ビジネスわかったランド (経営・社長)

対外折衝

業界団体や官公署との付合いは
 業界団体、官公署との付合いは、極力、積極的に行ない、世話役等のお鉢が回ってきたときも引き受けることで交流を広げることを考えるべきであろう。

どんな付合いが必要になるのか
長引く不況に加うるに、構造改革に伴う失業者の増加は本当の意味において人材確保のチャンスである。
したがって、職安や学校の進路指導、就職部の方々とのお付合いは、一昔前の人手不足時代のように、ただ、(頭数だけ回して貰う)式ではなく、真に適性や潜在能力を持った人、新しい仕事や職場に積極的にチャレンジする意欲のある人を斡旋、紹介してもらうように働きかけねばならない。現在は職安も学校も「職場開拓、新しい仕事開発」に非常に熱心な時期なので、企業の人事担当者も「ジッとしていても人は集まる」と大きく構えるのではなく、求職側ともこまめに接触してよい意味での人間関係をつくっておくことが肝要である。
技術者の採用についても、新卒の場合はやはり従来どおり大学(大学院)の研究室、教授の研究室にも定期的に足を運んでおく必要がある。また、実習生の受入れも積極的にやるべきだろう。どんな時代、環境の下にあっても優秀な人材は絶えず必要なのである。
また、社員が新しく入ってきたり、退社したりしたら、社会保険事務所や職安(ハローワーク)に対して各種保険の資格取得・喪失の手続きをとらなければならない。
その意味では、社会保険事務所や職安は企業にとって頻繁に接触する相手となる。労働基準監督署も人事制度を変えたりしたら、そのつど届出をしなければならない。
しかし、それ以上は、たとえば、CIによって社名を変えたりしたら法務局、特許を開発したら特許庁、裁判沙汰になれば裁判所ということで、そのつど、担当部署の役員が先頭に立って処理していけばよい。
ただし、社内的に問題がある場合、たとえば、危険物を取り扱っているにもかかわらず、取扱責任者を置いていないとか、安全措置を講じていないとか、あるいはヤミ残業が多いなどといった場合には、社内告発が起こり、労基署からの立入検査を受けたりする。
担当役員としては、まともな仕事の進め方になっているかを点検したうえで、付合い方について考えてみよう。

警察・消防署とは日頃から協力的な付合いを
関係官公署との付合いについて、心がけておきたいことは次の点である。
その1つは、幅広い意味で、先方の依頼や活動に協力を惜しまないこと。たとえば、職安が各種のアンケート調査票を送ってくることがあるが、これにはきちんと回答する。
暴力団や総会屋対策の一番有効な手段は、所轄の警察署と普段からコミュニケーションを保っておくこと。そのためにも、所轄警察署による「交通安全講習会」や「春秋の交通安全運動」、あるいは防犯活動等に対する協力・協賛についても、積極的に対応するようにしておきたい。
また、消防署関係でも、「お宅の会社前の広場を使って消火器の扱い方の講習をしたい」とか「火災のときの避難誘導訓練を貴社でやらせてもらいたい」と申し出てくる。業務に支障が生じるのは事実だが、他部署とも協議してできれば協力してやりたい。
そうした顔つなぎこそが、何かあったときの助けになる。

地域との付合いも率先して
企業を取り巻く地域には、会社を構成員とした様々な組織がある。たとえば、地域によっては労働基準協力会という親睦団体がある。
この団体は、労働基準監督署と協力し合ってその地域の業者が集まり、「安全衛生週間だから、各社内にポスターを貼りましょう」等の運動を展開するのだが、こうした組織にも参加し、地域にも溶け込むようにしたい。また、防犯協会や交通安全協会、あるいは○○連絡会といった、それぞれの地域でつくる組織にも役員がリード役となって顔を出すようにしたい。
これらの組織活動は、決まった会費を納め、定例的に会合をもつケースが多い。時には茶飲み話に終始することもあり、企業のプラスに直結しないものも少なくない。
したがって、すべての会合に取締役自身が出席することもないが、利益につながるか否かと短絡的に見るべきではない。
われわれは、いずれにせよ狭い世界で活動しているのである。自分の世界はより広げるようにしたいし、そうした姿勢で築いた人脈こそが、いざというときにも生きてくると考えたい。

業界団体との付合い
取締役ともなると、会社を代表していろいろな団体にも首を突っ込まざるを得ない場合も多い。同業者団体、地域団体と様々だが団体との付合いのポイントを考えてみよう。
1.新規加入の場合の心得は
人の紹介によって加入を勧められる場合がある。そのときは会の内容をよく調べたい。営利団体なのか単なる親睦団体なのか、会費はいくらか、拘束される時間はどのくらいか、など。
支障がなければ顔をつなぎたいところだが、限度を押さえておかないと振り回されることになる。規約・目的等をよくチェックし、自分の時間とも照らし合わせて参加したい。
よく、「団体活動なんか意味がない」としてモンロー主義をとる人もいるが、周りからは決してよい目で見られていないことを知っておくべきだろう。そのことは、役員自身にとっても会社にとってもプラスにはならない。
ただし、その団体が特定の政治団体であったり、宗教活動の母体であるといった場合は、慎重に検討すべきであろう。
2.団体役員就任を要請された場合の心得は
加入して長くなると、必ずといっていいほど理事だとか幹事役等の役割分担を押し付けられる。面倒なものであり、避けたいと思うのが人情だろう。
しかし、逃げ回っていては、非協力的だと非難されるし、逃げ回るエネルギーも馬鹿にならない。前向きに考え、お返しをしなければならないときには、積極的に協力することである。世話役を引き受けることで人的交流も広がり、1メンバーでは知り得ない事情までわかってくることもある。
なお、役員就任の場合は、それが社・財団法人の理事以上であれば、自社の取締役会の承認を得ておくこと。また、その他であっても社長の承認を得ておくことが必要である。
業界団体との付合いにおいて留意すべきは、(1)談合への参加、(2)特定の政治家支援とそれに伴う分不相応の献金、資金援助、(3)社内特定部署における不明朗(不正)取引の隠れ蓑に利用される等々の事象に対して、しっかりした社内監査体制を確立しておくことである。
逆に業界新規事業、新技術、法的規制、社会情勢、信用情報等を積極的に吸収するためにも、この種の業界団体での付合いは欠かせぬものであることもまた事実である。

著者
樫木 正明(元ローランド株式会社顧問)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。