ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

粉飾決算をしたときの取締役の責任は?
 決算は、事業年度内の営業実績、会社の現有資産、年度損益の処分方法等を明らかにするもので、定期的な確認と株主等への報告のため、事業年度ごとに行なわれる。
決算は、実態どおりに正確にすることが要求される。決算を正確にすることは、株主の出資した資金を運用する責任と権限を与えられた取締役の、最も重要な責務である。また、正確な決算によって初めて、株主も、新規投資をしようとする出資予定者も、取引関係にある者も、会社の経営状態、資産状態あるいは経営姿勢等を正確に知ることができる。

<< 粉飾決算は会社のためという錯覚 >>

利益がないのにあるかのように取り繕った決算を粉飾決算というが、粉飾決算が横行するのは、次のような理由からである。
(1)取引先に会社の評判を落としたくない
(2)資金繰り(新規借入など)が難しくなるのを避けたい
(3)事業の失敗による責任を追及されたくない

<< いくつもの罪が課せられる >>

粉飾決算をすると、剰余金の配当まではしなくても、少なくとも余分な税金を支払わなければならない。そうしてまで粉飾をする取締役は、自分の経営責任は棚にあげて、粉飾が会社全体の利益なのだという錯覚に陥っていることが多い。しかも、一度粉飾決算をすると、次の事業年度でも前期からの粉飾を引き継ぐうえに、新たな粉飾が上塗りされやすく、粉飾が肥大化していく傾向がある。そして、粉飾が発覚するのは、たいてい会社経営が破綻したときであるから、会社が受けてきた損害額は巨額にのぼることが多い。
取締役は、その損害について会社に対し賠償責任を負わなければならないし、第三者の損害についても当然損害賠償の責任がある。また、計算書類不実記載罪も成立する。さらに、粉飾決算をした計算書類を提出して会社の経営実態を偽り、銀行借入などを受けると、詐欺罪が成立することもある。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。