ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

コンサルタントの指導に社員が納得してくれないときはどうする?
 自らも汗を流す姿勢こそ社員の納得を得る近道である。

理論は大切だ。しかし、それだけで人は動くものではない。どんな立派な理論でも、社員が理解し納得して動いてくれなければ、会社にとっての知恵として活かされることはない。
そもそも、コンサルタントの指導というのは、どうしても画一的になりがちである。本当にお客様を満足させられるサービスは、手法ではなく、個々の社員のマインドから生まれてくるものだ。その意味で、社員の個性も尊重する必要がある。
気をつけたいのは、コンサルタントの指導を仰いだからといって、短期的な成果を求めすぎてはいけないということだ。コンサルタントを”特効薬”のように考えて協力を仰ぐ経営者は、まず失敗する。
実は私もそうだった。短期的にコンサルタントの指導を仰いだことは二、三度あったが、いずれもうまくいかなかった。理由を一言で言えば、社長である私のあせりが社員に伝わってしまったからである。
10年ほど前、営業管理のアドバイザーとして大企業を退職した人物を招き、杜撰だった管理面を整えようとしたときも、当初はうまくいかなかった。当社は、空調設備の販売・施工、メンテナンス業を営んでいる。修繕に伺ったときに、口頭で新規にエアコンのご契約をいただくことも多い。営業管理と一口に言っても、そう単純に割り切れるものではなかったのだ。
その後、彼も私も反省し、基本は確実に行ないつつ、特殊な事情や社員の個性も考慮した方法を取り入れるようにした。その結果、社員の意欲も高まり、積極性も得られるようになった。いま、その人物は取締役になり、社員にも信頼されている。
自社に合った手法を作り上げていくのは、時間がかかる。しかし遠回りなようでも、会社の将来にとっては、そうした選択をしたほうがよいであろう。

<< 背中で語る努力を惜しまない >>

ところで、ご相談者ご自身が言いにくいことを、コンサルタントの口から言わせているような面はないだろうか。会社というものは、社長が汗をかいて、その背中で語るくらいでないと、従業員はついてこない。コンサルタントで自分の説得力を補おうとするのは、あまり感心しないやり方だ。
また昔話になるが、30年ほど前、取引先の営業研修に社員とともに参加したことがある。典型的な根性営業の研修で、それは厳しいものだった。社員にだけ受けさせるのは気が引けて私も参加した。私は40歳を少し過ぎたころだったが、20代の若い社員と一緒になってウサギ跳びなんかもした。そんなふうに、私はずっと社員と一緒に汗を流してきたつもりだ。ときにはそれで恥をかいたこともあったが、結局はそれがよかった。
皆で一緒に汗を流してきたことで心がつながり合い、互いの信頼感が醸成され、不況下でもめげない社員が育つ下地ができあがったと自負している。
くだんのコンサルタントのやり方を是とするなら、その手法に則って、社員とともに現場で汗を流してみてはどうだろうか。
すぐに結果が出なくてもいい。社長のその姿を従業員に見せることが何より重要なのである。それが実は、従業員に対する説得力をもつことにもなる。まずはそこから始めてみてはどうだろう。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。