ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

ベンチャーキャピタルはどんな基準で選べばよいか
 目先の好条件に惑わされず長い付き合いを念頭におくことが大切だ。

一口にベンチャーキャピタル(以下VC)といっても、いろいろな種類がある。大きく分ければ金融機関系、独立系、行政系、ということになる。金融系はさらに銀行系と証券系に分けられる。
このうち行政系は、マクロ経済の観点から中小企業の成長を助けようというのが趣旨だから、株主になっても干渉は穏やかなものだといえる。銀行系の場合は対融資先顧客という形をベースにしており、単に融資するのではなく、投資の形でも成長を助けたいという考えなので、行政系と同じく干渉は比較的穏やかである。それに対し、証券系、独立系は、はっきりとリターンを求める傾向が強い。
VCはビジネスプランに対して投資するものである。どのようなVCと組むとしても、原則としてVCからの資金調達は、新商品の開発資金、新工場の設備資金といった目的で行なうことだ。お金がないからVCを頼るという考えは捨てよう。運転資金は、返済計画を立てる融資という形で調達するべきである。

<< よいVCほど経営に干渉する >>

さて、VCを選ぶ際の留意点だが、第一に指摘しておきたいのは、好条件で誘うところによいVCはないということだ。
ビジネスプランが立っていない段階で手を挙げてくるところは、まず“まがいもの”と見ていいだろう。大手VCが参入してから、償還金利の条件緩和などで食い込もうとする、いわば相乗りするようなところも勧められない。
私は、ある程度、実績・歴史のあるところをお勧めしたい。必ずしも金利などの面で好条件ではないが、長い付き合いになることを考えれば、表面的な負担以上にメリットがある。条件よりも、個々のキャピタリストの経験・能力を買うのだと考えるべきだろう。
知人のキャピタリストが、投資の判断はプラン七割、経営者の人間性が三割と言っていたが、同じように経営者も先方の人間性を見る必要がある。その際、弁護士やコンサルタント等、社外ブレーンの知恵も活用したほうがよいだろう。費用が問題であれば、各都道府県庁の支援センターで専門家の助言を無料で仰ぐこともできる。
最も簡単な見分け方は、そのVCが経営に干渉したがるかどうかである。お金だけ出してあとは知らんぷり、ではなく、投資する以上、情報面や経営指導、販路開拓など、お金以外の面でも支援しようというのが、良心的なVCの基本姿勢だからだ。
経営者の方には、それに耳を傾ける度量をもっていただきたい。失敗する事例の大半は、この部分で経営者が変われなかったからだと考えられる。
第三者が株主になる以上、彼らに対する情報公開は義務である。また、ゆくゆくは公開したいのであれば第三者株主の意見を聞かないのは矛盾した話なのだが、その切り替えがなかなかできない経営者が多い。VCを上手に活用し、自社の情報もディスクローズして、有効な関係を構築すべきである。
また、VCは公開だけではなくM&Aなど売買を選択に入れているのも事実である。そうした点も踏まえて、VCは頼るためにあるのではなく、対等なパートナーだと認識することが大切である。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。