ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

子会社救済の融資・取引に関する取締役の責任は?
 親会社とは、他の会社の議決権の過半数を保有するなどして財務および事業方針の決定を支配している会社のことであり、その相手方会社を子会社という。

<< 子会社の不安は親会社の不安 >>

親会社は、子会社の大株主であるばかりか、取引関係にあることが多いから、子会社の困窮ないし倒産は親会社に対しても次のような損失を与える。
(1)子会社に対する債権が回収不能になる
(2)子会社を利用したさまざまな便益が失われる
(3)親会社の決算や信用に悪影響を及ぼす
(4)保有する子会社の株式の価値が失われる
そこで、親会社としては、できる限り子会社に対する救済的な融資や取引を試みようとする。しかし、うまく救済できるとは限らず、かえって親会社の傷を深めかねないというリスクも背負っている。

<< 子会社救済は明確な見通しをもて >>

取締役としては、救済措置の是非をめぐり、次のような項目について慎重に検討せざるを得ない。
(1)救済の必要性ないし倒産回避努力の必要性はどの程度か
(2)その融資ないし取引による救済的効果とリスクはどの程度か
(3)より効果的でリスクの少ない救済方法はないか
(4)救済の効果が上がらなかった場合の、親会社としての損失はどの程度か
子会社の救済に失敗して取締役の責任が問われることになれば、このような検討項目について十分慎重な検討がなされたか、その結果としての判断に誤りはなかったかが事後に評価される。
自社や子会社の経営内容、資金繰りの見通しをしっかり把握することが先決であり、根本的解決につながる見通しがなければ、手を出すべきではない。また、子会社倒産によって親会社も一蓮托生となるような、事業や資金の癒着には日頃から注意が必要である。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。