ビジネスわかったランド (経営・社長)

人材の登用と処遇

人材たり得るかの鑑別法は
 言われたことをきちんとこなすだけでは不十分。積極的な開発意欲があり、しかも統率力のあることが重要なポイントである。

人材評価のポイントは
役員の働きぶり如何は会社の運命を決するものであり、その評価については次の点に留意すべきである。


<< 古典のいう「人を見る目」 >>

リーダーの資質に関しては、古今東西、様々な名言がある。
そこで、筆を転じて古典のいうところを紹介することにしたい。


不適任役員とは
不適任と判定するにはそれなりの客観的な理由が必要である。中小企業の中には、同族やオーナーの気に入らないからといって、不適任だとか、家風に合わないなどといいがかりをつけ、追い出しにかかる例もあるが、企業の私物化思想の見本といいたい。
また、同族企業にありがちなことだが、その役員が会社乗っ取りにかかったとか、社長の後釜を狙った、などという根も葉もない噂を取り上げ、不適任と決めつける場合もなしとはしないが、いずれも会社にとってマイナスとなるばかりで、益するところは何もない。
そこで、不適任と判定する理由について次に述べることとするが、これらはあくまでも抽象的なものであるから、それらの具体的な裏付けを行なったうえで処置を決定しなければならない。
1.役員として識見、知識、経験が不足し、単に役員として名をつらねているだけで、業績の向上に何ら寄与していない者
2.正当な企業の方針に基づいて行動せず、独断専行によって会社に損害をかけた者
3.不正、不当な行為があって、会社に損害をかけた者
4.リーダー・シップがなくて部下に威令が行なわれず、部下、同僚から侮られている者
5.健康がすぐれず、無理ができない者
6.会社の秘密を漏らし、会社に損害をかけた者
7.批判ばかり多く実行力のない者
8.誠意なく、その行動に信が置けない者
これらは、それぞれの程度によって判断しなければならないことと、噂や感じでなく、具体的な事実がなければならないことはいうまでもない。
また、これらの理由の中にも、長期間にわたって継続して行なわれるものと、1度でも重大なミスとなるものがあり、さらに情状が参酌されなければならないものもあるので、軽率な断定はできない。

処置と処遇と指導
不適任役員の判断がなされたとしても、その処置と処遇についてはまた困難な面がある。会社にマイナス要因をもたらした役員であるから、一刀両断にすればよいという意見もあるだろうが、ひとたび役員に選任した後は、その扱い方は慎重かつ適正でなければならない。
幸いというか、役員には2年の任期があるのでこれを活用し、不適任と断定するに足る十分な裏付けのある役員は、任期満了とすることが一番無難な措置であろう。
以上述べたような不適任役員の処置には、何といってもトップの指導性が重要な役割を果たすものである。
トップが常に確固たる信念と指導性をもっていれば、そもそも役員に不適任者を出すこともないし、また、その処置に不適正な結果を招くこともない。
やはり、トップの選任こそ重要であって、他の役員に適任者を得るかどうかも、トップの力量にかかっているといえよう。

著者
大田 正幸(経営評論家)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。