ビジネスわかったランド (経営・社長)
経営の問題
取引先と共同事業を立ち上げる際の留意点は?
“火種”を作らぬよう細部まで取り決めた契約書を作成する。
私自身、共同事業で失敗した経験がある。婦人服専門店チェーンを経営していた時代、友人に声をかけて広告代理店をやり始め、苦しい時期を励まし合って乗り越えながら、事業がうまくいきだしてから対立関係が生まれ、頓挫したのだ。
日も、女性起業家から同様の相談を受けた。共同して起業した男性がいて、仲良く苦労をともにしてきた。ところが儲けが出始めたとたん、取り分でもめ、裁判にもち込みたいというものだった。しかし、裁判で争っても時間と費用、エネルギーを取られるだけ。それなら事業にエネルギーを注いだほうが賢い。「負けるが勝ちで、あなたのほうから少し譲歩したらどうか」とアドバイスした。
<< もめやすい共同事業 >>
とかく共同事業は、「言った」「言わない」でもめることが多い。日本では往々にして口約束で済ませ、契約書を交わさないためだ。ビジネスである以上は最低限、「覚書」を作るのがよい。主導権はどちらが握るか、利益が出るようになってからの取り分をどうするかをはじめ、細かい点まで話し合って決めたことを逐次書き留め、確認し合う。メモでもいいから残し、重要なことはお互いにサインし合うのが賢明であろう。
“そもそも論”で言えば、共同事業はやらないに越したことはない。創業・起業塾などのセミナーでもよく話すことだが、共同での起業は原則、「やらないほうがいい」と私は思う。
それは、共同する相手がたとえ友人、親兄弟であっても同じだ。うまくいく例もあるが、共同事業はトラブルの“火種”を作るということ。あくまでも火種であり、くすぶったり燃え上がったりせぬまま消えてしまうこともあるが、経営者としては、そういう火種をいかに作らないように配慮するかが大事なことではないだろうか。
<< 撤退の条件も事前に定める >>
とはいえ、これからの時代、「共同」や「提携」で事業を行なうことも必要に応じて出てくるだろう。長い付き合いがあり、力関係的にも上位の取引先から共同経営の話をもちかけられたのなら、断れば従来からの取引関係にひびが入りかねない。最悪、取引関係解消もありうるから、応じざるを得ない。
その場合に留意すべきは、何にも増して、きっちりとした契約書を交わす、ということだ。
前述した主導権(人事権を含む)や利益配分の問題以外に、商品・サービスに不備がありクレームが出た場合に責任をどちらが負うか、また事業が思ったように展開しなかった場合にどの時点で撤退の決断をするか、についても取り決めておく。通常は3年程度が目処となろう。一方は撤退したいのに、相手方が「もうちょっと我慢だ」と粘り、引きずられてズルズル赤字を重ね、本業の経営までがおかしくなる。そんな事態も想定して、契約書を作成しておきたい。
できれば、法律の専門家である弁護士に契約書をチェックしてもらうのがいい。契約を交わすというと、「おれが信用できないのか」と態度を硬化させる人もいるが、「あとあとトラブルが起きないよう、嫌な思いをしないよう、万一に備えて作っておきましょうよ」と提案すれば、受け入れてもらえるはずだ。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
私自身、共同事業で失敗した経験がある。婦人服専門店チェーンを経営していた時代、友人に声をかけて広告代理店をやり始め、苦しい時期を励まし合って乗り越えながら、事業がうまくいきだしてから対立関係が生まれ、頓挫したのだ。
日も、女性起業家から同様の相談を受けた。共同して起業した男性がいて、仲良く苦労をともにしてきた。ところが儲けが出始めたとたん、取り分でもめ、裁判にもち込みたいというものだった。しかし、裁判で争っても時間と費用、エネルギーを取られるだけ。それなら事業にエネルギーを注いだほうが賢い。「負けるが勝ちで、あなたのほうから少し譲歩したらどうか」とアドバイスした。
<< もめやすい共同事業 >>
とかく共同事業は、「言った」「言わない」でもめることが多い。日本では往々にして口約束で済ませ、契約書を交わさないためだ。ビジネスである以上は最低限、「覚書」を作るのがよい。主導権はどちらが握るか、利益が出るようになってからの取り分をどうするかをはじめ、細かい点まで話し合って決めたことを逐次書き留め、確認し合う。メモでもいいから残し、重要なことはお互いにサインし合うのが賢明であろう。
“そもそも論”で言えば、共同事業はやらないに越したことはない。創業・起業塾などのセミナーでもよく話すことだが、共同での起業は原則、「やらないほうがいい」と私は思う。
それは、共同する相手がたとえ友人、親兄弟であっても同じだ。うまくいく例もあるが、共同事業はトラブルの“火種”を作るということ。あくまでも火種であり、くすぶったり燃え上がったりせぬまま消えてしまうこともあるが、経営者としては、そういう火種をいかに作らないように配慮するかが大事なことではないだろうか。
<< 撤退の条件も事前に定める >>
とはいえ、これからの時代、「共同」や「提携」で事業を行なうことも必要に応じて出てくるだろう。長い付き合いがあり、力関係的にも上位の取引先から共同経営の話をもちかけられたのなら、断れば従来からの取引関係にひびが入りかねない。最悪、取引関係解消もありうるから、応じざるを得ない。
その場合に留意すべきは、何にも増して、きっちりとした契約書を交わす、ということだ。
前述した主導権(人事権を含む)や利益配分の問題以外に、商品・サービスに不備がありクレームが出た場合に責任をどちらが負うか、また事業が思ったように展開しなかった場合にどの時点で撤退の決断をするか、についても取り決めておく。通常は3年程度が目処となろう。一方は撤退したいのに、相手方が「もうちょっと我慢だ」と粘り、引きずられてズルズル赤字を重ね、本業の経営までがおかしくなる。そんな事態も想定して、契約書を作成しておきたい。
できれば、法律の専門家である弁護士に契約書をチェックしてもらうのがいい。契約を交わすというと、「おれが信用できないのか」と態度を硬化させる人もいるが、「あとあとトラブルが起きないよう、嫌な思いをしないよう、万一に備えて作っておきましょうよ」と提案すれば、受け入れてもらえるはずだ。
月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。
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