ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

株主の権利行使に関する利益供与と取締役の責任は?
 会社が株主その他の者に対して利益供与して株主権の行使について工作することは、厳しく禁止されている。

<< 本来の姿を歪める利益供与 >>

会社がといっても、実体としては会社の経営陣がということであるから、この規定は、株主が株主総会の決議、帳簿の閲覧、株主代表訴訟の提起などの株主権行使を通して会社の重要事項を決定したり、取締役の業務執行を監視するという仕組みが、利益供与という買収行為によって歪められてしまうことを防止しようとしているのである。
会社法は、(1)会社は株主権行使に関して、誰に対しても財産上の利益を供与してはならず、(2)特定の株主に対して無償で(株主の利益より会社の利益のほうが著しく少ない場合も含む)利益供与すれば、株主権の行使に関して供与したものと推定し、(3)利益の供与を受けたものは会社に返還することを定めている。子会社の計算で利益供与した場合も同様である。

<< 間接的な行為も利益供与に該当 >>

「誰に対しても」禁止するものだから、工作活動を依頼した第三者に謝礼することも該当する。
一方、株主になんらかの財産上の利益供与をしても、株主の権利行使を支配する目的でなく、単なる株主の平等優待であったり、社員株主に対する福利厚生の一環という場合は、禁止行為に該当しない。
株主権行使の前提となる株式の取得や譲渡について利益を供与して、保有株式比率について工作することも禁止行為になる。総会屋にお金を渡して総会対策をする行為は、利益供与の典型である。
利益供与禁止規定に違反した者(取締役のみならず一般社員も含む)には、刑罰が科される。たとえ取締役会の決定や上司の命令でした場合にも、刑事責任は免れない。また、利益供与行為をした取締役、それに賛成した取締役(議事録に反対したことが記載されていない取締役)等には会社に対し損害賠償責任が負わされる。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。