ビジネスわかったランド (経営・社長)
経営の問題
売掛債権を担保にして融資を受けたい。その手順は?
取引先の理解を得たうえで活用することが大切である。
最近は上昇局面に転じたものの、ここ十余年、地価下落により不動産の担保としての機能低下や金融機関の不良債権問題もあり、中小企業の資金調達は大きな制約を受けてきた。
そんななか、平成10年の債権譲渡特例法の制定により、平成13年12月、信用保証協会の保証扱いを条件に、銀行が正式に売掛金担保融資の取扱いを開始している。つまり、売掛金を担保にした融資は制度的にはすでに確立しているが、手続き等が面倒であるため、それほど普及していないというのが現状である。
とはいえ、担保や連帯保証人問題で悩んでいる中小企業にとって、売掛金担保融資は一つの有力な資金調達手段となると思う。
<< 売掛金担保融資の条件と方法 >>
売掛金担保融資は、すでに借入取引のある金融機関で申込みを行なうが、そこでの諾否が第一関門となる。
制度の詳細については、中小企業庁のHP(http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/urikake.htm)を参照していただきたいが、利用の多い根保証方式で簡単に説明すると、貸付形式は手形貸付で、期間は1年。売掛金を担保に融資する金融機関に、公的な保証機関である信用保証協会が貸出額の90%、金額で1億円を限度に保証するものである。
ここで注意を要するのは、貸出額の10%については保証協会の保証の付かない金融機関固有の債権となることだ。つまりこの分については代位弁済対象外となるので、金融機関はこの融資の取扱いに慎重になる側面があるのである。
<< やっかいな「対抗要件」 >>
もう一点、留意すべき重要なことがある。それは、担保差入れ方式が譲渡担保だということだ。
売掛金を金融機関に担保として差し入れる場合、売掛債権を金融機関に譲渡しなければならない(譲渡禁止特約の付いた売掛金は対象外)。この場合、担保権利者である金融機関は、融資先の他の債権者による差押え等から、担保とした売掛金を守る必要が生じる。それを法的に認める要件が「対抗要件」だが、これがなかなかやっかいなのである。
売掛先を「第三債務者」というが、対抗要件は、(1)第三債務者からの異議なき承諾、(2)第三債務者に対する確定日付のある通知、(3)債権譲渡特例法に基づく譲渡担保の登記、の三つとなる。
売掛金担保融資を受けるには、このどれかを実行しなければならない。
それぞれ一長一短があるが、現実的には「承諾」と「登記」が多いようだ。「承諾」は取引先に事情を話して承諾してもらう必要があるが、「登記」は承諾が不要となるものの、登記簿にその旨を登記される。このため、売掛先や仕入先に反応を気にして、この制度の利用を躊躇する会社も多いというのが現在のところの実態だ。
一般の理解が進んできたとはいえ、いまだに「売掛金まで担保に入れるのか」という見方をする人も多い。このため、現時点では取引先(売掛先)の理解を得ながら進めるやり方が安全といえるだろう。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
最近は上昇局面に転じたものの、ここ十余年、地価下落により不動産の担保としての機能低下や金融機関の不良債権問題もあり、中小企業の資金調達は大きな制約を受けてきた。
そんななか、平成10年の債権譲渡特例法の制定により、平成13年12月、信用保証協会の保証扱いを条件に、銀行が正式に売掛金担保融資の取扱いを開始している。つまり、売掛金を担保にした融資は制度的にはすでに確立しているが、手続き等が面倒であるため、それほど普及していないというのが現状である。
とはいえ、担保や連帯保証人問題で悩んでいる中小企業にとって、売掛金担保融資は一つの有力な資金調達手段となると思う。
<< 売掛金担保融資の条件と方法 >>
売掛金担保融資は、すでに借入取引のある金融機関で申込みを行なうが、そこでの諾否が第一関門となる。
制度の詳細については、中小企業庁のHP(http://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/urikake.htm)を参照していただきたいが、利用の多い根保証方式で簡単に説明すると、貸付形式は手形貸付で、期間は1年。売掛金を担保に融資する金融機関に、公的な保証機関である信用保証協会が貸出額の90%、金額で1億円を限度に保証するものである。
ここで注意を要するのは、貸出額の10%については保証協会の保証の付かない金融機関固有の債権となることだ。つまりこの分については代位弁済対象外となるので、金融機関はこの融資の取扱いに慎重になる側面があるのである。
<< やっかいな「対抗要件」 >>
もう一点、留意すべき重要なことがある。それは、担保差入れ方式が譲渡担保だということだ。
売掛金を金融機関に担保として差し入れる場合、売掛債権を金融機関に譲渡しなければならない(譲渡禁止特約の付いた売掛金は対象外)。この場合、担保権利者である金融機関は、融資先の他の債権者による差押え等から、担保とした売掛金を守る必要が生じる。それを法的に認める要件が「対抗要件」だが、これがなかなかやっかいなのである。
売掛先を「第三債務者」というが、対抗要件は、(1)第三債務者からの異議なき承諾、(2)第三債務者に対する確定日付のある通知、(3)債権譲渡特例法に基づく譲渡担保の登記、の三つとなる。
売掛金担保融資を受けるには、このどれかを実行しなければならない。
それぞれ一長一短があるが、現実的には「承諾」と「登記」が多いようだ。「承諾」は取引先に事情を話して承諾してもらう必要があるが、「登記」は承諾が不要となるものの、登記簿にその旨を登記される。このため、売掛先や仕入先に反応を気にして、この制度の利用を躊躇する会社も多いというのが現在のところの実態だ。
一般の理解が進んできたとはいえ、いまだに「売掛金まで担保に入れるのか」という見方をする人も多い。このため、現時点では取引先(売掛先)の理解を得ながら進めるやり方が安全といえるだろう。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
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