ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

経営が悪化したときの取締役の責任は?
<< 取締役は結果責任を取る立場 >>

会社経営が悪化したとき、取締役が株主から経営責任を問われて、取締役を退任させられるのは仕方ないことである。取締役は、会社を繁栄させることを求められており、結果責任を取らされることになる。
経営悪化の原因には、経営判断の誤りが少なくない。過剰な設備投資をした、市場動向を掴み切れなかった、取引先の信用度を見誤ったなどである。
こうした判断の誤りについて、取締役は会社に対する損害賠償責任も負わなければならないのだろうか。
その経営判断が、十分な調査検討を踏まえ、取締役会での議論も尽くしてなされたときは、結果が裏目に出たというだけであって、取締役には損害賠償責任はない。この場合は、取締役は経営上の裁量権の範囲内で許される判断をしたまでであり、会社損害についてまで結果責任を取らされるわけではない。

<< 故意の怠慢や過失には厳罰 >>

しかし、判断の前提となる事実認識や判断の過程に、通常の取締役に期待される程度の注意力すら欠いていたという事実があると、取締役は会社に対して、忠実義務違反を理由に損害賠償責任を負わされることになる。
さらに、取締役の経営判断に重大な不注意があったり、故意に職務を怠ったなどのことが原因となって会社の経営が悪化したとなると、取締役は会社に対して損害賠償をしなければならないばかりか、経営悪化によって支払いを受けられなくなった取引先債権者などに対しても、損害賠償の責任を負うことになる。それは、会社に代わって取引先に支払いをせよということであって、全私財をつぎ込んでも間に合わないことになるであろう。
中小企業の場合、代表取締役が独断で突っ走って失敗することも多い。熟慮を重ね、取締役会を必ず開いて、取締役全員の衆知を集めることを心掛けることが、不用意な失敗をしないための第一歩である。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。