ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

非常勤の役員である妻と母にいくらまで報酬を払えるか
 定まった基準はなく実際の職務内容で判断する。

基本的に、役員報酬(常勤、非常勤を含めて)について、いくらまでなら損金(税務上の費用)に計上できるという規定はない。会計上、役員報酬をいくら支給し費用として計上するかは、その法人の自由だからだ。
ただし法人税法では、形式基準と実質基準という二つの基準を設け、その基準を超える部分の金額については損金に算入できないという規定がある。
形式基準とは、定款の規定または株主総会等の決議により定められた報酬の額を超えていないかどうかで判定する基準のことであり、実質基準とは、その役員の職務の内容、会社の収益、使用人に対する給料の支給状況、同業種同規模会社の役員報酬の支給状況から見て、適正かどうか判定する基準のことである。

<< 職務内容が問題 >>

このため、いくらまでなら否認されないという金額の基準はない。「いくらまでなら大丈夫か」の前に「どんな業務をしているのか」という実態が優先されるのである。
たとえば役員の業務として、
・重要取引先との価格決定(交渉)
・昇給や賞与の決定、従業員の採用・解雇等の人事に関する決定
・設備投資の時期、機械の種類や規模、投資金額等の決定
・資金繰り
というような、法人の経営・運営上の重要な事案の決定に関するものが挙げられる。これらの業務に見合った役員報酬額が適正とみなされるのである。

<< 非常勤役員の報酬は? >>

法人税法上「非常勤役員」の定義はないが、役員報酬を常勤と非常勤に分けて考える場合、非常勤であれば、事業活動を常時取り締まっているという状態ではないので、一般的には常勤役員よりも非常勤役員の報酬のほうが低くなるものと考えられる。非常勤役員の業務としてよくある事例として、
(1)取締役会に出席して意見を述べたり、困ったときの相談役的な仕事
(2)週1、2日出勤して、簡単な資料整理や記帳業務等、通常の経理程度
というような場合が挙げられる。(1)のような場合、口頭による役務提供という形になりがちで、経営上の大切な問題に影響を与えているにもかかわらず、税務調査では調査官を納得させるような証拠をほとんど提示できないことが多い。そうならないためにも、会議では議事録、相談や決裁等であれば稟議書、出勤の際には業務日誌等を証拠として残しておくべきだろう。(2)に関しては、本来の役員業務とはいえないので、報酬額は通常の経理事務のアルバイト程度の金額が相応となるだろう。
なお、判例や裁決を見ても、「会社の経営にどのくらい参画しているか」という職務内容を重視したものとなっている。このため、役員としての業務実態があまりない場合、たとえば、
(1)物事の是非が判断できなくなっているような老人
(2)家庭内のことしか知らない専業主婦
(3)学業で日中のほとんどの時間が費やされている学生
などに関しては、適正額が月額2~3万円、あるいは業務実態がない場合はゼロと判断される場合もあるだろう。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。