ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

経営パートナーの持株を買い取りたい。株価の算出法は?
 純資産価額と営業権評価額から株価総額を算出する。

株式譲渡に際しては、売り手と買い手が合意した価格が株価であるということが基本となる。上場企業の株価は市場取引価格があるのでわかりやすいが、取引事例のない未上場企業の株価については、何が妥当な価格なのか、わかりにくいのが実情だ。
そこで、株式売買の価格算定の参考となるのが未公開企業の株価算出方法である。なかでも同族間の売買に際して国税庁が定めた株価算出方式の一つである純資産価額方式は、今回のような第三者間の売買にも使える基本的な評価方法である。具体的な計算手順は次のとおりである。

・純資産価額方式の計算方法
(1)直前期におけるB/S(貸借対照表)上の「総資産-負債」=A
(2)直前期の評価益=B(評価益がない場合は0)
(3)評価益に対する法人税相当額=B×42%
(4)株価総額=A+B-(B×42%)
もしも、帳簿上の資産に評価益(含み益)となるような資産があればそれを考慮し、評価益から評価益に対する法人税相当額(実効税率を42%として)を差し引いた額を帳簿上の純資産(自己資本)に加えたものが株価総額となる。買い取りする相手が30%を持っているなら、株価総額×30%が相手の保有している株式の価格総額となる。したがって、この価格で買い取りをすべく交渉するのが第一歩となる。

<< 営業権の評価は話し合いで >>

しかし、純資産価額方式で算出した価格で相手が納得せず、交渉の過程で、営業権の評価や将来のキャッシュフローを加味して株価を算出すべきだという話になることも考えられる。
実は、中小企業のM&Aにおける企業評価では、純資産価額に営業権を加える方法や、将来得られるキャッシュフローを見積もって現在価値に割引くDCF(ディスカウントキャッシュフロー)法が使われている。ただし、DCF法は収益力が安定した大型M&Aに使われる方法であるため、本件のような場合は「純資産+営業権」で株価を評価するのが妥当と考えられる。
営業権の評価を加える場合、前述の純資産価額に営業権の評価額を加えたものを株価総額とする。営業権の算出は、税引き後利益の3~5年分とする場合が多い。したがって、「純資産価額+税引き後利益×5」が自社の株価総額の最大値となる。
ただし、ここで注意したいのは、何をもって「税引き後利益」とするかである。
営業権といった無形の資産を算出する場合、それを算出する人の考え方や立場によって結果は違ってくる。たとえば、計算基礎として直前の税引き後利益を使うか事業計画の税引き後利益を使うかでも、営業権の評価額は違ってしまう。そしてそのどれが絶対に正しいといったものなどないのが実情だ。
そこで今回の場合、株価計算方法は「純資産+営業権」とし、営業権の計算基礎とする税引き後利益は、会社の実態をよく知っている経営パートナーと話し合いで決めるのが最も公平ではないかと思う。同じ志をもって一緒にやってきたパートナーから株式を買い取るのだから、腹を割って話し合えば、納得してもらえるのではないだろうか。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。