ビジネスわかったランド (経営・社長)

人材の登用と処遇

社外重役を置くときの注意点は
 社外重役を置く場合には目的を明確にし、その必要性をアピールすることが大切である。

社外重役を置く目的
社外重役を選任する場合の目的について考えてみよう。
1.閉鎖的になりがちな経営陣に社外から新風を吹き込み、視野の拡大を図り、経営改善を目指すとき
2.有名人を経営陣に参加させ、会社のネーム・バリューを上げようとするとき
3.出資者、大株主等がお目付的な役割を果たすため。また同時に、これらに対して経営に共同責任を持たせるため
4.取引関係にある大口販売店主、協力工場主などを経営陣に参加させ、業務を理解してもらい共存の実を上げようとする場合
5.親会社が子会社、関連会社等の経営方法を監視するため(この場合は一方的に押しつけられるのが普通であろう)
このように、社外重役も一様ではないが、それぞれの特長を活用し、多少なりとも会社にプラスする方向にもっていくことが肝要である。

起用には注意が必要
社外重役は非常勤であり、通常月1、2回役員会に出席して経営状況を聴取し、これに対し意見を述べ、また役員会の決議に参加する。そこで有効適切な意見を開陳することは広い知識経験のある者のみがなし得るのであって、名目だけの社外重役では、役員会の席を塞ぐくらいが関の山だろう。
さらに前述した販売店主や協力工場主などを加えると、役員としての忠実義務など期待するのが無理というばかりでなく、その地位を利用し、自己の利益を図ることになりかねない。
また、この種の社外重役は、社内現場を巡視してみたり、職制に圧力をかけるような発言を行ない、買入れ価格の値上げや売渡し価格の値引などを暗に強要する場合もあり得るので、注意を要する。

社外重役の必要性をアピールする
経営にプラスするつもりの社外重役が、マイナスとなるようでは会社にとって損失であるから、前述のように社外重役に期待することを明らかにしたうえ、人選を誤らないことが肝要である。その期待するところを列挙すると次のとおり。
1.役員陣の視野を拡大し、経営全般のレベルアップを図る
2.営業、製造、財務などの部門に弱点があって、それらを社外重役のアドバイスによって強化する
3.有名人を参加させ、ネーム・バリューを上げる
4.大口需要家とのパイプを強じんなものとし、売上の増加を図る
5.口うるさい大株主、融資者などを役員として迎え、経営状況を知らしめ、その口を封ずるとともに責任の分散を図る
これらを明らかにした後、的を絞って適任者を選任すれば、社外重役の活動の途もあるだろう。
そして、社外重役が活動できる社内環境もまた整備する必要があり、定例の取締役会で月次決算状況を説明し、了承を求めるだけでは意味がない。社内の問題点をさらけ出し、社内のマンネリ化にとらわれない意見を引き出すことが重要である。

著者
大田 正幸(経営評論家)
2006年9月末現在の法令等に基づいています。