ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の職務

取締役と対労組問題は?
 取締役の職務や責任という観点から労組問題を見た場合、会社と労働者ないし労働組合との無用の対立・混乱を起こさず、会社業務を安定的に遂行させることが肝要となる。

基本的な意味での労組問題とは、労働条件の維持改善を目指した労働組合と会社との争議、対立、協議、協調の関係全体をいう。労働組合は労働条件の維持改善や経済的地位の向上を主たる目的として組織されており、労働者の人事、給与、労働時間、職場の安全、そして健康と秩序などを問題にしている。

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会社が労組問題に適正に対応するためには、人事・労務担当取締役をおいて労組問題を主管させるのがよい。労組問題には専門的な知識を必要とすることも多く、労組側との信頼関係も必要となるからである。
会社としては、主管の取締役を中心に、取締役間ないし取締役会での協議をふまえて適正に問題を処理しなければならない。その要諦は、次のとおり。
(1)会社全体として労働法、とくに労働基準法・労働組合法についての基礎知識を養う。
(2)良識ある給与・賞与等の労働条件を維持する。
(3)適正で公平な人事を心掛ける。
(4)労働災害が発生しないよう職場の安全管理や労働者の健康管理に気を配る。
(5)職場の和と秩序に対する配慮を欠かさない。
労組問題、労働問題への対応を誤ると、取締役個人の責任問題に発展することもある。会社から責任を問われるだけでなく、(4)の労災問題や(5)の職場問題(たとえば社員同士の対立やセクハラなど)が起きると、取締役の職場管理責任の面から、被害労働者個人に対する責任まで問われかねない。
また、労働者間の対立等でその一方に不法行為が成立すると、監督する立場にあった取締役が「使用者責任」として連帯して損害賠償の責任を負わされることがある。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。