる。第三者とは、具体的には弁護士である。弁護士に約定書の作成を依頼し、その土台作りを手伝ってもらうのだ。

<< 機密保持は可能か >>

もし、相手先の提案が、御社の技術を前提にしたもので、相手先は主に開発費用を提供するという場合、開発に成功したのち、製品をどういう扱いにするのかを詰めておく必要があるだろう。
すなわち、販売はどちらが受けもつのか、御社の技術提供の対価はいくらか、といった肝心な問題を約定書に盛り込む。恐らく、依頼した弁護士が押さえておくべきポイントを指摘したたたき台を示してくれるだろうから、それに従って、御社が細部を指示するとよいだろう。
ただし、約定書作りを全面的に弁護士に任せてしまってはいけない。彼らはあくまで法律の専門家であって、技術の専門家ではないからだ。
案件によっては重視すべきポイントが変わってくる。ともすれば、きわめて一般的な内容の約定書になりかねないので、御社が機密保持を懸念しているのであれば、その技術的な要素がきちんと押さえられているか、最終的なチェックを忘れないようにしたい。
弁護士を加えてきちんと約定書を交わすだけで、相手先にはそれなりの効果が期待されるので、よほど悪質な相手でなければ、そう心配する必要もないだろう。なお、その技術が、特許をとっていないのなら、念のために特許を出願しておけば安心だ。

<< 失敗もノウハウのうち >>

私には、その技術がどのレベルなのかはわからないが、引き合いが来るくらいだから、相手先が大きな魅力を感じていることだけは間違いない。それなら、いい機会ととらえて共同事業に取り組んでみてはどうだろうか。せっかくの高い技術も、技術流出を恐れて活かさなければ宝のもち腐れでしかない。
さらに、あえて言えば、今回の案件が頓挫し、結果的に技術が流出してしまうことになっても、決して無駄ではないと思う。かく言う私も、技術提携による共同事業を幾度か経験するなかで、学んだことは数多くある。「契約のとき、一言加えておけばよかった……」と、あとになって思うこともあった。
しかし、それもまた当社のノウハウになった。失敗とまではいかなくても、ときには後悔もし、多少の損害を被ることになったとしても、その経験を次に活かせばいいのである。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。