ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の職務

取締役の越権行為とは?
 取締役会設置会社の取締役は、取締役会の一員として議決権を行使する権限を通して会社の方針を決定したり、他の取締役の業務執行を監督する。また、取締役会の決議によって決められた範囲内で社内業務を分担し、対外的な業務執行の権限を有する。このように、取締役の権限の範囲は、会社法の規定と取締役会決議とによって、かなり明確になっている。
取締役が、越権行為をすることは、忠実義務違反であり、厳に戒められるべきことである。取締役は、取締役会といういわばチームの一員だから、越権行為をしてチームワークを乱してはならない。ちなみに、権限の範囲内の行為でも、その目的や方法が合理性を欠けば、権限濫用となる。

<< 相手に誤解を与える肩書に注意 >>

越権行為は、社内的なものと対外的なものとに分けられる。社内的越権行為があったときは、上席者や取締役会で注意を喚起すればよい。
しかし、対外的越権行為が行なわれると面倒な問題となる。行為の相手方として外部の第三者が存在すると、法的にはその相手方の立場を考慮し、相手方がその取締役に権限があると信じたことにもっともな事情があるときは、相手方の保護が優先され、越権行為だから無効だとはいえなくなる。
たとえば、代表権のない取締役に社長、副社長、専務、常務などの肩書を使用させていた会社は、相手方が、その肩書のゆえに代表権があると信じていたら、その取締役に代表権はなかったと弁解できないという「表見代表取締役」の制度は、その典型的な例である。また、肩書が表見代表取締役にはあたらない場合でも、民法の表見代理に関する規定で相手方が保護されることがある。
越権行為の防止策としては、日頃の注意喚起、権限範囲の明確化、取締役会での報告と監督の徹底などに努めることである。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。