ビジネスわかったランド (経営・社長)

人材の登用と処遇

労基署から残業代の不払いについての呼び出しを受けた
 司法処分に至るケースは少ないが、指導は真摯に受け止めるべきである。

労働基準監督署が「残業代不払い」という調査事由を明確に示して呼び出しをかけてきたということは、労働者からの訴えがあったものと考えるべきだろう。まずは本当に残業代の不払いがあったのかどうか、もしあったなら、どうしてそのようなことが起きたのかについて、関係者から事情を聴いて、関係書類を調べることである。
たとえば、自己申告制ではあるものの、原則として一か月あたりの目安数値を決め、その範囲内で残業を収めるよう指示し、それ以上に必要な残業については、直属上司と本人との協議によって認めるという方式を採っているということであれば、その管理方法自体には違法性はない。
しかし、その目標数値そのものが職務遂行上の実態と比べて明らかに低すぎる設定となっていて、目安数値を超える必要な残業に関して上司が協議に応じなかったり、その残業の必要性を求めながらも、残業時間としての計上を認めない等の取扱いが実態としてあるとすれば、それは結局、サービス残業を強いるものであり、違法となる。これらについて、厳密に調査をして実態を把握したうえで出頭すべきだろう。
担当官からの質問には誠実に答え、また提示を求められる書類等についても、出し惜しみや改竄等を行なうことなく、そのまま提示することだ。そして、主張すべきことは遠慮なくきちんと主張することが大切である。そのうえで労基署が行なう指導・勧告・命令は真摯に受け止め、今後の雇用管理改善の糧とするといった、謙虚な姿勢が肝要だろう。
なお、労基法違反に対しては刑事罰が科されることになっているが、労基署はあくまで事業場の健全な雇用管理の推進のための育成・指導・監督に重点をおいている。労基法違反があったとしても、よほど悪質とみなされない限り、いきなり司法処分に及ぶことはないようだ。

<< 労働時間の無管理状態が要因 >>

時間外労働や休日労働等の、いわゆる残業というものは、本来、使用者の指示・命令によって発生するものであり、労働者の独自の判断で行ない得る性質のものではない。しかし、労使双方の労働時間管理の重要性と残業発生のしくみに対する認識不足から、残業管理そのものがいい加減になってしまい、実態として個人の裁量に任せてしまっているケースが多々見られる。このような無管理状態こそが問題発生の原因といえる。
労働時間管理を厳格に行なえば必然的に残業の管理も厳格になる。そして、労働時間管理を適法かつスムースに運用するためには、管理職が部下の時間管理を厳格に行なうことが必要だ。
残業については、タイムカードやICカードだけで把握するのではなく、別途、残業申請書によるべきである。申請書の事前提出を義務づけ、管理職の承認あるいは命令によってはじめて残業を認めるという厳格さが求められる。
なお、残業を抑制することを目的として、1か月あたりの上限(目安数値)を設けている事業場が多数存在するが、このこと自体には何ら問題はないと思われる。残業そのものを抑制しようとする使用者の強い意思の表われであると考えれば、むしろ好ましいことである。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。