ビジネスわかったランド (経営・社長)

人材の登用と処遇

ぬるま湯的体質に活を入れ、社員に危機意識を植えつけたい
 “若手には希望を、古参社員には危機感を”を目標に教育を行なう。


<< 成熟企業社員四大疾病とは >>

成熟期にある企業の社員には成人病的な症例が見られる。
まず、外部環境の変化に無頓着な「外部環境非適応症候群」。いかに無難に仕事をするか、上司に気に入られるかと、内部志向に陥る可能性が高いのだ。
次に、うまくいっているのだから、チャレンジする必要はない、新しい提案をして失敗したら出世に響くといった「言い出しっぺが損する症候群」に罹患している可能性もある。
さらに、行なうべき業務はマニュアル的に決まっており、古参社員や上司は、機能性は高いと感じている。一部社員が組織の問題点に気づいて指摘したとしても、それを受け入れる心構えができておらず、社長に伝わる前に、上司などがそうした声を握り潰しかねない。これは「あきらめ症候群」である。
もっと悪いことに、社員の大半が組織機能性は高いと思い、コミュニケーションがとれていると信じきっているため、「コミュニケーション不全症候群」に見舞われてしまう。

<< 古参と若手では治療法が違う >>

では、どうすればよいのか。社長の役目としては、社員が自らの問題点に気づき、自発的に動き出す環境を社内に作っていくことが挙げられる。まずは、社内に必ずいる、危機感をもっている社員を着火剤として、危機感の薄い社員の心に点火していくのが早道だろう。
まず、「言いだしっぺが損する」環境を変えなければならない。とりわけ古参社員の意識が古いままだと、若手社員はなかなか意見を言えないものだ。インフォーマルな場で職階を問わずに話し合ってみてはどうか。昼食会やオフサイトミーティングといった方法をお勧めしたい。
「コミュニケーション不全症」は管理職に起因する場合が多い。部下に一方的に伝達するだけで、「心の共有」ができていないのだ。「対話」こそが大切なコミュニケーションのとり方だと、管理職に意識させる必要がある。
また、仕事に対する視点は、社長・管理職・一般社員それぞれの立場によって異なる。社長が「将来」を見ているのに対して、管理職は目前の「明日」、一般社員は「今日」の視点で業務を見ていたりするものだ。
視点を統一して足並みをそろえるには、トップ―管理職―一般社員の相互の立場を理解するしくみが必要だ。たとえば「目標管理制度」が考えられるが、成熟期の企業では、まずそれぞれが自分で考える訓練から始めるというスタンスで、目標管理を進めることが大切だ。間違っても、成果主義賃金の評価要素につなげないよう、注意したい。
危機感を植えつけるため、統一的手法をとるのは考えもの。若手には希望を与え、古参社員には危機感を与えるなど、別の管理手法が必要となる。
若手社員は、自分の所属する組織がダメだと思えば、有能な人ほど転職してしまう恐れもある。一方、古参社員はある意味、社長とは運命共同体の関係にあり、会社がダメになって損するのは自分たちという意識があるはずだ。したがって、危機意識を植えつけるべきは古参社員であり、その点を踏まえ、古参社員から成果主義を導入していくのも一つの策と考える。

月刊誌「経営者会報」臨時増刊号より
2008年8月末現在の法令等に基づいています。