ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の職務

社外取締役の兼任と職務とは?
 兼任は取締役会の承認が必要である。

取締役が別の会社の社外取締役を兼任するケースとしては、次のようなものがある。
(1)社命により、子会社や系列会社の取締役を兼任する。
(2)知人に頼まれて、知人の会社の取締役を兼任する。
(3)親族関係者の経営する会社の取締役を兼任する。
取締役は自社の職務に専念し、会社の信任に応える義務(忠実義務)があるから、(1)の場合は別として、他社の取締役に就くには、事前に株主総会または取締役会(取締役会設置会社の場合)の承認を得る必要がある。
株主総会ないし取締役会では、(2)(3)の場合の兼任を認めるかどうかを審議する場合、他社の業務内容が自社と同類のものか否か、兼任を必要とする事情、兼任することによって取締役としての職務にどの程度の影響があるかなどを検討するべきである。
もし、他社の業務内容が自社と同類の場合は、基本的には兼任を認めるべきではない。なぜなら、その取締役は両社に対して忠実業務を負うことになり、どちらの利益を優先させるか二律背反を生じやすく、守秘義務上も問題を生じるからである。

<< 忠実義務違反に十分な留意を >>

兼任が認められた場合、自社の取締役としての職務と他社の社外取締役としての職務との調整が必要となる。(1)の場合は、その社命に沿って社外取締役としての任務を果たすことが、自社の取締役としての忠実義務にも適うことになる。
これに対して、(2)(3)の場合は、兼任先の取締役会に出席するについても、自社取締役会の許可が必要で、他社にはそのことの了解を得て、兼任取締役を引き受けるべきである。
また、取締役が兼任先会社の利益を図ろうとして、競業避止義務に違反したり、自社と兼任先会社との取引等で、利益相反取引の禁止に抵触してしまうおそれもある。取締役個人も取締役会も十分に注意する必要がある。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。