ビジネスわかったランド (経営・社長)

取締役の職務

取締役の忠実義務とは?
 取締役の忠実義務とは、「取締役は法令や定款の定め、総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を遂行する義務を負う」ことをいう。


<< ルールを守り、株主の意向に従い、会社の利益に貢献する >>

この義務は、取締役に対してルールを守り、株主の意向に従い、会社の利益に貢献することを要求しているもので、取締役と会社との「委任」関係から当然に生まれる。
ちなみに民法は、受任者は「善良な管理者の注意」をもって委任されたことにあたるべしと定めている。取締役の忠実義務は、これと同じ趣旨を、もっと掘り下げて規定したものである。

<< 忠実義務の三つの内容 >>

(1)法令や定款の定め、そして株主総会の決議を守って行動すること
法令、定款、株主総会決議が取締役の守るべき行動規範である。会社法には取締役について義務や禁止事項を明記した条文がいくつかある(業務執行を監督する義務、利益相反取引の禁止、競業避止義務など)が、そうした具体的条文に抵触した場合だけでなく、会社法等の法令全体が取締役について予定している法律関係に抵触する行為は、ここにいう法令違反となる。たとえば、取締役が正当な理由なく取締役会を欠席すること、取締役会の決定に違背することなどもあてはまる。
(2)会社の利益第一で行動すること
会社は営利目的で設立された法人だから、自己や会社以外の者の利益を優先させてはならず、会社の利益を第一に考えることが要求される。たとえば、友人のために、会社にとってはマイナスとなる取引をするのは忠実義務違反である。
(3)通常期待される程度の注意力、判断力をもって行動すること
取締役は、会社経営を委ねられた者として期待される程度の注意能力をもち、適正な判断を下す必要がある。手形の乱発、悪徳商法被害、不注意による労務災害など、無知、軽率、不注意な行動は、その程度と状況により忠実義務違反となる。

著者
横山 康博(弁護士)
2010年6月末現在の法令等に基づいています。