ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の責任

自己株式の取得と取締役の責任とは?
 自己株式の取得は原則自由である。

会社が自社株を取得することを「自己株式の取得」といい、会社に出資された資金を払い戻すことになり経営基盤を危うくするという理由で、かつては例外的な場合を除いて禁止されてきた。
しかし、平成13年の商法改正で自己株式の取得は原則的に自由とされた。会社と資本の関係は崩れており、逆に株式の償却などを効果的に行なう必要があると考えられたためである。
会社法も、そのような原則自由の立場を踏襲しているが、子会社が親会社の株式を取得することは、これまでどおり原則的に禁止されている。

<< 自己株式取得のための手続き >>

一般的な自己株式取得の方法は、市場取引または株主全員に対する売渡し勧誘によって、当該株主との合意により取得することである。そのためには、あらかじめ株主総会で次の事項を決議しておかなければならない。
(1)取得する株式数
(2)取得する株式と引き換えに交付する金銭等の内容とその総額
(3)株式を取得することができる期間(一年を超えることができない)
中小企業の場合、特定の株主から自己株式を取得する例が多いと思われる。その場合には、次のような厳格な手続的規制がある。
(1)右に述べた一般的な事項を決議するとともに、その特定の株主の氏名を特別決議をもって決議しなければならない
(2)この特別決議をしようとする会社は、株主に対して、自分も特定の株主に加えるよう請求できることを通知しなければならず、株主からその請求があれば、特別決議による自己株式取得の相手として追加しなければならない

<< 取締役の責任 >>

このように、自己株式取得については、原則的に自由であっても手続き的には厳格な規制があることを忘れてはならない。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。