ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

新株発行に伴う取締役の責任とは?
 新株の募集発行は、会社が成立した後に、新たな募集株式を発行することである。

新株の募集発行は、会社の自己株式処分と並んで、基本的には資金調達の手段であるといえる。
新株の募集発行には、株主割当て、第三者割当て、そして公募という三つの方法がある。株主割当てとは、株主に株式の割当てを受ける権利を与える方法であり、第三者割当ては縁故者のみに申し込ませて割り当てる方法であり、公募は不特定多数の者に引受けの勧誘をする方法である。譲渡制限会社では、株主割当てあるいは第三者割当ての方法がとられる。

<< 募集事項の決定 >>

いずれの募集方法をとるにしても、募集株式の発行をする旨と、募集する株式数、払込金額、現物出資を認める場合はその財産の内容と価格、増加する資本・資本準備金の額等の募集事項とを決定しなければならない。
その決定をするのは、公開会社では取締役会である。譲渡制限会社では、株主割当て・第三者割当てのいずれの方法にしろ株主総会の特別決議によることが原則であるが、第三者割当ての場合には、定款の定めによって取締役ないし取締役会に委ねることも可能である。

<< 取締役の責任 >>

会社法の成立により、取締役の引受担保責任の制度(新株発行による変更登記の後にも引受けのない株式について、取締役が共同して引受けの責任を負う責任)は廃止された。
しかし、募集株式の発行手続きに違法な点があれば、株主から募集株式の発行差止めを請求され、訴訟や仮処分を受けることにもなる。また、事後的には新株発行無効の訴えを提起されることもあるだろう。
違法行為に関わった取締役には、会社に対する損害賠償責任が発生するばかりか、不利益を受けた株主からも損害賠償責任を追及されるおそれがある。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。