ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の職務

取締役の公職就任問題は?
 取締役が公職、準公職に就任しているケースは珍しくない。国や地方議会の議員、教育委員その他の行政委員、裁判所の調停委員、保護司、民生委員などがその例である。
取締役が公職に就くこと自体は、本人の個人としての自由である。会社との関係で何が問題かといえば、公職に時間と労力を取られることが、取締役としての忠実義務に違反しないか、ということであろう。公職によっては、かなりの時間を取られるものもあるからである。

<< 公職に就くのはプラス面もある >>

会社が、取締役の公職就任は好ましくないとして、これを禁止し、公職に就いた取締役は原則として辞任してもらうか、解任するという方針を取ることは、会社の自由な方針として容認せざるを得ない。会社と取締役の間の「委任」という関係は、そのような理由による一方的な関係解消を許すものなのである。
しかし、そのような硬直した方針を取るのは、会社にとって得策とは思われないこともある。たとえば県や市の議員やその他の公職に積極的に就任することは、本人の社会性を高め、他では知り得なかったさまざまな見聞を深めてくれるはずであるし、社会的責任を果たすことにもなるからである。

<< 取締役としての任務遂行が第一義 >>

公職に就任しようとする取締役は、会社の理解を得る努力をする必要があるし、公職にかかわることで取締役としての職務の遂行にできるだけ影響がないよう心掛けなければならない。
取締役会や日常業務とのスケジュール調整は当然として、公務に時間を取られる場合は取締役会や上席の取締役に報告して、承認を受けるようにする必要がある。
公職に就いた取締役として特に注意すべきことは、公務を通じて知り得た事項について、徹底して守秘義務を貫くことである。これを軽率に口外するようでは、公職者として失格である。また、不正に利益に絡んで、収賄の罪に問われることにも十分注意しなければならない。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。