ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

使途不明金と取締役の責任は?
 ここで使途不明金とは、実際には使い途はわかっているのだが、あえてそれを秘匿しておかざるを得ない金をいう。

どういうものが使途不明金となるのか。
たとえば、専属下請会社がいわゆる親会社からバックマージンを要求されたうえ、その支払先を秘匿することを指示されると、下請会社としては使途不明金として処理せざるを得なくなる。
そのような使途不明金の課税上の扱いとして、以前にはその経費性を自己否認して、利益として税務申告すればよいとされていた時期もある。
しかし、使途不明金のなかにも、そのような名目を利用して自社の裏金を蓄えるケースが目立つようになったため、現在では使途不明金の40%相当額が法人税額に加算されることになっている。

<< 隠す以上は厳罰を覚悟すべき >>

使途不明金としての処理をした場合、取締役の責任はどうなるか。営業上の関係から支払わざるを得ないマージンを支払ったのか、それとも取締役が会社の裏金をつくっているのか、または着服してしまったのか、周囲には判定のしようがない。
そうである以上、取締役が実際の使途を明らかにして株主に対し納得できる説明をしない場合は、使途不明金を生じさせたことを忠実義務違反として、取締役に賠償責任を負わせるべきであろう。
損害額は、使途不明金を出さず正式に利益計上されていた場合と、使途不明金として計上された場合との税負担後の利益の差額である。
取締役には酷なようだが、そもそも、取締役は株主から資金を預かって運用し、その経理については包み隠さず正確に明かす義務があるのだから、使途不明金として真相を明かさない場合は、基本的に株主に対して弁明できないものと観念すべきである。使途不明金が、結局は会社の利益となって還元されているという弁明には、あまり説得力がない。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。