ビジネスわかったランド (経営・社長)

人材の登用と処遇

参謀、ナンバー2、側近の養成法と接し方は
 社長の働きは、どのような役員をもっているかで決まる。役員の養成法は種々であるが、「困難な仕事を与えて、成功させる」というのが最も有効な方法である。また、役員から従業員意識を排除することも必要である。

社長の働きは役員次第
役員を育成し、とくにその中から後継社長を生み出すことは、社長として最重要な仕事である。いかにベテラン社長でも1人で会社という組織を動かすことはむずかしく、結局、有能な役員を養成し、意のままに動かすことによって経営することになる。したがって、社長の働きはどのような役員をもっているかによって決まってくる。
「君主の頭脳の程度は、その宰相をみればわかる」(マキャベリ)

困難な仕事を与えて鍛える
社長は役員を教育しなければならないが、若い者ではないから、講堂に集めて講義するというわけにはいかない。教育の手段として考えられるのは、次のような方法である。
1.会談すること。定期的に昼食会を催したり、ときどき一杯飲むというのは意外に効果がある
2.会議を教育の場として活用する
3.社外のセミナーや講演会に参加することを奨励する。参加したいと思っていても社長に遠慮しているケースが案外多い
4.困難な仕事を与えて、成功させる
最も効果的なのは第4のやり方で、成功の経験ほど本人を成長させるものはない。
このため未熟な役員のためには、社長自らお膳立てをしておいてから、それを知らせないで本人を差し向けるという演出も必要である。
源義経とナポレオンの部下には名将がいない。あれだけの人間の下に名将がいないとは合点のいかぬことであるが、これは事実である。義経とナポレオンの部下にも、名将の素質を持った者はいた。しかし、「義経とナポレオンの部下は手柄を立てることができない」と言われたことでもわかるように、2人ともあまりに有能であったためにすべてのことを自分だけで片付けてしまう。したがって部下はその持てる能力を発揮する機会がなかった。
企業経営の場合でも、「名社長のもとには名役員なし」と言えそうである。つまり、社長が役員を育成するために最も有効な方法は、困難を征服して名声を上げる機会を与え、その名声を心から喜んでいることを示す、表現するように心がけるということである。

「私がいなければ会社は潰れる」は無能の証拠
「私がいなければ会社は潰れる」とよく放言する社長がいる。役員の無能を嘆いているのだが、多くは自らを誇りたい心が思わず出てしまうのであろう。が、社長として、これほど愚かなことはなく、自らの無能を衆前に示しているのと同じことである。
「私がいなければ会社が潰れる」ということは、裏を返せば、「私がいるから会社は危ない」ということと同じである。社長の人材育成の努力が足りないからそうなるのであり、また、社員のほうでも、「あの社長さえ罷めてくれれば会社は良くなるのに…」と嘆いているかもしれないのである。
会社で最も有能なのは社長だというのは、あまり良くない。むしろ、多くの点で社長が劣るということのほうがよい。とはいえ、ただ1つ、絶対に劣っていてはならないことがある。それは統率力である。己れより優れたる役員を育成するのが、社長の責務なのである。

従業員意識を排除するための方策
役員から従業員意識を排除するための方策も必要であるが、それは以下のとおりである。

そして、一方において、万一、会社が倒産するような事態になったときは、取締役の一切の私財を提供せねばならないということ、さらには任期が2年であることも徹底させてはどうだろうか。

著者
大田 正幸(経営評論家)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。