ビジネスわかったランド (経営・社長)

後継者育成

娘婿を次期社長につけるときの注意点は
 娘婿の場合は、情に流されずに客観的に能力を判断できるというメリットがある。ただ、後継者としては守成に向いている場合が多いので、教育訓練中は鋳型にはめず、自由な課題に取り組ませるなどして、活力を身につけさせるような配慮が必要である。

人物的にOKでもリーダーとしての器はどうか
生まれた子供が娘ばかりのため、娘婿を事業の後継者に選定する例も多い。娘婿というのは、血を分けた子供でないだけに、情に流されずに、その能力を客観的に判断できる。むろん、娘の伴侶である以上、結婚に際して「娘の夫」としてふさわしいか否かも厳しく“査定”しているから、たいていは人物的には問題はないはずである。
もっとも、その娘婿を将来の後継者と想定せずに、娘と結婚させているような場合は別である。人間的には好感がもてるが、組織のリーダーとしては器に欠ける例も少なくないからである。

基準をパスしたら種々の教育を
一応、後継者として最低基準をパスした娘婿なら、当然、バトンタッチまでの間に、種々の教育を施すことができる。実の息子では躊躇するような課題すら、娘婿に対しては与えることもできるだろう。この点、実子以上の後継者教育を徹底してやれるのが強みといえばいえる。
また、そうした厳しい教育を実施しておいてこそ、娘婿に後継リーダーを委ねる意味がある。中途半端な後継者教育なら、しないほうがましだ。実の親子でない以上、経営理念といった根本のところは、感覚的に理解させることなど非常にむずかしいからである。

娘婿であることの立場への配慮も必要
特別の場合を除き、娘婿も常に他人の目でもって企業や経営者を眺めているのが普通である。と同時に、その言動においては、経営者(一族)以上に企業のために精を出していることも事実である。この点が、一般社員との最大の相違であるとともに、娘婿という立場の複雑な一面であることを理解しておく必要がある。

教育訓練中に鋳型にはめ込まない
娘婿という存在は、後継者としては企業組織の守成に向いている場合が多い。しかし、それゆえに、創業者精神ともいうべき活力が不足しがちな一面もある。娘婿という立場では、よほどの人間でなければ、先代の意に染まないものには最初からチャレンジすることがないからである。
もし、娘婿に後継リーダーとしての好ましい活力を望むのであれば、その教育訓練中にあまり鋳型にはめず、自由な課題に取り組ませることも必要である。

著者
大田 正幸(経営評論家)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。