ビジネスわかったランド (経営・社長)

経営の問題

地元銀行からの誘いに応じ、新たな取引を開始しようと思うが…
 複数行との取引はリスク回避の手段。取引条件は総合的な検討をする。

資金調達を一行に頼らず、複数の銀行と取引したほうが、万一の際のリスク少なくなる。とはいえ、メインバンクとの兼ね合いも気になることだろう。
だが、そもそもこの「メインバンク」、いまでは「取引金額が最も大きい銀行」という意味にすぎない。融資先に問題が生じたら問題解消のために銀行が救済行動をとるという意味でのメインバンク制は、すでに崩壊している。メインバンクという言葉からは、「何かあったら救いの手を差し伸べてくれる取引銀行」という響きが感じられるが、そうしたことは期待できないし、期待してもいけない。
基本的に、銀行から融資を受けるときに結ぶ銀行取引約定書の内容からしても、銀行と貸出先の関係は対等である。メインバンク以外から借入を起こすとき、メインバンクに対する報告は必要だが、「断りを入れる」必要はない。「貴行も含め、提示いただいた融資条件などを総合的に検討した結果、○○銀行から借入することにしました」という結果報告で十分である。

<< 取引条件は総合的に判断する >>

新規銀行からは、できるだけ有利な条件を引き出したいと思うだろうが、基本は健全な競争である。勧誘している銀行と現在の取引銀行に自社の計画を開示し、それそれに融資条件(融資形式、金額、期間、金利、返済方法、担保、保証等)を提示してもらう。提示内容を総合的に検討し、自社に最も合った銀行を選択すれば、自ずと「有利な条件」となるはずだ。注意すべきは、「金利が低い」「担保条件が緩やか」など個別項目の有利性だけで判断しないこと。金利や担保は取引開始後、調整される可能性もある。あくまで総合的に判断すべきであろう。

<< 新規銀行と取引する際の留意点 >>

新規銀行と取引する場合、「信用の醸成には時間がかかる」ということを念頭におくことが大切だ。最初から新規銀行に融通性や積極性を期待してはいけない。「わがままな取引先」というイメージを与えるだけだ。日常取引できちんと約束を守ったり、定期的に業績説明したりしながら、しっかりと信用を構築していく必要がある。
最もいけないのは、取引を始めてから「話が違う」といって銀行を変えることである。安易に取引銀行を変えるという行動は、銀行はもちろんのこと、取引先の信用もなくしてしまう。いったん取引を始めたら長く付き合う気持ちが必要である。
さらにもう一点理解しておくべきは、こちらが長く付き合う気持ちでいても、その銀行と肌が合わない場合もあるということだ。取引開始の前後で、また担当者の変更前と変更後で「何か違う」と感じることが起こる。組織風土の違いがその原因と思われるが、そうした違和感が容易に解消しない場合でも、当該借入金の約定返済は継続すべきだ。繰上返済や他行による肩代わり返済は、よほどのことがない限り勧められない。
最後に、金融機関の再編にも目を配る必要がある。大手銀行の再編はおおむね終了したようだが、地域金融機関の再編はいまだ途上にある。合併や吸収は銀行取引に多大な影響を及ぼす。そのあたりも配慮して取引銀行を選択すべきだろう。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。