ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

業務災害があったときの取締役の責任は?
 業務災害が発生すると、被災者も会社もそれぞれに大きなダメージを受ける。それだけに、建設現場や工場などのように危険と背中合わせの職場では、業務災害の防止は最も重要な問題である。
業務災害が発生した場合、会社や取締役の責任は決して軽くはない。したがって、会社や取締役は、職場の災害防止に重大な責任を負うことを認識するとともに、積極的に取り組まなければならない。

<< 業務災害と「安全配慮義務」 >>

会社、そしてその方針を実行する取締役は、使用人を雇い入れて指揮監督下におき、業務命令によって仕事に従事させている立場にある。したがって、使用人に安全な職場を提供し、安全に就労させる責任がある。
これを会社や取締役の使用人に対する「安全配慮義務」という。
取締役会で安全配慮について議論し、その結果を個々の取締役が職場に徹底することになるが、会社や取締役が安全配慮義務を尽くしたといえるためには、少なくとも次のような項目について、相応の措置ができていなければならない。
(1)業務の危険性と安全対策についての徹底教育
(2)安全性を考えた作業工程・作業配置
(3)職場の整理整頓
(4)過労とならない適正な就労状況の維持
(5)使用人の健康管理の徹底

<< 被災者や第三者に対する損害賠償 >>

安全配慮義務の範囲は、職場の物理的な安全性だけにとどまらない。使用人の過労や病気が原因の業務災害についても注意を求められる。
業務災害が発生した場合に、会社側の安全配慮が不十分であったと認定されると、会社と取締役は連帯責任として、被災した使用者や第三者に対する損害賠償の責任を負う。
また、取締役個人の安全配慮不足が忠実義務に違反していたとして、取締役が生じた損害を会社に対して賠償しなければならないケースもある。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。