ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

取引先が倒産した場合の取締役の責任は?
 取引先倒産は、担当の営業社員や取締役にとって頭の痛い問題である。

社内では、どこを見ていたと白眼視される、倒産先に駆けつけてみても、ほとんど財産らしいものはない、自分も情けないやら腹立たしいやらで、憂鬱なものである。
取引先の倒産は、いつでも起こり得ることであり、日頃から事前察知に努めるとともに、いざというときの債権回収策を考えておくことが望ましい。しかしこれは、現実には口で言うほどやさしいことではない。
実際に取引先が倒産すると回収不能債権が残り、社内では担当の営業社員や営業部門の上司、さらには取締役の責任が取り沙汰される。しかも、取締役は倒産先との取引について、経営判断を誤らなかったかどうかを問われ、落ち度があれば忠実義務違反として会社に対する損害賠償責任、つまり回収不能額の賠償という責任にも発展する。

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取締役に責任があるかどうかは、次の点を基準として判断される。
(1)信用供与に失敗はなかったか(取引を開始したことと、取引の推移、最終の取引残高について)
(2)債権回収に十分な担保(抵当権や連帯保証人)を確保していないのはどういう事情からなのか
(3)経営状態等について、どのように注意をしていたか
(4)どういう原因で倒産したのか
(5)倒産の危険察知に遅れはなかったか
(6)倒産の危険を知った後の措置は適切だったか
ただし、取締役が万能であるわけではない。なんらかの過失があったと判定されたとしても、取締役としておかしくない程度の注意が払われていれば、結果的に損害が発生したとしても、取締役に損害賠償責任まで負わせることはできない。
したがって、会社としても、関係社員や取締役の責任論をあまりに厳しく問い立てるより、むしろ今後の対策や方針をきちんと出して、実践していくことが肝要だろう。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。